受けた恩は何倍にもして返す、それは仇でも同じ事
「貴様」
ライはロイを鋭い眼光で睨む。
しかしロイはそんなもの気にせずに部屋に入る。
「おいおい、そんな目で睨むなよ、せっかくお礼をしに来てやったんだからよ」
ロイは笑みを浮かべて言うがその片手には先程相対した執事長が血まみれで引きずられていた。
「貴様、平民の分際でこの屋敷に入るとは、どういう事かわかっているのか!!」
「ああそうさ、こいつはアンタに追放された、そこで終わりにしておけば良かったんだ、だがガラの悪そうな連中を雇って殺すのはさすがに見過ごせねえな、だからお礼をしに帰って来たんだよ」
「黙れ!!」
ライは剣を抜き構える。
「何だやるのか? 良いぜこいつが受けた屈辱を全部教えてやるよ」
「調子に乗るなよ、ロイ」
ロイの前にライの子供達、エスリー、ルシウス、オストが立ちふさがる。
「お前はもうこの家の人間じゃない、つまりは平民だ、平民が貴族の家に無許可で侵入ししかも使用人達にまで手を出した、これは、もう殺されても文句は言えないぞ」
「全く、今更怒りを露わにして何がしたいんだい? 僕達に何も反抗しなかったくせにいきがるなよ」
「また練習台にでもなりたいのか?」
三人はそれぞれ戦闘態勢に入る。
「何だぁ、ザコが相手をするのかよ、良いぜいつでも来いよ」
ロイは余裕たっぷりに手で掛かって来いと挑発する。
「調子乗ってんじゃねーぞ!! また練習台になれよ!!」
次男のオストが剣を抜いてロイに切り掛かる。
「死ねぇ!!」
しかし、オストの剣をロイは右手で掴み動きを止める。
「え?」
「大した事ねぇな」
ロイはそのまま右手で握る力を込めると剣は砕ける。
「な!?」
驚くオストに容赦なくロイは右手でオストを振り払うとオストはそのまま飛ばされ壁に激突し気絶する。
「さて、次はどっちが来るんだ?」
再びロイは右手でエスリーとルシウスを挑発する。
「なめるんじゃないぞ!! 平民が!!」
ルシウスが怒りを露わにしロイに魔法を放つが。
「遅いな」
「な!?」
ロイは瞬時にルシウスとの距離を詰めルシウスの頭を掴み持ち上げる。
「くそ、離せ!! 平民がこの僕に触れるな!!」
「ああ、良いぜ」
ロイはそのままルシウスを地面に叩きつける。
「がっ!!」
地面に叩きつけられたルシウスはそのまま気絶する。
「これで二人目だな」
「そこまでだ!!」
「ん?」
振り向くとそこにはエスリーがすでに魔法をいつでも打てる状態になっている。
「私の弟達をかわいがってくれたがこれでお前はもう終わりだ、チリになって消えろ!!」
「おいおい悲しいな、少なくともこいつはお前等がどれだけ見下しても姉や兄として受け入れたのに、お前等はこいつの事を弟として受け入れられなかったのか? そんなに受け入れたくなかったのか?」
エスリーに問いかけロイは右手を前に出す。
「黙れ!! お前などこの家に来たあの日から弟だと思った事など、一度もない!! 消え失せろ!!」
エスリーは魔法を放つ。
強大な炎の魔法がロイ向かって行き炎はロイに直撃する。
「バカめ、消し炭だ」
「ふーん」
「何!?」
エスリーは驚愕する。
炎は確かに直撃したがロイにはまるで効いていなかった。
「何だ、まさかと思うがこれで全力か? もしそうなら大した事ないな」
「そ、そんなバカな」
エスリーは目の前の光景が受け入れられなかった。
自分の最大の一撃を放ったのに全く効いていない現実が受け入れられなかった。
しかし、そんなエスリーの事情などお構いなしにロイはエスリーと距離を詰め首を掴んで持ち上げる。
「がっ!! はっ!!」
エスリーは逃れようとロイの腕を掴むが全く引きはがせない。
「騒ぐなよ、お前等はこのくらいで勘弁してやるよ」
ロイは掴んでいない左手の拳を握りそのままエスリーの腹部に一撃を与える。
「がはっ!!」
エスリーは口から血を吐き出しそのまま気絶する。
「あー、血がついちまったな、まあ良いか」
そう言ってロイは気絶したエスリーを地面に捨てる。
ライの子供達は全員呆気なく倒され地面に転がっている。
残されたのは当主のライとその妻のメイズだけである。
メイズの方は目の前のロイをそして自分の子供達の惨状を見て恐怖で声も出なかった。
対してライの方は怒りを露わにしロイに凄まじい殺意を向ける。
「さて、いよいよアンタの番だぜ、親父殿」
ロイはライ相手にも笑みを浮かべて挑発するのだった。
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同時に投稿している作品「魔王様、今日も人間界で色々頑張ります」もよろしくお願いします。