ハンバーガー何個食べる?
せっかくなので大みそかに更新!
みなさま良いお年を~~~~~!
「ん~っ、美味しい!」
「うまっ!!」
『にゃっ、にゃう!』
フィフィアとラウルがアクアパッツァを食べて頬を緩めた。おはぎには軽く焼いた魚と、茹でた鶏肉を用意している。
「トマトの酸味が合うな。これならいくらでも食べられそうだ」
ラウルはパンの上に魚を乗せて、もりもり食べている。魚の量が多かったかもしれないと少し心配だったけれど、まったくそんなことはなかった。
私もさっそく魚を口に含む。
まずは身の部分。しっとりしていて、味がしみ込んでいる。皮もしっかり焼いているので、パリッとしていて美味しい。
ん~~、これは最高!
夢中で食べていたフィフィアが、「そういえば」とキッチンを見た。
「魚は用意……できたみたいね」
キッチンの床に、バケツに入った魚がどどんと置かれている。それを見たフィフィアは納得して、「夕方から大忙しになりそうね」と言う。
「大漁だったよ。ここで自給自足生活もできちゃいそう」
「できそうだけど、さすがに肉も食べたいぞ」
「野菜も必要よ」
魚を釣ってのんびり生活も楽しそうと思ったけれど、二人から駄目だしが出てしまった。でも確かに魚だけだと食材が少ないか……肉は正義だ。
「それか、日当たりのいい場所で何か育てたらどう?」
「え、キャンピングカーで家庭菜園ってこと?」
それは……楽しいかもしれない。
ミニトマトとか、オクラや大葉あたりなら育てやすそうだ。天気がいい日は外に出してあげてもいいし、キャンピングカー生活がもっと楽しくなりそうだと思う。
料理もしやすくなるだろうし!
街に行ったら、鉢植えと種を用意しようと考え頬が緩む。
「ミザリー、にやにやしてるぞ?」
「え! キャンピングカーで何か育てたら楽しそうだなぁ……って考えてたからかな?」
にやにやだなんて恥ずかしい! そう思って手で頬を押さえるけれど、にやにやが収まるわけでもなく。
「植物を育てるのは、いいわね。……何が起こっても飢えだけは回避できるもの」
「フィフィアが言うと一気に悲壮感が増すんだけど……」
行き倒れていたフィフィアの説得力は、すさまじい。
とはいえ、育てていたら最悪の状況が防げる可能性はある。これからダンジョンの奥へ進んでいくのだから、備えあれば憂いなしだ。
「……っと、早く食べて魚を捌かなきゃだった」
『にゃ~……』
「あ~、量が多いもんな」
「料理以外にすることがあれば、手伝えるわ」
ラウルがバケツ一杯の魚を見て苦笑している。おはぎはおかわりしたそうだけど、あまり食べすぎると吐いちゃうからね。
そしてフィフィアはもう一度「料理以外で……」と言う。
「なら、キャンピングカーの前で売るからテーブルの準備をお願いしていい?」
「わかったわ」
迷宮都市に戻ったときに購入したテーブルと椅子のセットを使うときがきたね!
なんとか大漁だった魚を捌き終わり、私はふうと一息つく。
今日も、昨日作ったティアーズフィッシュバーガーを作っていくよ!
まずはパンを焼くんだけど……私たちも食べるから、人数分となると二三個あればいいんだけど……失敗する可能性もあると、もっと多い方がいいかな?
「ねえ、ラウル。何個くらい作ればいいかな? 冒険者全員が買ってくれるとは限らないし、少な目の方がよかったりするかな」
「……本気で言ってるのか?」
「え?」
どういうことかわからず私が首を傾げると、ラウルが悩むようなそぶりを見せつつも考えを話してくれた。
「その倍……いや、三倍くらい用意してもいいんじゃないか?」
「ええぇっ!? そんなに必要!?」
「必要だ」
驚いた私に、ラウルはものすごく真面目な顔で頷いた。
……でもそうか、男性はハンバーガー一個じゃ足りないんだ。そういえば、前世のハンバーガー屋では、数個食べてる人がいた気がする。
「ちなみに、ラウルは何個くらい食べれそうなの?」
「今日はあんまり動いてないから、二~三個ってとこかな?」
「…………」
だとすると、六層で狩りをしてへとへとで帰ってくる冒険者たちは、いったいいくつ食べるのだろうか?
私はひえっと嫌な汗をかいて、慌てて用意する数を三倍に増やすことにした。
***
キャンピングカーがレベル14になった際、サイドオーニングが設置された。
サイドオーニングとは、私がいつも使っているタープのようなものだ。日よけ用の布として使われるのが一般的で、雨のときも重宝する。
ドアの上部に位置する屋根の端に、ロールアップで布が収納されている。それを引き出し、端の部分にポールを立てて設置するのだ。
サイドオーニングがついているキャンピングカーは、いくつか動画で見たことがある。
小さくて簡易的なものから、台形のもの。もっと広い面をカバーできるものもあり、値段もお高めだと動画で言っていたのを覚えている。
……レベルが上がるだけで高価なオプションが無料でついちゃう私のキャンピングカー、控えめに言ってやばいのでは?
「ミザリー、テーブルはこんな感じでいいかしら」
「ありがとう、フィフィア。バッチリ!」
ちょうどサイドオーニングの下にテーブルを設置してもらった。ここにハンバーガーを乗せて販売するのだ。
周囲を見ると、探索から帰ってきた冒険者がチラチラこちらを見ている。
すると、「できたぞ!」とラウルがキャンピングカーから顔を出した。
「「「本当か!?」」」
ラウルの言葉に真っ先に反応したのは、冒険者たちだ。私も返事をしたのだけれど、みんなの大声にかき消されてしまった……。
「楽しみに待っててもらったみたいだな」
そう言って、ラウルは大皿に載せたハンバーガーを持ってキャンピングカーから下りてきた。
揚げた魚のいい匂いがただよってきて、無意識のうちに喉が鳴る。
「はあぁ、美味しそう」
さっそくフィフィアが食べたそうにしているけれど、今回は販売するのが目的だ。私たちが食べるのは、販売が終わってからになる。
フィフィアはそれがわかっているので、「早く販売しましょ!」といい顔をした。
明日も更新します




