子供のために気遣う親、だがその気遣いが子供達のためにならない事もある
ロイが一時いなくなった事でバルガス達はライの家に来ていた。
「ライ」
「ああ、お前達か」
「聞いた時は驚いたぞ、お前が歯が立たずにやられたと」
「そうだな」
ライの子供達は重症と呼べるほどではなかったがライはあまりにも重傷だったため今はベッドの上にいる。
そこへバルガス達が見舞いに来た状況だ。
「アレはどうしたんだ?」
「ロイ君の事か、あれから学園にも行きそこで学園も半壊させた、そして今冒険者達も騎士団も魔法師団も全滅した」
「ライ、生徒達が言ってました、ロイ君はソフィア王女に何もしてない、あれは事故だったと、平民の彼が公爵家の人間になったのが気に入らなかったから嘘をついたと、ロイ君は全くの無実だったのですよ」
「それなのにライ、あなたはロイ君を追い出しただけでなくロイ君を亡き者にしようとしましたね、自分の子にどうしてそのような事ができるのですか?」
「お前達には関係ない、俺の家の問題だ」
「そう言うわけにはいかないんだよ、こうなったのはライ、アンタがロイを殺したから今の状況になってんだよ」
「どう言う事だ?」
「私が話そう」
ライの問いにバルガスが答える。
ロイが変わってしまった理由、すでにロイの魂は存在しない事。
そしてロイの身体に宿った別人格がこの国を滅ぼそうと考えている事。
「そう言う事か、通りでアレにしては強過ぎると思った」
「おい、何他人事のように言ってんだよ、アンタのせいでこうなったんだぞ」
ロミンが突っかかろうとするがバルガスが止める。
「ライ、ここまで来たらお前に聞かなければならない、そもそもお前がロイ君を引き取らなければ、いや引き取ったとしても虐げなければこうならずに済んだ、お前は何故ロイ君を引き取った? 彼は、お前が父親だと言わなければ何も知らずに育ったんだぞ? 何故今更になって引き取った?」
「・・・・・・」
「おい、黙ってないで何とか言えよ」
黙るライにロミンが問いかける。
「アレを引き取った理由は、俺の子供達より下の存在を用意したかったからだ」
「は?」
ライの言葉にロミンは疑問の声を上げる。
「エスリー、ルシウス、オストは確かに才能はあるが俺に比べたら半分にも満たない、あれ以上鍛えても上がらない、だがそれだとあいつらは将来苦労する、英雄の一人と言われた俺の子供達が英雄の半分の才能も受け継いでいないと下級貴族共に陰口を言われる、そうなったらあいつらは自信を完全に失ってしまう、何とかしたいと思ったその時に思い出したのさ、俺には平民の女との間に作った子がいた事をな」
「それがロイ君か」
「ああ」
「おい、まさかお前」
ライがロイを引き取った理由が何なのかに気づいたロミンは拳を握りしめる。
「ライ、まさかとは思いますが、あなた、自分の子供達が自分の才能を引き継いでいないからそれよりも下の存在を置く事で子供達に自分達の方が優れていると思わせるつもりだと言うのですか?」
レジスが冷静にしかしどこか怒りを含んだ言い方でライに問う。
「ああそうだよ、あの女は俺が遊びで相手をしてやっただけだ、まさか子供ができていたとは思わなかったけどな、手紙で知ったが元々そう言う気はなかったから無視していたがな」
「ライ、あなたが私の娘との婚約にロイ君を選んだのは」
「ああ、あの子もお前達の才能を受け継いでいない、だから何もないアレを婚約者にしたのさ、まあさすがにお前達の娘には悪い事をしたと思っている」
「ふざけるな!!」
ロミンがライの胸ぐらを掴む。
「お前自分が何をしたのかわかってるのか!? そんなくだらない理由であの子を引き取ったのか!! あの子の人生を何だと思ってるんだ!!」
「平民の人生など俺の知った事か、むしろ貴族の役に立てて光栄だろ」
「何が光栄だ!! クソッたれな最低野郎が!! あの子はお前が父親だなんて知ってすらいなかった、お前が現れなければあの子は普通に幸せな人生を歩めていたんだ!! 平民達が頑張ってるから王族、貴族達が存在するんだ、だったら王族、貴族達は平民を守るのが当然だろ!!」
「先代の王の時代はまだマシな方でした、今の王になってから今の時代のように平民が貴族の命令は絶対だとか逆らえば処刑だとかそんな事になってましたね、嘆かわしい事です」
「ライ、我々貴族はたった一言で平民を消す事などできてしまう、それほどの力があるんだ、お前のその自分勝手な理由でやって良いと思っているのか?」
「お前等にわかるか」
ライはロミンの手を払い反論する。
「バルガス、イリーナ、ロミン、レジス、そして俺の五人はかつて英雄だとか言われてたよな?」
「ああ、先代の王からこの国を魔獣の大群から守った事でその名を貰った」
「そうだ、それにより俺達は有名になった、いや、なり過ぎたんだ」
「なり過ぎた?」
「ああ、英雄になった俺達には周りからの無自覚のプレッシャーがあった、英雄の子ならきっと凄い才能を持つに違いないと確信もないのに無自覚に期待だけ大きくしてな、バルガス、イリーナ、お前達だって身に覚えがあるはずだ、英雄二人の子供ならさぞかし期待も大きかったはずだ」
「それは、確かにそう言った声を多く聞きました、ですが、それで彼を犠牲にして良い理由にはなりません」
「そんな綺麗事など、あいつらには何も関係ない」
「お前まだ」
「ロミン、もういい、これ以上話しても無駄だ」
ロミンの言葉をバルガスが制す。
「ライ、私達はロイ君を止めるために行く」
バルガスは部屋を出て行く、イリーナとレジスも続いて出て行くがロミンは出て行く前にもう一度ライに振り向く。
「見損なったぞライ、昔のアンタの方がまだ良かったよ」
そう言い残し部屋を出て行くのだった。
出て行く時扉の前にはエスリー、ルシウス、オストの三人が立っていた。
おそらく話を聞いていたのかもしれないがバルガス達は何も声を掛けずにそのまま屋敷を後にした。
「なあ、姉貴、兄貴」
バルガス達がいなくなってしばらくしてオストが口を開く。
「俺ずっと疑問に思ってたんだ、何であんな奴をこの家に入れたんだって、ここは俺達の家だったから今更関係ない奴が入って来るなって思ってそれで俺はあいつをいじめたけど、まさかあいつを引き取った理由があんな理由だったなんてどう考えたって完全に悪いのは俺達で、あいつは完全に被害者じゃねえかよ」
「わかっている、俺だってお前と同じ気持ちだった、よそ者のあいつがいるのが嫌だった、だからあいつ自身が自分から出て行くようにと、そんな事できないってわかってるのにな、平民のあいつが貴族の命令に逆らえるわけないってわかってた事なのにな、俺達はあいつに許されない事をしてしまった、そんな事に今更気づく自分にも腹が立つ」
「私もお前達と同じだった、父上が何故あいつを引き取ったのかそれがわからなかった、その理由がそんなくだらない理由だったとはな、私達はもう許されないのはわかっているがそれ以上に、私達は父上の期待に応えられずに見限られていたんだな」
自分達に才能がないそう言われた事が何よりもエスリー達にとってはショックだった。
それがわかった瞬間エスリー達は涙を流していた。
「フェイリーチェ、私の質問に答えるんだ、お前はロイ君に対して酷い態度を取っていたんだな」
「・・・・・・」
バルガスとイリーナは一旦家に帰り娘のフェイリーチェにロイに対しての仕打ちについて問いただす。
「サテナ、娘の侍女に過ぎない身でありながらロイ君に無礼な態度を取ってたのはどうしてですか? あなたの両親はそのように教えたのですか?」
「も、申し訳ありません」
イリーナに言われたサテナは何も反論せずただ謝罪の言葉を言う事しかできなかった。
「父上、母上、私には才能がなかったのですか? 剣の才能も魔法の才能も」
「私はそんな事を聞いているのではない、お前がロイ君への態度が本当かどうかを聞いているんだ」
「大事な事なんです!! 教えてください!!」
フェイリーチェは必死に問い掛ける。
嘘であってほしいとそんな事はないと。
「・・・・・・お前には私の剣の才能も妻の魔法の才能も全くない、幼い頃から見ていてすぐに気づいた」
「!!」
バルガスの言葉を聞き、フェイリーチェの中で何かが崩れ去っていく。
「お前は小さい頃から私達のようになると言っていたからどうしても現実を教える事を拒んでしまった、これはお前のせいではない、あの時ハッキリと言わなかった私の責任だ、だがお前の反応でわかった、ロイ君に酷い態度を取っていたのは本当だったんだな、お前をちゃんと見てやれなかった責任だな」
バルガスは立ち上がる。
「すまないが、今お前にかまっている暇はないんだ、これから彼を止めなければならない」
「ええ、サテナ、娘をお願いしますね」
二人はそう言って屋敷を出て行き国王のいる城へと向かうのだった。
「あなた」
「わかっている、残酷な事をしたとな、だが今は娘にかまっている場合ではないんだ」
「わかっています、ですが勝てると思いますか?」
「いや、まともに戦っても勝てるイメージが浮かばない」
「そうですか、では、もしもの時はアレを使います」
「そうならないようにしないとな」
バルガス達は急ぎ王城を目指すのだった。
一方その頃王城では。
「さて、そろそろ行くか」
王城の前にロイの姿があった。
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同時に投稿している作品「魔王様、今日も人間界で色々頑張ります」もよろしくお願いします。




