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実の親であっても愛がなければ、それは家族と言えないのかもしれない

「ほら、掛かって来いよ」


「貴様、よくも私の子達を」


 ライは自分の子供達がケガを負い地面に転がっている姿を見てロイを憎々し気に見る。


「しかし、公爵家だと言うのにその子供達がこんなものだとはな、口ほどにもねえな、アンタの育て方が悪いんじゃねえのか?」


「黙れ!! 貴様は俺の手で殺す!!」


 ライは剣を構えて魔法で身体を強化してロイに襲い掛かる。


「ほお」


 ロイはライの剣を躱しそのままライに拳を当てる。


「ぐっ!!」


 ライは一撃を貰うが身体強化をしていたので大したダメージにはならず、そのまま再び剣を振るがロイはそれも難なく躱す。


「おいおい、身体強化してこれか?」


「黙れ!!」


 怒りで冷静さを失っているのかライの攻撃が単調過ぎてロイは簡単に躱し続けるライにとってはその行為も怒りを倍増させていた。


「貴様は、私のために利用できた事を光栄に思え!!」


「あー?」


 ライの言葉に疑問を覚えたロイはライの剣を片手で握りそのまま砕く。


「バカな!? ミスリルの剣が!?」


「そんな事に気を遣ってる場合か?」


 自分の使っている剣が砕かれた事に驚いているライの隙を逃さずにロイはライを掴みそのまま地面に叩きつける。


「ぐふっ!!」


「なあ親父殿、俺はずっと疑問に思ってたんだけどよ、何でこいつを引き取ったんだ?」


 ロイが質問するがライはそれに答えなかったため再び地面に叩きつける。


「がっ!!」


「早く答えなきゃ何度でも叩きつけるぞ、お前はこいつを引き取ったのに何故かその後何もしなかったよな? 何でだ?」


 質問に答えないライに構わず話をしながらライを地面に叩きつける。


「それどころかこいつを蔑ろにしてたよな? そこにいる母上殿からも地面に転がってるこいつらからも毎日いじめられてるのに何もしなかったよな? じゃあ、何でこいつを引き取ったんだ? 愛も何もないのに何でこいつを引き取ったんだ?」


 ロイが何かを言う度にライを地面に叩きつけるがライからの返答はない。


「おい、何とか言ったらどうなんだ? って何だよおい」


 ロイはライを見るとすでに意識がなく気絶していた。


「答える前に気絶なんて情けねえな、まあ良いか」


 ロイはライを手放すとメイズに顔を向ける。


「ひっ!!」


 顔を向けられたメイズは恐怖で悲鳴を上げる。


「なあ、アンタは知らないか? こいつを引き取った理由をよ?」


 ロイはメイズに近づくがメイズは恐怖で後退りする。


「おい、聞こえてるだろ?」


「し、知らない!! 私は何も知らない!! この人が突然あなたを連れて来たのよ!!」


 恐怖心からかメイズは悲鳴交じりに声を上げて言う。


「はあ? つまりアンタは何も知らなかったと? なら何故疑問に思わなかったんだ? 普通疑問に思うだろ? 何で聞かなかったんだ? 何も知らずにこいつをいじめていたのか? 随分自分勝手だな、なあ?」


「そんなの当然でしょ!! いきなりあの人の子供だって連れて来たのよ!! 急に受け入れられるわけないでしょ!! 私だって困惑してたのよ!!」


「困惑だと? その割にはお前の子供達が俺をいじめても面白そうに見てたよな? 困惑してる奴がそう思うか? 苦し紛れの言いわけだな、まあ良い、お前もこいつらと同じようにするか」


「ひい!!」


 近づいて来るロイにメイズは後退るが壁に当たってしまいもう逃げ場がなくなったメイズはその場に座り込む。


「いや、お願い許して、私が悪かったから」


「言っただろ? 俺はお前等にこいつが受けたお礼に来たと」


 ロイが手を上げようとしたその時。


「や、やめてください!!」


 突如声がしたので振り向くと使用人の女性が怯えながら立っていた。


「奥様のお腹には、子供がいるんです!!」


「は?」


 ロイは使用人の女性に近づく。


「ひ!!」

 

 女性は近づいて来たロイに恐怖して尻餅をつく。


「おい、そんなの初耳だぞ、何で使用人のお前が知っていてこいつは知らないんだ?」


「も、申し訳ありません」


「謝ってほしいわけじゃなくて、何で教えなかったんだって聞いてんだよ?」


「申し訳ありません」


「だから、何で教えなかったんだって聞いてんだろ? 何でその質問に答えねえんだよ?」


 使用人の女性の胸ぐらを掴みながら問うが女性は恐怖で涙を流してひたすらに謝罪の言葉を繰り返しているだけだった。


「申し訳ありません、申し訳ありません」


「ちっ」


 ロイはそのまま手を離すと再びメイズに向かう。


「こうなったらお前に聞くか、何でこいつには言わなかったんだ?」


「あ、うあ」


 ロイの問いにメイズは言葉を詰まらせていた。


「だ、旦那様がおっしゃったのです、あなたには言う必要がないと」


「あ?」


 ロイの問いに答えたのは先程まで血まみれになって気を失っていた執事長だった。


「言う必要がないだと?」


「旦那様は、あなたを家族とは思っていませんでした、だから話す必要もないと」


「じゃあ、何でこいつを引き取ったんだ?」


「理由はわかりません、ただ旦那様は、あなたには何もしなくて良いと奥様達と同じ扱いはしなくて良いと」


「じゃあ何か? お前はそこに倒れてる親父殿の指示に従ってこいつをこの家の奴等全員で虐げたのか? 罪悪感も哀れさも何も感じずにか?」


「私達は、貴族には逆らえない、あなたもわかるでしょう? この国は貴族や王族の命令には逆らえない、そんな事したら身分の低い者はすぐに殺される、例えそれが間違いだとしても生き抜くためには仕方なかったのです」


「んだよ、結局主人に逆らえねえ奴隷と同じだな、何かもうこいつらへの礼はもう良いか、だが最後に置き土産だ」


 ロイは手をかざすとその手から魔力の塊が現れてそれを放出すると公爵家の屋敷が半壊した。


「貴族様は金持ちなんだからこれくらい壊れても直せるだろ? じゃあな」


 そう言ってロイはそのまま公爵家を出て行く。

 その光景をメイズ達はただ唖然と見つめる事しかできなかった。


「さて、こいつが暮らしていた家の奴等への礼は終わった、次はあそこだな」


 ロイはどこかへと向かうのだった

読んでいただきありがとうございます。

同時に投稿している作品「魔王様、今日も人間界で色々頑張ります」もよろしくお願いします。

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