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いい湯だな~♪

 思いのほかおはぎが温泉にとろけているのを見ながら、私は服を脱いでいく。これは洗うので小川の横の岩の上に置いて、温泉へ向かう。


「大自然で誰もいないとはいえ、裸っていうのはなんだか恥ずかしいね……」


 ちょっと照れつつも、まずは透き通ったお湯に手を入れてみる。

 温度は気持ちぬるめに思えるので、おそらく四〇度弱といったところだろうか。ゆっくり浸かることができそうだ。

 手で温泉をすくい体にかけると、その温かさに体がふるりと震える。温泉は転生してから初めてなので、期待がどんどん高まっていく。


「ではさっそく……」


 簡単に体を流して、私は岩に手をついて足先からゆっくり温泉につかっていく。ちゃぽと小さな水音が立ち、じんわりした温かさが体中を駆け巡っていく。


「……っあ~~、気持ちいい~~~~!」


 親父かと言われても仕方がないだろう。温泉が気持ちよすぎたときの反応は、たぶん男女共通だと思う。

 歌いたくなってしまう気持ちも今ならわかるよ。


『にゃう~』

「おはぎも気持ちいいね~」


 無意識のうちに、へにゃりと頬が緩む。

 ふーっと大きく息をはいて目を閉じると、聞こえてくるのは自然の音だ。小川の流れや、風で木々が揺れる音。ときおりカサッと何かが歩くような音がするのは、おそらく小動物だろう。


 は~~、このまま寝たら気持ちがいいだろうなぁ。

 と、そんなことを考えてしまう。しかしお風呂で眠るのは雪山で遭難するくらいに危険があるので、駄目、絶対。


 体が芯までポカポカしたところで、私はいったん温泉から上がる。すぐ横の岩を見ると、おはぎがへそてんスタイルで寝転んでいた。


「ずっと入ってると熱いよねぇ」

『にゃう~』


 おはぎも適度に涼んでいるみたいだ。

 私はちょうど椅子になりそうな岩に温泉をかけて、石鹸でちょっと洗って腰かけた。


「タオルを濡らして、石鹸を泡立てて……っと。この石鹸、すっごくいい香り!」


 そんなに質のいいタオルではないが、石鹸は十分に泡立ってくれた。ゆっくりタオルで体を擦ると、あっという間に全身が気持ちのいい泡で包まれた。

 体を洗うって、こんなに気持ちよかったんだねぇ。前世はお風呂が面倒だと思っていたけれど、これからはもっと感謝して入りたいと思います。


 体を洗っていると、肘から下あたりにちょっとした傷ができていることに気づく。お湯や泡が染みるわけではないので、本当に小さなかすり傷だ。


「令嬢をやってるときはこんなのなかったけど……あ、焚火のために枝拾いをしたりしたからか」


 自分でも気づいていなかったけれど、いろいろしているうちに怪我をしていたみたいだ。


「小さいから、ほっとけばそのうち治るかな?」


 ということで、気にしないことにした。

 ……まあ、この体は素材がいいし、結構お手入れもしていたのでもったいないとも思っちゃうけどね。

 一応令嬢だったので、お肌などはメイドたちに磨かれたりしていたのだ。


「それに悪役令嬢とはいえ、主要キャラだからスタイルも抜群!」


 思わず自分で胸に触ってしまうほどだ。


「っと、おはぎも洗ってあげるからね」


 自分の胸を触っている場合ではなかった。

 私は自分の体についた泡を流して、もう一度泡立てておはぎを呼んだ。


『にゃぁ?』


 おはぎは何をするかわかっていないようで、不思議そうな顔でこっちを見た。

次はおはぎを洗います。

大人しく洗わせてくれるといいな……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 頑張って!! かつて猫を洗って流血の大惨事になったことがあるのでエールを送ります。そういう人世界中に何億人はいるんだろうな~。 私は足の爪の間に足をかけて引っかかれて鮮血が飛び散りました。幸…
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