カーナビ搭載!
雨上がりの誰も歩いていない大草原を、キャンピングカーで走り抜ける。これほど気持ちいいことがあるだろうか。
どこを見渡しても山々が連なっていて、絶景だ。
「この辺りもあっという間に一周できちゃいそうだけど、何かあるかな? やっぱりフルリアだけかな?」
もしそうなら、夜になったらとても綺麗な光景だろうなと思う。
……昼寝もしたし、夜にドライブするのもよさそうだね。
「――あ、虹だ!」
『にゃ!』
「綺麗だねぇ」
雨が上がって、空に大きな虹がかかっている。
ビルのように遮る大きな建物がないので、虹の麓まで見えて……ちょっと行ってみようかな? という気持ちになってくる。
「よーし、ちょっと行ってみよっか」
『にゃっ』
助手席のおはぎに聞くと、元気な声が返ってきた。
私はキャンピングカーに泥が跳ねるのもお構いなしに、走り続ける。ときおり草原から小動物が顔を出して、キャンピングカーに驚いている。
……可愛い。
それから三〇分くらい走っただろうか。
ちょうど虹がかかっている麓に着いたところで、《ピロン♪》とレベルアップの音が響いた。
『にゃっ!』
「おお、まさかのレベルアップ! 過酷な雨の山道を走ったから、経験値がいっぱい入ったのかな?」
音が鳴ったからか、おはぎは興味深そうにインパネを見て――って、ええっ!?
「カーナビが実装されとる!!」
今まではインパネに映っているのは近くだけだったのに、道やフルリア村などが表示されているではないか。これはすごい。
そして、丸い点も映っていて、色は赤と青、動いているものと止まっているものがある。
「……なんだろう?」
丸い点は山の中に青、フルリア村には赤と青、という風についている。
「赤は村だけ……?」
私はもしや……と思いつつ、村をズームして見た。すると、家の中で赤丸が動いてるではないか。
「これ、人なんだ……」
誰かということまではわからないけれど、カーナビで人の有無がわかるのは、走るときにとても便利だ。
――事故を防げるってことだからね!
「じゃあ、青はなんだろう? 動いているのもあるから、村で飼ってる動物とかかな?」
もしくは人間以外というざっくりした点なのかもしれない。
私はほかにも機能がないか見ていくと、カーナビ設定というものがあった。そこには、赤丸と青丸の表示範囲や密度などを設定できるようになっている。
「へぇ、これは便利……」
今の設定を確認すると、標準だ。
表示範囲を広めたり、狭めたりすることができるらしい。ちゃっかりというかなんというか、ブラックリストというものもある。
……登録した人が近づいてくると、警告音で知らせてくれるんだ。
なんとも便利な機能である。
青丸に関しては、強さやレア度などでも表示の有無を決められるみたいだ。
「やっぱりこっちは魔物とか、動物とか、そういうのが対象みたいだね」
こっちも設定は標準なので、今のところはこのままでいいだろう。別に魔物と戦う予定はないので、強い奴から逃げられればそれでいいのだ。
「……って、あれ?」
よく見ると、すぐ近くにも赤い丸があるではないか。
一瞬自分? とも思ったけれど、私がいる場所にはキャンピングカーマークがあるので、キャンピングカーに乗っている場合は表示されないみたいだ。
「村の人か誰かがいるのかな?」
……でも、赤丸は動く様子はない。
「え、もしや事件? 見に行った方がいい……よね?」
『にゃ?』
先ほどまで雨が降っていたので、予期せぬ怪我で動けなくなっている人がいるのかもしれない。だとしたら、助けて村まで送り届けねば!
私は慌ててキャンピングカーから下りて、周囲を見る。
すると、ちょうど頭上に虹が見えて――その終着点に、人が倒れていた。
カーナビは正義!
 





