動き出す者達
その日王都中であちこちから悲鳴が上がっていた。
「こいつを不幸にしたこの国など存在する価値などない、全部壊してやる」
ロイは魔力を放ちあちこちの建物を壊し続ける。
突然の破壊行動に民達はただ逃げまどうだけであり悲鳴が聞こえて来る。
この事態にすぐに気づいたのは冒険者ギルドであった。
「ギルドマスター、王都で誰かが暴走して街の建物を次々と壊しています」
受付嬢がギルドマスターと呼ばれる女性に報告する。
「何だと? 敵襲かあるいはどっかのバカが暴れているのか、王国の騎士団達は何をしてるんだ?」
「現在この状況に気づいてすぐに向かうように準備をしているようです、その間に何とか冒険者で止めてほしいと」
「たく、いつもいつもあいつらは、何か起きてからの行動が遅いんだよ、今すぐ王都にいる冒険者達を向かわせろ」
「はい」
受付嬢が出て行きすぐに冒険者達が止めに向かうが次に来た受付嬢の報告でギルドマスターは自分の耳を疑う。
「ギルドマスター!!」
「随分早いな治まったのか?」
「いえ、それが全滅しました」
「何だと!? 全滅だと!? 向かわせた連中にはAランク、Sランクの冒険者もいたはずだろ?」
「その者達も全滅しました」
「バカな、敵は一人じゃないのか!?」
「いえ、一人です、意識がまだあった者の話によると敵は一人でバケモノのような強さを持っていてAランク、Sランクの冒険者がまるで歯が立たなかったと」
「何の冗談だ」
ギルドマスターは頭に手を当てて言う。
「それと、ギルドマスターにお客様が来ています」
「客?」
「フロイス公爵夫妻と学園の理事長です」
「わかった、通せ」
受付嬢の言葉で誰が来たのか理解したギルドマスターは部屋に通すように指示をする。
「久しぶりだな、ロミン」
「ああ、あたしも久しぶりに会えて嬉しいがそう言うわけにもいかないんだろ?」
「察しが良くて助かる」
「まあ、アンタ達座りなよ、話はそれからだ」
ギルドマスターロミンに促され三人は座る。
「それで、バルガス一体何が起きているんだ?」
ロミンはバルガスに問う。
バルガス・フロイス、ロイの元婚約者フェイリーチェの父親でありフロイス公爵家の当主である。
「話はすでに聞いていると思うが王都で今ある者が破壊行動を起こしている」
「その話なら聞いた、たった一人に冒険者達が全滅した、どう言う事なんだ?」
「その冒険者を全滅した者ですが、その者は私達の娘の婚約者なのです」
「何だと!?」
バルガスの隣に座る女性の言葉にロミンは驚く。
彼女はイリーナ・フロイス、フェイリーチェの母親でありバルガスの妻である。
「アンタ達の娘の婚約者って言ったら」
「そうだ、ライが引き取った平民との間に生まれた子供だ」
「ライの子供か、それで何でアンタもいるんだ? レジス」
「私の学園にも被害が出たからですよ、その者は私の学園の生徒でしたから」
ロミンの問いに男性が答える。
彼はレジス・フォード、ロイが通っていた学園の理事長をしている。
「ロイ・ベルファスト君、ライ・ベルファストの息子ですね、その彼ですがソフィア王女を危険に会わせたとして謹慎されていたのですが、彼は少し前に学園に来て学園を半壊させたそうです」
「半壊だと? そのロイって子はそんなに凄いのか?」
「いえ、剣も魔法も特に突出したものはないと教師達は言っていました」
「そんな奴なら冒険者が全滅するわけないだろ」
「ロイ君の被害に会った生徒達も何人もいましたがいずれも命に別状はありませんでした、被害に会っていなかった生徒達に聞いた所、まるで人が変わったと言っていました、さらにベルファスト公爵家も半壊させたと」
「おい待て、ベルファスト家を半壊だと? ライはどうなったんだ?」
「そこからは私が話そう」
レジスに代わりバルガスが話す。
「学園からの連絡を受け私とイリーナはライの所に向かったがそこは惨劇だった、屋敷は半壊し多くの使用人達がケガをしていて、ライやライの子供達も全員やられていた」
「ライがやられただと!?」
バルガスの言葉が信じられないのかロミンは叫んで立ち上がる。
「ええ、信じられませんがライはやられていましたが幸い命だけは無事でした、唯一無事だったメイズさんに聞いた所、ロイ君がまるで人が変わったようにライやライの子供達を簡単に倒したと」
「そのロイって奴に何かあったとしか思えないな、しかし人が変わったか、そのロイって子はどんな子なんだ?」
「直接会った事はないんだ、ライからいきなりフェイリーチェの婚約者にと頼まれてな、私としても友からの頼みならと断らなかった、娘から聞いた話だと大人しい子だと聞いていた」
「大人しい子ね、それなら何がどうなってここまでするくらいに変わったんだ? 話を聞いて今の状況からして完全に別人じゃねえか」
「そのためにも我々が行くしかないと思った、だから力を貸してくれ、かつてこの国の五英雄と言われた我々でないと止められないかもしれない」
「はあ、もう英雄扱いは嫌だからギルドマスターになったんだけどな、しょうがない、ライがいないが久々に四人で行くか」
「感謝する」
バルガス達はロイを止めるために動き出すのだった。
一方王都の広間では半壊した建物があちこちにあり。
「おうおう、随分と団体さんで来たもんだな」
ロイの目の前に多くの王国の騎士達がいた。
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