雨とキャンピングカー
ザアアアアアという音で、ふと目が覚めた。
「ふあああぁぁ……。そういえば雨が降ってきたから、おはぎと昼寝したんだっけ」
あくびをしながらぐぐーっと背伸びをして、軽くストレッチをして体をほぐす。隣を見ると、おはぎはへそ天で寝ている。可愛い。
そして私は窓の外を見て――思わず「ひえっ」と声をあげた。
「めっちゃ雨!!」
雨音で起きたときに嫌な予感はしていたけれど、まさかこれほど本格的に降ってくるとは……。
タープはまだ出したままなので、しまった方がいいかもしれない。
この雨の中タープの回収は億劫だけど、もし木の枝が飛んできて破れてしまったりしたら大変だ。いいお値段したからね!
「ちょっと外に出てくるから、おはぎは車内にいてね」
『にゃう……』
おはぎがくあぁ~っとあくびをしたのを見てから、私はタープを回収しに向かった。
ゴオオオオォォッ。
「え、風……強ッ!」
思っていた以上の横殴りの雨で、尻込みしてしまう。こんな状況で外で作業するのは嫌だなぁ……。
と思っていたら――足元まで渓流の水が増水してるッ!!
「ひゃああぁっ、これはやばい!!」
外に出るのが嫌だとか、そんなことを言っている次元ではない。
私は急いで、しかし慎重に外に出て、タープを回収する。水は足首より下くらいまでしかきていなかったので、ギリギリセーフだ。
びしょ濡れになってタープを回収しどうにかキャンピングカーに乗り込むと、私は一息つく間もなく運転席へ向かう。
『にゃ?』
「おはぎ、すぐここから離れなきゃいけなくなったから、出発するね!」
雨の中の運転というのは初めてだけれど、この大雨の中で川の横にいる方が危険だ。私はどうにかUターンをして、来た道を引き返していく。
傾斜なので水の流れがあるけれど、キャンピングカーはしっかり走ってくれている。大雨くらいであれば、まったく問題はなさそうだ。
「ふー、焦った――おわっ!」
やれやれ危機は脱出したと思ったからか、斜面から滑り落ちてきた倒木がキャンピングカーの側面に当たった。
「え、え、え? 大丈夫なのこれ?」
ドッドッドッと速くなる心臓を落ち着かせながら、窓から周囲の様子を見る。
落ちてきた倒木は五〇センチメートルほどの大きさだった。キャンピングカーに当たって道の端に行ったので、避けて通る分には問題なさそうだが……絶対に傷がついてるだろうなぁと、凹む。
「せっかくここまで無傷で来たのに……まさかの転がり倒木に出くわすとは!!」
この世界には修理工場もないし、どこかの大きな街で金属加工のできる職人あたりを探してみてもらうしかないかもしれない。
そんなことを考えつつ、私は再び走り出した。
そしてどうにか山の下まで降りた私は、「ふー」っと大きく息をはいた。
「さすがに雨の中の山道は、緊張するね」
『にゃ?』
「……おはぎは水滴を見て楽しそうだったね」
私はクスクス笑いながら、おはぎのあごを撫でる。
「さて、これからどうしようかな」
ここら一帯はフルリア村しかないため、元々歩いている人が少ない。今は雨のため、さらに歩いている人が少ない。
……もしやある意味、絶好のドライブ日和じゃない?
走っているうちに天気も変わるかもしれないと思った私は、せっかくなのでこの辺を走ってみることにした。
車なら、この盆地もあっという間に一周できるだろう。
「――って、向こうの方は晴れてきてるね。よし、ちょっとドライブだ!」
『にゃっ!』
ブロロロロとキャンピングカーを発進させて、いざゆかん!
次回、雨上がりの爆走。
 





