テッテレー!
私が神妙な顔をしたからか、ラウルが「気にしないでくれ」と苦笑する。
「左手は使えないけど、ある程度の魔物なら倒せるから……冒険者を続けながら立て直すさ。荷物はほとんどないけど、また稼げばいいし」
「そっか……」
たくましすぎるラウルを見て、私も本腰を入れて生計を立てる術を考えていかなければと思う。
一つの場所にとどまらず旅をする予定だから、定職に就くのは難しいだろう。
……うん。もう少し考えてみよう。
「それで、ポーションの返済の件なんだけど……」
ラウルはどこか言いづらそうにしながらも、言葉を続けた。
「こういう状況だから、すぐに返すのは難しいんだ。だからその間、ミザリーの護衛として置いてくれないか? ポーション代の利子だと思ってくれたらいい」
「え……」
思いもよらない提案に、私はどうしようか思案する。
正直、護衛してくれるというのは……かなり魅力的だ。
私のスキルはキャンピングカーだけで、ほかに魔法を使うことはできない。何かから逃げることはできるけれど、障害物が多かったり道が細かったりしたら詰む。
ラウルはキャンピングカーを見ても、私の心配をしてくれた。あくどい人ではないだろう。
……まあ、ポーション代金を返済するまでの間だもんね。
「わかった。よろしくね、ラウル」
「――! ああ、よろしく。ミザリー!」
テッテレー!
ラウルが仲間になった!
最初は行き当たりばったりで国を飛び出た私だけれど、ラウルが仲間に加わったので今後の目的地はきちんと決めた方がいいのでは……と考える。
「ねえ、ラウル。行きたい場所とかある?」
「え?」
聞き返されてしまった。
「私は国を出て、旅してるんだけど……いろいろな所に行きたいだけで、目的地はないんだよね。ラウルに行きたいところがあれば、そこに行くけど」
私が簡単に事情を説明すると、ラウルは「そういうことか」と言って候補をいくつかあげてくれた。
「仕事の依頼を受けるには、冒険者ギルドがある街じゃなきゃ駄目なんだ。ここらだと、ココシュカの街かトットの街だな」
「あ、私トットの街の方から来たんだよ」
「なら、ココシュカに行くのがいいか?」
「うん!」
ラウルの言葉に大きく頷いて、ココシュカが楽しみになる。
ここは大きな貿易都市で、いろいろな物が売っていると本で読んだことがある。私のキャンピングカーの居住スペースが充実すること間違いなしだ!
行き先が決まると、すぐにでも出発してしまいたくなるから困る。
……もう数日はここら辺で過ごそうと思ってたのに!
フルリアの工芸品だってもう少し見てみたいし、山歩きにもちょっとだけ憧れる。けど、今はラウルを襲った恐ろしい魔物がいるみたいだからやめておこう。
「って、ラウルを襲った魔物って村の人に伝えた方がいいよね? 山に入ることもあるだろうし」
「フルリア村と、冒険者ギルドにも伝えた方がいいだろうな……。討伐依頼がでるか、警告を出してくれるはずだ」
「なるほど」
それなら、すぐにでも村へ知らせに行った方がいいだろう。雨が止んだので、村の人が山に入ってしまうかもしれない。
「ラウル、急いで村に教えに行こう!」
「ああ。……って、何してるんだ?」
私が居住スペースから運転席へ移動するのを見て、ラウルが首を傾げている。
「ふっふー、これぞキャンピングカーの神髄! ラウルもこっちに座って、ほら!」
「お、おお」
戸惑うラウルを助手席に座らせ、問答無用でシートベルトを締める。
「よし、出発だ!」
『にゃ!』
「お、おー!」
ラウルもちょっとノッてくれた。
急いで村に戻って、ココシュカの街のギルドへ向かいます。




