村への報告
私は村の手前でキャンピングカーを停めて外へ出た。
「――あ! ラウルは靴箱に靴をしまったままだったね。居住スペースから下りてきてくれる? 私はこっちにも靴を置いてたから……」
「あ、ああ。わかった」
ラウルが居住スペースへ向かうと、おはぎは『にゃぁ』と鳴いて私の肩へ飛び乗ってきて頬に頭を擦りつけてきた。
……もしかして、ちょっと寂しかったのかな?
なんだか甘えん坊なおはぎの一面を見れて、にんまりしてしまう。
私がラウルと村に入ると、薪のお兄さんがいた。
「お、雨は大丈夫だったか?」
「ええ、なんとか」
「で……そっちの兄ちゃんは、ツレか?」
最初に村へ来たときにいなかったラウルを見て、薪のお兄さんは不思議そうに首を傾げている。あまり人が来ないからだろう。
すると、ラウルが一歩前に出た。
「いや、俺は魔物にやられて倒れてたところを助けてもらったんだ」
「なんだって? 大丈夫だったのか?」
薪のお兄さんは息を呑んで、ラウルをじっと見た。怪我がないか確認してくれているのだろうけれど……幸いポーションのおかげで完治している。
怪我がないと判断したのか、薪のお兄さんはホッと胸を撫で下ろして状況を教えてくれと言った。
「向こう……北の山にリーフゴブリンが出たんです」
「「リーフゴブリン!?」」
私と薪のお兄さんの声がハモる。
リーフゴブリンはゴブリンの亜種で、植物を操るという特性を持っている。鋭い葉を宙に舞わせて高速攻撃をしてきたりするし、蔦で罠のようなものも作ってくる厄介な相手だ。
かなり熟練の冒険者でも、一人で倒すのは難しいのではなかろうか。
「そりゃあ危険すぎる。よく無事だったな……」
「どうにかね」
ラウルの言葉に頷いて、薪のお兄さんは「村長に伝えてくる!」と駆けだしていった。その途中で、「北の山にリーフゴブリンが出たぞ!」と叫んでいる。
「とりあえず、村はこれで大丈夫そうかな?」
「ああ。そんなに大きな村じゃないし、すぐ伝わるはずだ」
「よかったぁ~!」
あとは冒険者ギルドに行って、リーフゴブリンの討伐を頼めば問題ないだろう。
「でも、急いで討伐してもらわなきゃだよね。リーフゴブリンが移動しちゃうかもしれないし、安心して生活できないよ」
私の言葉にラウルが頷いて、「可能な限り早く報告した方がいいな」と告げた。
村で食料を調達したら、そのまま出発してしまった方がよさそうだ。さすがに、危険があるかもしれない状況でちんたらしてはいられない。
「ラウル、私は食料とかを買ってくるよ! ラウルはここで、村の外に出かける人がいたらリーフゴブリンのことを教えてあげてほしいの」
「わかった」
互いに役割を決めたので、私は急いでお店へ走った。この役割にしたのは、村の中を把握している私が買いに行った方が早いからだ。
「こんにちは!」
「おや、釣り竿のお嬢ちゃんじゃないか。釣れたかい?」
「バッチリ! って、今はそれどころじゃなくて……」
釣った魚を美味しく食べたことなどを話したかったのだが、そんな余裕はない。私は北の山にリーフゴブリンがいるということを伝えた。
そのため、急いで冒険者ギルドにそれを知らせにいくため食料がほしいということも。
「なんと、リーフゴブリンが……!? それは大変だ。ギルドに知らせに行ってくれるのなら、遠慮なく持っていってくれ」
保存食を中心にいろいろ持たせてくれようとしたけれど、その量が多かった。私とラウル二人で、軽く五日は過ごせそうなほどで。
……って、そうか。キャンピングカーじゃなかったらそれくらいの日程になるのか……。
「まだ保存食もありますし、私はスキルのおかげで移動が速いんですよ」
なので、用意してもらった量の半分ほどを買い取らせてもらった。
次は出発です~!




