初めての釣り
釣った魚を入れるための木桶に渓流の水を入れて、釣り針に餌をつけて……いざ!
大きめの石に腰かけて釣り竿を振って、渓流に投げ入れた。流れは比較的穏やかなので、魚が泳いでるのが肉眼でも確認できる。
私の釣り糸に魚が集まってきた。
「よしよし、そのまま餌をぱくりといって……くれない……」
近づいてきたり、餌をちょんちょんつついてきたりはするのだが、どうにも食べてはくれない。うーん、思っていたよりも難しいかもしれない。
……まあ、時間はあるからのんびりいこうかな?
というわけで、私は釣りをしながらぼーっとする時間も楽しむことにした。
少し目をつぶってみると、自然の音が聞こえてくる。
目の前に流れる渓流の水の音、風で木々が揺れる音、焚火がパチッとはぜる音。それからときおり、動物が走るような音や、鳥のさえずりなんかも聞こえてくる。それと、おはぎの寝息。
今は天気もいいし、おはぎの寝息を聞いていると眠くなっちゃいそうだね。
「魚が一匹でも釣れたら違うのかもしれないけどねぇ……」
釣れないかな~?
のんびりしようと思っても、やっぱり釣れてはほしいのです。
私は、そういえば前世ではキャンプ動画に関連して釣り動画も少し見ていたことを思い出す。渓流釣りではなかったけれど、そうそう違いはないはずだ。
「確か、餌を本当の魚だよ~てきな感じで釣り竿を動かすんだっけ?」
練り餌なので、果たしてそれで本当に釣れるのかは謎なのだが、やってみる価値はあるかもしれない。
私は岩から立ち上がって、釣り竿をちょいちょいっと上下させてみた。これでただ釣り糸を垂らしただけの状態よりは改善したはずだ。
「さあさあ、お魚ちゃんカモン!」
見ると、先ほどちょいっと餌を弄んでいた魚が再び興味を持ったようで近づいてきた。これはいけるかもしれない。
ドキドキしながら、私は魚と自分に言い聞かせながら釣り竿を動かしていく。あまり大きく動かさないで、ちょいっと動かすのがよさそうだ。
それから数十秒、体感では一分以上という攻防の末――魚が餌にくいついてきた。
「――ッ、今だ!!」
手に確かな引きを感じて、私は力いっぱい釣り竿を引いた。すると、まるで漫画みたいに釣り糸が弧を描いて魚が釣れた。
「はわー……」
あまりに見事に釣れたので、思わず呆然としてしまったが……すぐにハッと我に返る。
「木桶に入れなきゃ!」
釣り上げた魚を木桶に入れて、ふうと一安心だ。
魚は背中の部分が黄土色っぽく、大きい斑点模様があった。完全に日本のものと一致するかはわからないけれど、見た目はヤマメに近いだろう。
『にゃっ、にゃっ!』
ふいに、いつの間にか起きたおはぎが木桶の中の魚に興味を示していた。手でちょんちょんしようとしているので、慌てて止める。
「こらこらおはぎ、駄目だよ! 食べるのは調理してから!」
『にゃうぅ』
残念というように耳をぺたりとさせたおはぎには申し訳ないけれど、あと数匹は釣りたいのでもう少し待っていてほしい。
よし、あと二匹釣れたらお昼ご飯にしよう!
獲ったどー!




