カリッとナッツのキャラメルバナナ
「「「ごちそうさまでした!」」」
お米にステーキまで堪能して、私は満足じゃ!
――と言いたいところだけれど、今日はデザートも用意している。
私は焚き火の前に置いてある椅子に座って、すぐに作り始めるか悩む。
「ラウル、フィフィア、まだお腹空いてる?」
「ん? 少しならっていう感じかな」
「私も少し空いてるくらいよ。どうかしたの?」
ラウルとフィフィアは首を傾げつつも、まだ少しお腹にスペースがあるようだ。なら、デザートくらいは食べられるだろう。
私は「オッケー!」と返事をして、用意していたものを焚き火の上にちょこんと乗せた。
「中身はなんなんだ?」
「できあがってのお楽しみ。すぐにできるから……」
「なんだか、いい匂いがしてきたわ」
フィフィアが焚き火の横で、鼻をふんふんさせている。
少しずつ香ばしい匂いがしてきたので、砂糖が溶けたのだということがわかった。きっと、焼き色もちょうどいいだろう。
私が包み葉を取ってお皿にのせ、葉を開いて中身を確認する。
「ん、いい感じに焼けてる」
「これって、バナナか!?」
「正解!」
バナナの皮を一面だけ剥いて、そこに砂糖をまぶす。それを包み葉でくるみ、砂糖をまぶした方を下向きにして焚き火の上に置いておいたのだ。
最後に砕いたナッツをアクセントとして載せたら、カリッとナッツのキャラメルバナナのできあがり。
バナナは各自一本ずつ。
私はラウルとフィフィアに「召し上がれ」と渡した。
ラウルはフォークでバナナを一口サイズにして、口に入れる。フィフィアもそれにならい、ラウルより少し小さめに切って口に入れた。
「うわ、これも美味いな……!」
「……!!」
ラウルが笑顔でかぶりついていて、フィフィアは美味しさを噛みしめている。
二人の口に合ったみたいでよかった。
私も一口サイズにして食べると、美味しい焼きバナナが口の中いっぱいに広がった。まぶした砂糖がほどよく焦げているので、香ばしい。
「バナナって、こんなに美味しくなるのね。焼いて食べたのは初めてだわ」
「そのまま食べても美味しいからねぇ」
わざわざバナナを焼く人は、この世界にはあまりいないかもしれない。
以前、リーリシュという果物を焼いたときも驚かれた覚えがある。果物は焼いても美味しいので、ぜひ試してほしいものだ。
「たまにはデザートもいいよね」
「そうね。ダンジョンで食べるっていうのが、また贅沢だわ」
フィフィアがふふっと笑いながらそう告げる。
「確かにそうだな。命のやり取りがあるような場所だし、油断すれば何があるかわからない。…………っていうのが、本来のダンジョンだからな……」
「それはそうね。ミザリーなら、どこへ行ってもやっていけるでしょうね」
「……私は気楽に旅をするだけです」
どこかに所属するつもりなんて、毛頭ない。
私の声がトーンダウンしたからか、フィフィアはそれ以上追及してはこなかった。
***
低層階は狭かったダンジョン内の通路も、奥へ行くにつれ広くなっていった。今では楽にキャンピングカーを飛ばすことができている。
そしてレベルアップも順調に進み、現在レベル18になった。
レベル17 食洗器追加
レベル18 二段ベッド設置
やっぱりスキル……キャンピングカーを使って魔物を倒しているのが大きいみたいだ。走行距離だけだとばかり思っていたので、助かるね。
ただ、やはりというかなんというか……段々レベルアップのペースは落ちてきたので、上がりづらくなってきたのだろうと思う。
『目的地に到着したので、道案内を終了します』
キャンピングカーのことを考えていたら、ちょうどナビが終了した。
「ここが九層の終着点か」
「次は十層ですね」
『にゃう』
ラウルたちの言葉に、私が頷く。
八層と九層の魔物もなんなく倒すことができ、本当に順調にここまで来てしまったのだ。
私たちはキャンピングカーを下りて、ぐぐーっと伸びをして凝り固まった体をほぐす。
周囲を見回した感じ、ここも五層のような川はないみたいだ。もしかして、五の倍数のときだけ何かあるのかもしれない。
そんなことを考えながら階段の方に目をやると、今までと違った。
「あの階段、わずかに光ってる……?」
「え? 本当だ、光ってるな。階段の素材に、光る石が混ざってるんだと思う」
「一〇層が最下層なのかもしれないわ。特に八層からは、魔物の強さもぐっと上がったもの」
ラウルに続いたフィフィアの言葉に、私は息を呑んだ。
「この先が、最下層――」




