長い時を経てそれは、再び解き放たれる
彼が封印されてから、その国でのそれぞれの者達のその後を語ろう。
まず、彼を引き取ったライ・ベルファストは今回の騒動で国の危機を招いてしまった責任を取らされ処刑された。
それでも彼は最期まで自分の選択は間違っていないと言っていた。
ライの妻メイズと子供達のエスリー、ルシウス、オストは辺境の地へと向かいその使用人達も連れて行き辺境での暮らしをした。
今回の件でメイズ達もどこか思うところがあったのか辺境の地ではそれぞれ領民達のために尽力しやがて妹が生まれたが妹は全く才能がなかったがそれでも彼女達は愛情を注ぎ蔑ろにしなかった。
そしてある日には必ず誕生日を開いた。
その誕生日には毎年懺悔の言葉と祈りの言葉を送っていた。
そして彼女達はある孤児院に大量の寄付金を送っていた。
その孤児院は彼がいた孤児院であり彼女達なりの彼への償いだと思われる。
彼の元婚約者であったフェイリーチェ・フロイスは今回の事で剣と魔法の道を完全に諦め淑女らしく振る舞うようになった。
やがて新しい婚約者と結婚し子供を産み天寿を全うする。
彼女の最期の言葉は誰かの名前を呼びその者に対する謝罪の言葉だった。
彼女の子供や孫達は誰に対する謝罪なのかは永遠にわかる事はなかった。
フェイリーチェの侍女のサテナはフェイリーチェについて行き結婚の話もあったがかつて彼を侮辱した自分が彼を差し置いて幸せになってはならないと彼女なりの償いのために生涯結婚する事なく天寿を全うした。
バルガス・フロイスは貴族が平民を好き勝手使う事に対して前から思う事があり今回の彼の件で本格的に撤廃するように動き出すが一度甘い汁を啜った王族や貴族達が多くいて少数派の自分達では難しかったが双子の王女達の協力やロミンやレジスそして多くの平民達の協力もあり、どうにか悪しき風習を撤廃させる事に成功したがその直後病に掛かってしまいこの世を去る。
イリーナ・フロイスは彼を封印した時に自らの魔力と自らの寿命も使ってしまった事により彼を封印した後すぐに倒れてしまい、数年後にバルガスとフェイリーチェに看取られながらこの世を去る。
ギルドマスターのロミンは今回の件で腐りきった王族、貴族をどうにかするためバルガスとレジスと共に王女達と協力しながら貴族に不満を持っている冒険者や知人達を味方につけ悪しき風習をどうにかし、その後はギルドマスターとしての仕事をしながら時々王女に協力をしながら人生を過ごした。
彼の通っていた学園の理事長レジスは今回の件で腐りきった王族、貴族をどうにかするためロミンと共にバルガスに協力し、王女達の協力と前から不満を持っていた教師や生徒達にも協力してもらい悪しき風習をどうにかしその後は貴族が平民を虐げるのをやめさせるため生徒達に今まで以上に目を光らせ厳しく指導するようになる。
ソニア王女は今回の件で自分がいかに狭まった範囲で物事を見ていたかを思い知り悪しき風習に前から思うところがあったのでバルガスが行動をしていると知りソフィア王女と共にバルガス達に協力し父親である王に訴え続け最後には悪しき風習を終わらせる事に成功しその後は王族として正しく導こうと責任感を強く抱き、苦労しながらも国を良い方向へと導く。
ソフィア王女は彼から言われた言葉を受けて変わった。
国の害悪なる者には容赦なく排除したりなど、仲の良かった生徒であろうと悪事に手を染めたのなら容赦なく切り捨てたりなど、無垢で大人しかった彼女はどこかへ行ってしまったかのように冷酷な判断を下す氷のような冷たい性格へとなった。
悪しき風習を終わらせた後も国の害悪なる存在を次々と排除してソニア王女が国を良い方向へと導く手助けをするがある日の馬車の帰り道で事故に会い崖へと馬車が落ちてしまうが事故の現場には御者や付き人、護衛や馬の死体はあったがソフィア王女の死体だけはどこにも見つからずどこか引きずって移動した後があったと言われているが結局は見つからなかったため死亡扱いとなった。
それから長い長い時が流れ世界が変わっていった。
人間以外にも言葉を話せる者達が現れ人間達はその者達に殺されたり奴隷にされたり家畜以下の扱いを受けるようになりそのまま人間達にとっては絶望の時代が続いていった。
当然彼がいた国もとっくに滅びていて今では森と化していた。
「はあ、はあ」
森の中を一人の小さな少女が息を切らしながら必死に走っていた。
「ほらほら、逃げろ逃げろ」
「頑張らないと食べちゃうぞー」
必死に逃げる少女の後ろを何者かが追いかける。
その姿は人間と同じで二足で立っているが姿はまるで獣のようなものだった。
動物のような顔で尻尾と鋭い爪と牙があった。
「おらよっと」
獣の一人が少女に短剣を投げ少女の足をかすめる。
その痛みで少女は転んでしまうが転んでもすぐに起きて走り出す。
「おお、良いじゃん」
「頑張れ頑張れ」
「子供は、元気が一番」
獣達はまるで遊びでもするかのように少女を追い詰めていく。
やがて少女は疲れたのかその場で倒れてしまう。
少女の倒れた場所には何かがあったが少女はそんな事を気にしている暇がない。
「さあて、追いついたぞ」
「まあ、子供にしては、頑張った方じゃないか」
「鬼ごっこも終わりだな」
「あ」
少女は恐怖でもうダメだと思い何かにしがみついている。
「ん? 何だこれ?」
「よくわからねえが、なんか鎖みたいなものがあるぞ」
「それによく見たらこれ棺じゃね?」
獣達が少女のしがみついているものを見ると大きな棺で鎖がついているが鎖は錆びついていて今にも開きそうである。
「何でこんな所に棺があるんだよ?」
「そんなの俺が知るかよ」
「どうでも良いだろそんな事よりさっさと殺そうぜ」
「それもそうか」
「んじゃ、そう言う事で」
「あばよ」
獣達が少女を殺そうとした瞬間棺の鎖が壊れて蓋が勢いよく開いた。
「な、何だ!?」
突然の事で獣達は驚き少女も何が起こっているのかわからない状況である。
そして棺の中から一人の影が現れる。
「ああー? 何だお前ら?」
それは、大昔に確かに存在したその時代では相手になる者が一人もいないと言われていた存在。
絶望と怨みから生まれた何か。
それは、今の人間達にとって絶望となるのか希望となるのかはわからない。
ただ一つこれだけは言える。
それは、再び世界に解き放たれたと言う事を。
これにて完結になります。
この話の続編を考えていてこの話はいわばエピソードゼロみたいな本編の前日談と言ったような感じの作品です。
続編は違うタイトルで出す予定ですが他に書きたい話があるのでいつ出すかは未定です。
気長に待ってくださると嬉しいです。
取りあえずこの作品はここで完結になりますのでここまで読んでいただきありがとうございました。




