有り得ない事が起きれば有り得ない結果が現実となる
「もういない?」
「ああ、お前等が言う、ロイ・ベルファストはもういない」
「何を言っているんだ、なら君は誰なんだ?」
バルガスがロイに問う。
「ああ、良いぜ説明してやるよ」
ロイは説明をする。
「まず事の始まりは親父殿がこいつを追放した所からだな」
「ライの奴、自分の息子を追放したのか?」
「ああ、それでだ、ロイ・ベルファストは自分が育った孤児院に帰ろうとした途中で親父殿が雇った連中に襲われ命を落とすほどの重傷を負ったのさ」
「そんな、自分の子供なのに」
「あのバカ、何考えてやがる」
ライの行いにイリーナとロミンは嫌悪感を示す。
「でだ、死を目前にしたロイ・ベルファストは意識を失う直前に自分がこんな死に方をする事への絶望、そしてこんな生涯を歩ませたこの世界への怨み、そして最後に強く望んだのは、全てを壊す事」
「全てを壊す?」
「ああ、そしてここで有り得ない事態が起こったんだ、ロイ・ベルファストが最後に抱えた強い思いに大量の絶望と怨みが反応しロイ・ベルファストの中で混ざり合い、さらにそこにロイ・ベルファストの魂が混ざった事でロイ・ベルファストの意識は消滅した」
「何!?」
ロイの説明にバルガス達は理解が追い付かない。
「意識が消滅した事でロイ・ベルファストの身体の中にある絶望と怨みそしてそれらを取り込んだ空となった魂に新たな自我が芽生えた」
「新たな自我、まさか」
「そうそれがこの俺だ」
「じゃあ、ロイ君は」
「意識が消滅したんだから死んだって事さ、だからお前等が言うロイ・ベルファストは死んだ、俺と言う存在を生み出してな」
バルガス達の疑問にロイはそう答える。
「バカな、別の人格? そんなの聞いた事もないですよ、そもそも話を聞いても信じられませんね」
「だが現に目の前にいるんだ、これは紛れもない現実だ」
レジスの言葉にロイは笑みを浮かべて答える。
「そもそもおかしいと思わないのか? お前等が聞いたロイ・ベルファストは大人しい性格だったんだろ? そんな奴がいくら我慢の限界を超えたからってここに倒れている連中に何の躊躇もなく攻撃できるか? 周りの建物を簡単に破壊できるか? できるわけねえだろ、元から優しかった奴がここまで変わるなんてそれこそ元の人格が全く別人にでもならない限りな」
「それがあなただと言うのですか?」
「そうだぜ、元婚約者殿の母上殿、ロイ・ベルファストは俺と言うバケモノを生み出して死んだんだよ、ここにいる俺はロイ・ベルファストの身体と記憶を受け継いだバケモノとでも言っておこうか」
「アンタがロイ・ベルファストじゃない事はわかったがそれだとアンタのその強さはどうやって手に入れたんだ? 身体と記憶を受け継いだのならその強さも受け継いだ事になる、だが聞いた話ではアンタはそんなに強くないと聞いた」
「ああ、それなら簡単だぞ、さっきも言ったが俺はロイ・ベルファストの絶望と怨みと魂が混ざって自我が生まれた存在だ、その絶望と怨みが俺の力となったのさ、俺のこの強さは、ロイ・ベルファストの抱いた絶望と怨みの象徴だ」
ロミンの問いに答えたロイの身体からは黒いオーラのようなものが溢れ出ていた。
「ついでに答えてやるが何故俺が復讐すべき相手に復讐したのに今もこうして暴れているか、それは、ロイ・ベルファストが全て壊す事を望んだからだ、俺はその望みを叶えるために動いているのさ」
「望みを叶える?」
「ああ、俺はこいつが大きな絶望と怨みを抱いてくれたから生まれたんだ、いわば俺にとっては親のようなものだ、なら親を虐げた国に復讐して壊すのは子供として当然の行為だと思わないか? だから壊すんだよ、この国をな」
笑みを浮かべて言うロイにバルガス達は戦闘態勢に入る。
「お、やるか?」
「当然だ、君がこの国を滅ぼすなら我々は止めなければならない」
「くくく、良いぜ、だが今日はもう帰るわ、次に会った時に俺を倒せる方法をせいぜい考えておく事だな」
ロイはそう言って魔力を地面に打ち煙を起こす。
そして煙が晴れた時にはもうロイの姿はそこにはなかった、
「逃げたのでしょうか?」
「いや、あれはいつでも我々を倒せる余裕からだ、我々に時間を与えるほどにな」
「なめやがって、だが確かにその通りだな、あいつを見た時私達全員で戦っても勝てるイメージが浮かばなかった」
「それほど彼が我々を圧倒する力の持ち主と言う事ですね」
「ああ、彼を止めるのもそうだがその前に聞かなければならない」
「そうですね、私も同じ事を思っていました」
「だな、あのバカを問い質さないとな」
「そうですね、事の発端は彼がロイ君を引き取った事から始まったのですから」
バルガス達は倒れている軽傷の者達を治療してその者達に任せてその場を後にするのだった。
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