ポーションの出番です
「人!? 大丈夫ですか!?」
私は慌てて駆け寄って、声をかける。
倒れていたのは私と同じ歳くらいの男の子で、オレンジブラウンの髪色だ。気を失っているようで、声をかけても反応がない。
……こういうときって、変に動かしたりしない方がいいんだよね? もし頭を打っていたら大変なので、まずは外傷を確認することにした。
「すごく大きな怪我! っていうのはないけど、小さな怪我は多そう。体も泥だらけだし、血がにじんでいる個所もいくつかある……」
だけど気絶していることを考えると、どこか打ち付けた可能性もある。血は出ていなくとも、重症のことだってあるのだ。
『にゃぁ……』
おはぎが心配そうに男の子を見ているので、私は「大丈夫だよ」と頭を撫でてあげる。
「一応、ポーションがあるから……使ってみよう」
数は多くないけれど、もしものときにポーションを用意してあるのだ。私は急いでキャンピングカーからポーションを取ってきた。
この世界には、ポーションの種類がいくつかある。
初級ポーションは、軽い怪我を治し、体力を少し回復してくれる。
中級ポーションは、怪我を治し、体力を回復してくれる。
上級ポーションは、大きな怪我を治し、体力を大幅に回復してくれる。
それ以上のポーションもあるけれど、錬金術師の腕が必要になってくるため、市場に出回る数はぐっと減る。
ちなみに上級ポーションは深く大きな傷や骨折は治せるけれど、時間が経ってしまった場合や、切断などで失ってしまった体を治癒することはできない。
元々ゲームの世界だけれど、なんでもかんでも万能とはいかないのだ。
私が持っているのは、初級ポーションが五本、中級ポーションが三本、上級ポーションが一本だ。
「うーん……。外傷は小さな切り傷だけど、数が多いから初級じゃ間に合わないね。でも、気絶していることを考えると、私が気づいてないだけで大きな怪我をしてるかもしれないから……上級ポーションかな?」
よし、そうしよう。
私は男の子の横にしゃがみ込んで、上級ポーションを男の子の口元に持っていく。……が、上手く飲み込んでくれない。
「むぅ……」
気絶している人に何かを飲ませるということがこんなに大変だったとは。
……そういえば少女漫画とかだと、口移しで飲ませたりしてるのが鉄板だもんね。
なるほど理由がちゃんとあるのかと納得しつつ、しかし私は少女漫画のイケメンではないのでそんなことはしない。
心の中でごめんねと思いながら男の子の鼻をつまんで、一気にポーションを流し込んだ。間違いなくむせるだろうけど、回復するから大丈夫だよ……!
「――ゲホッ、うっ、えふっ、……っあ?」
『シャーッ!』
よかった、目が覚めたしポーションもちゃんと飲んでくれた。
そして男の子が豪快にむせたのでおはぎがめちゃくちゃ警戒してしまった。……ごめん。
「はぁ、はぁ、は……っ、あ……痛くない……?」
男の子は目をぱちくりさせて、自分の体を見ている。そしてゆっくり安堵の息をついて、「生きてる……」と小さな声で呟いた。
その様子から、やはりかなり重症だったのだということがわかる。
「大丈夫ですか?」
「――っ!」
声をかけると、どうやら私に気づいていなかったらしく、男の子が琥珀色の目を見開いてこちらを見た。
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