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金の瞳の勇者 ー勇者の呪い 連載版  作者: はるあき/東西
タキ
25/71

出生

割り込みです。

盛り込むつもりが出来ませんでした(泣)

25話憧れ は26話になります。

 タキはマーシャル侯爵家の次男として生まれた。その誕生は祝福されたものではなかった。


 タキの父であるヒューベットはマーシャル侯爵家の入婿であった。武人の家であるマーシャル家には一人娘のアリーしかおらず、分家の中から婿を取ることになった。その中で伯爵家の次男であり、騎士として名を上げだしたヒューベットがアリーによって選ばれた。二人の間には武人の家に相応しい後継ぎが生まれると期待されてのことだった。だが、生まれたのは男児であったが病弱であった。その上、酷い難産であったためアリーは第二子は望んではいけないと医師から宣告された。健康な子が生まれなかった不満はヒューベットに集中した。本家の一人娘であるアリーに問題があったとは誰も言えず、ヒューベットが婿でなければとマーシャル家に繋がる者たちは影で囁きあっていた。

 それでも後継ぎは生まれているのだからと皆が受け入れた頃、タキが産声をあげた。


 タキの母ナタリはワマーシル公爵家の庶子だった。第一騎士団の騎士であった公爵令息に懸想していた子爵令嬢から生まれた。子爵令嬢は騎士団の飲み会で薬を混ぜた酒を公爵令息に飲ませ、個室に連れ込みナタリを授かった。子爵令嬢は直ぐ様修道院に送られ、そこで女児(ナタリ)を生んだ。女児であったため政略に使えると公爵家が引き取ったが、扱いは悪くはなかったが良くもなかった。


 ヒューベットとナタリが会ったのはワマーシル公爵家の夜会であった。ナタリが社交界に初めてデビューした日でもあった。

 居心地の悪い家にいる者同士の傷の舐め合いだったのかもしれない。二人は瞬く間に親密となりナタリは身籠った。


 庶子とはいえ格上の公爵令嬢ナタリをマーシャル家は引き取るしかなかった。生まれた赤子が異母兄と同じ病弱であったのなら問題は小さかったのかもしれない。いや、元気でも女児なら良かったのだろう。しかし、元気な産声をあげて生まれたのは男児(タキ)で健康そのものだった。


 マーシャル家でそのタキの扱いは微妙だった。ヒューベットの生家には先々代マーシャル侯爵の妹が嫁いでおり、タキを後継ぎとするには血が薄すぎることもなかった。それに赤子の母ナタリの父はワマーシル公爵を継いでおり、その上、国の騎士としての最高位である騎士団長となっていた。後ろ楯としても十分であった。

 マーシャル侯爵はアリーの息子、病弱な長男を後継ぎ、次男タキをスペアとすることを決めたが、病に寝込むことなくスクスク育つタキを後継ぎにと推す声も消えることはなかった。


 入婿ヒューベットの裏切りと息子とは違う健康そうな赤子(タキ)を見たアリーは精神を病んでいった。タキが二歳になった時、婚姻の時にヒューベットから贈られた髪飾りで自ら喉を突きその命を絶った。体面のため、アリーの死は病死とされた。


 アリーの死後、正式にヒューベットの妻となったナタリも心労のためか体調を崩すようになった。昔からマーシャルの屋敷で働く者たちは仕事を疎かにすることは無かったがナタリには冷たかった。


 ナタリはタキが生まれてから愛しい息子を抱き締めてよく呟いていた。


「あなたは悪くない、あなたは悪くないの。お父様の言い付けを守れば、守っていればいいの」


 縋るような声で呟かれる言葉は自分にも言い聞かせているようだった。


 幼いタキも屋敷の微妙な空気を感じとっていた。母親がいつも寂しそうにしていることも。

 ある日、乳母が勇者の話をタキにした。

 勇者はこの世界で一番強い騎士であり、魔王からこの世界を救う救世主であり、この()を幸せにする者であった。


「魔王が復活しています。勇者様と聖女様がこの世界を救い、平和にしてくれますからね」


 乳母の言葉に幼いタキは決めた。


「ぼく、ゆうしゃ、に、なる」

 

 ゆうしゃになって、おかあさまに、わらって、もらう。やしきの、ひとたち、みとめて、もらう。


 ヒューベットはその言葉を喜んだ。タキの騎士としての鍛練が始まった。タキを騎士にしたくなかったナタリはますます体調を崩すようになり静養のため王都を離れ戻ってくることはなかった。


「お父様の言うことをよく聞くのですよ。

 お父様の言うことを聞いていれば大丈夫です」


 そうタキに言い聞かせて。

お読みいただき、ありがとうございます。


誤字脱字報告、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ナリタとナタリが入り交じってますね [一言] タキ君に不遇ポイントを刷り込んでいくスタイル
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