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ハンバーガー販売

あけましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いいたします~!

「ティアーズフィッシュのハンバーガー、一つ二〇〇〇ルクでーす!」


 高い!! そう思いつつも私が声をあげると、わっと冒険者たちが押し寄せてきた。


「――!」

「いらっしゃいませ」


 私が驚くなか、フィフィアはさも当然とばかりに目の前の冒険者に「一度につき一つ、追加購入は二つまでです。食べ終わってから買いにきてくださいね」と説明をしている。

 冒険者も、それに「わかった!」といい笑顔だ。


「よし、俺が一番乗りだ! ――っ、うんめええぇっ!!」

「あ、コルドさんずりい! 俺も――うっま!!」


 フィフィアから購入した冒険者たちが、次々「美味い!」と声をあげている。


「こっちにも早く売ってくれ!」

「――っ、すみません! すぐに! 二〇〇〇ルクです」


 私にも声をかけられて、慌てて販売を開始する。


「ティアーズフィッシュのハンバーガーです」

「ほい、二〇〇〇ルク。ありがとうよ」

「ありがとうございます」


 購入していった冒険者は、すぐさまハンバーガーにかぶりついた。ザクッという歯ごたえに、食べた本人も驚いている。


「……こんな深いダンジョンの中で、美味い飯が食えるとは思わなかった。ありがとうな、嬢ちゃん」

「い、いえ! 喜んでもらえて嬉しいです」


 冒険者からのお礼の言葉に、頬が緩む。

 すると、ラウルが「追加お待ち!」とキャンピングカーからハンバーガーを持ってきた。瞬間、冒険者たちの目がギラリと光る。


 ……みんなおかわりしたくて仕方がないみたい!


 私は急いで「お待たせしました!」と声を張りあげる。

 するとすぐに、コルドがやってきた。ついさっきフィフィアから購入していたと思うのだが、もう完食してしまったらしい。


 ……え、食べるのはや……。


「待ってくれ、なんだこれは。美味すぎだろ。街でだって、そう食べられるもんじゃないぞ?」

「さすがに街の食堂と比べたら申し訳ないですけど……あ、もしかしたら食材のおかげかもしれません。ティアーズフィッシュって、ここにしか生息してないんですよね?」

「それはあるかもしれないな」


 ダンジョンの奥深くの川に生息している魚なので、そう簡単に街へ持ち帰ることはできない。ダンジョンを抜けて、さらに街まで移動しなければいけないからだ。


「俺も料理の達人だったらいいんだが、なかなかなぁ」


 コルドが頭をかいていると、「ダンジョンの中では難しいですから」とネビルが話に入ってきた。


「そもそも、調理器具を運ぶ余裕もないですからね。それなら、武器やポーションを持った方がいいですし」

「あ、それもそうですね……」

「俺にも嬢ちゃんみたいなスキルがあったらよかったんだけどな」

「あはは」


 ほかの冒険者の話を聞くと、改めて自分のスキルが規格外なのだと自覚させられる。


「――っと、これ以上喋ったら後ろのやつらにどつかれちまう」

「また食べ終わったら並ぶわ!」

「あっ、ありがとうございます!」


 コルドとネビルが下がったのを見て、私は次の冒険者にハンバーガーを売る。そしてラウルが補充して――というのを何回か繰り返した。



「ハンバーガー、完売です!」

「「「えええええっ!」」」


 ハンバーガーの在庫がなくなったことを告げると、冒険者たちからブーイングが起こった。

 でも、私とラウルの二人でこれ以上作るのは……もう……無理です……。

 それは冒険者たちもわかってくれているみたいで、「美味かったよ!」「ありがとう!」と口々にお礼を伝えてくれた。


 ……大変だったけど、みんなに喜んでもらえてよかった。




 キャンピングカーに戻った私は、へたりとソファに座り込む。ラウルとフィフィアもだ。おはぎは癒し係として、私の膝に座っている。可愛い。


「ハンバーガー屋さん、お疲れ様~!」

『にゃあぁ』

「お疲れ。でも、三倍じゃ足りなかったなぁ」

「お疲れ様。冒険者だから、いくらでも食べるわね」


 ラウルがお茶を淹れてくれたので、それを飲みながら今日のことを話す。


「今後も続けてほしそうだったわね」


 フィフィアの言葉に、私は苦笑する。

 喜んでもらえたのは嬉しいけれど、私たちはエリクサーを求めてダンジョン攻略をしているのだ。何日もお店をしているわけにはいかない。


 売上金の確認をしているのだが……完売しただけあって、懐が潤った。しかも材料は釣り上げた魚なので、あまりかかっていないわけで。

 ちょっと多めに作って、販売数は七〇個。しめて一四万ルク。


「この売上で、キャンプアイテムが一つ買えちゃうんじゃない……?」


 なんて思ったのも、仕方ないだろう。

 ほしいものは、たくさんある。あのときあきらめた焚き火台を、カスタマイズして鍛冶屋で作ってもらうのもいい。ほかには、ランタンや、今日みたいなときのために大きいサイズの調理器具があってもいいかもしれない。

 あ! 荷物を積んでおくために、車輪のついたワゴンなんかもほしいなぁ~。


 私がそんな妄想をしていると、フィフィアがやれやれといった感じでため息をついた。


「ミザリーは、それより先に買うべきものがあるでしょ?」

「え? 買うべきもの……。あ、おはぎの替えのバンダナとか? 冒険続きだったから――」

「装備よ、装備!!」


 食い気味で正解を言われてしまった。


「駆け出し冒険者、っていうなら今のままでもいいけど、ここはもう精霊のダンジョンの五層なのよ。次は六層に行こうとしてる。次、街に戻ったらもう少し整えるのがいいと思うわ」

「基本はそのままで、防具を買い足すか……防御系の魔導具を装備してもいいかもしれないな。ミザリーだと、あまり重いものは装備するのがきついと思う」

「……確かに。ダンジョンは魔物がたくさんいて、この服だけだと心許ないもんね」


 キャンピングカーで進んでいたから、そこまで気にしていなかった。

 私は頷いて、次に街へ行ったら装備を考え直そうと思う。

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― 新着の感想 ―
[一言] あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。 某軽トラみたいにミサイルポッドをつけるとか、迫撃砲を牽引するとかかな? 不条理(魔法)がある世界で物理兵器による戦闘は困難だと…
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