表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/142

危険性

「キャンピングカー?」


 ラウルの頭の上には、それはもうたくさんのクエスチョンマークが浮かんでいることだろう。

 この世界には、キャンピングカーどころか自動車だって存在しない。主な移動手段といえば、馬車だ。


 ……あ、やっぱりさっきのところ傷になってる。

 車体についた傷を見つけて、ちょっぴり凹む。


『にゃぁ』

「おはぎ? ……あ、また雨雲が出てきたね」


 やはり山の天気は変わりやすいみたいだ。

 このまま外にいると濡れてしまうので、私はラウルを手招きする。


「雨が降りそうだから、ひとまず中に入ろう」

「え? あ、ああ……?」


 キャンピングカーのドアを開けると、ラウルの「中が部屋みたいになってるのか」という呟きが聞こえてきた。

 ……戸惑わせてしまってごめんなさい。


「土足厳禁だから、靴は脱いでね」

「わかった」


 私は靴箱に入っていたスリッパを出すが、ラウルが躊躇した。


「俺、すげぇ汚れてるから、そんな綺麗なの履けない」

「え? ああ、そうか泥だらけだったね」


 これは先にシャワーを浴びてもらった方がよさそうだ。さすがにこのまま、というわけにはいかない。

 私はとりあえずタオルを濡らして、「足だけ拭いて」とお願いする。それができたら、シャワールームへと案内した。


「外から見るより、広くないか?」

「あー……。私のスキルだから、そういうものだと思ってもらうしかないかな?」

「お、おう……?」



 戸惑いを隠せないラウルを脱衣所に押し込み、使い方を説明して、私はキッチンへ向かう。


「ラウルが出てくるまでに、簡単に食べられるものを用意しておこう」


 といっても、大したものがあるわけではない。

 パンとチーズ、あとは野菜とお肉に果物だ。

 ……酷い怪我だったみたいだけど、ポーションで治療したから普通に食べられるかな?


 私はお肉を焼いて、パンにサラダと一緒にはさんでサンドイッチを作った。あとはジャガイモのスープだ。


「よしよし、いい感じ」


 私の用意が終わったタイミングで、ラウルが出てきた。


「すまない、ありがとう。というか、あれは本当にスキルなのか? お湯が出てきたんだが、どういう仕組みになってるのかまったくわからない……」

「あははは」


 それは私もわからないのです。


「まあ、このキャンピングカーのおかげで平和に旅を続けられてるから、深く考えないようにしてるよ」


 私の言葉を聞いたラウルは、大きくため息をついた。


「よく今まで悪い奴に狙われなかったな……。このスキルじゃ、見たら全員驚くだろう?」

「ああ~、確かに全員に驚かれたかな?」


 道中で出会った冒険者のパーティも、フルリアの村の人もめちゃくちゃ驚いていた。けれど私からキャンピングカーを奪おうとした人はいなかった。


「というか、スキルだから奪うなんて無理じゃない?」

「そんなことはない。痛めつけられて無理やり服従させられたり、人質を取られて脅されたりするかもしれない。もしくは、そういった類のスキルやアイテムを使われた可能性もある」

「――っ!」


 まったく予想していなかったことに、私の喉がひゅっと鳴った。

ラウル(この子、危機感がなさすぎるんじゃないか……?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役令嬢はキャンピングカーで旅に出る』詳細はこちら
小説1巻、本日(2023年9月8日)発売です!

https://img1.mitemin.net/1j/xf/fjsc5cqrcut14jt01ntn4usw4kwq_7yk_yb_1ed_co95.jpg
― 新着の感想 ―
[気になる点] 王子の婚約者=国の要人 だったのに人質とか操られることへの危険性を学ばなかったのかな? 最低限の勉強くらいはさせられていたと思うので驚いていたのが謎
[一言] ミザリーとおはぎの旅行記(?!)楽しませて貰ってます!キャンピングカーでの旅行は憧れるのでこんなスキル羨ましい〜!こんな便利な乗り物が異世界にあったら狙われてもおかしくないな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ