雑貨屋で買い物
雑貨屋のドアを開けると、カランとドアベルが鳴る音と同時に中から「いらっしゃい」という声が聞こえてきた。
「こんにちは。すみません、猫も一緒に大丈夫ですか?」
「ああ、構わないよ。珍しいお客さんだ」
初老の店員はにこやかに頷いてくれて、「ゆっくりしていっておくれ」と言ってくれた。
店内は一〇畳ほどの広さで、さっきの子供たちが作っていたカゴもいくつか置かれている。ほかには、フルリアの花をモチーフにした小物などの民芸品と、農作業品や狩りのための武器、日持ちのする食料などが並んでいる。
……村に一軒あるなんでも屋さんだね。
店内を見ていると、おはぎが商品に手を伸ばした。
『にゃにゃっ』
「こら、駄目だよ~」
私はおはぎに注意しつつも、確かに猫のおもちゃっぽいなと思った。おはぎが触ろうとしたのは、組紐の髪留めだ。
……これ、可愛いけどおはぎのおもちゃにいいね!
せっかくなので、私用とおはぎ用、二つを購入することにした。
そして本命の釣り竿!
壁に何本か立てかけてあって、網や木桶なども一緒に並んでいる。あとは餌も取り扱っているみたいだ。
釣り竿は木でできたシンプルなもので、一本ずつ大きさが違う。なので持ってみて、一番しっくりくるものを選んだ。もちろん、網と木桶も。
「おや、釣りをするのかい?」
「はい。渓流で釣りをして、そこで野宿をしようと思って。そういう風に旅をしてるんですよ」
さり気なく野宿好きだというアピールをすると、店員は「それは楽しそうだ」と微笑んでくれた。
「ただ山の天気は変わりやすいから、十分気をつけるんだよ」
「はい。ありがとうございます」
ここへ来るときは雨が降りはしなかったけれど、確かに山の天気は変わりやすいし、標高が高くなれば寒さも増すだろう。
……キャンピングカーがあってよかった。
私は組紐と、釣り道具一式を購入して、先ほど子供たちから買い取ったカゴにしまった。よし、これでいつでも釣りができるね。
買い物が終わった私は、村を軽く見て回ったあと、おはぎと遊ぶことにした。もちろん、さっきの組紐で! だ。
ちなみに場所は村の広場の片隅です。
「よーし、いくよおはぎっ!」
『にゃ~~っ!』
私が組紐を高い位置で揺らしてみると、おはぎがお尻をフリフリしてからバッ! と飛びかかってきた。
大ジャンプだ!
「おはぎ上手~~~~!」
『にゃっ!』
私がさらに組紐を振り回すと、おはぎはそれに合わせてジャンプをする。組紐目がけて一直線に跳んでくるのに、きっちり着地も決めるところが格好良い。さすがだ。
すると何度目かで、おはぎが組紐をガッチリ掴んでしまった。
「あっ!」
サッと組紐を動かしておはぎを躱していたのに、もう私のスピードに追い付かれてしまった……!
え、天才……?
私がおはぎを褒めていると、おはぎは組紐に齧りついてきた。
『にゃうっ!』
「って、さすがにそれは駄目だよ! ボロボロになっちゃう!」
慌てておはぎから組紐を取り上げて、再び動かしてみる……が、おはぎは香箱座りをしてしまった。
「あれ?」
『ハッハッハッ』
「あ、疲れちゃったのか」
確かにいっぱいジャンプをしたら、疲れるに決まっている。私もおはぎの隣に座ると、『にゃ~』とこちらに頭をこすりつけてきた。
「ふふっ、休憩したらまた遊ぼう」
『にゃ~』
おはぎを撫でながら、のんびりした午後の時間を過ごした。
次は釣りじゃ~~!




