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第32話 ~……願わくば若き戦士の魂(アニマ)に、永遠の安らぎを~

――僕はもう、誰も失いたくないんだッ……


 ノイシュは胸中が熱くなるのを感じつつ術句を結んだ。


 すぐさま発現させた術の輝きを刀身へと伝える。


  眉に力を込めて仲間と争う敵戦士達の方を見すえた――


「――衝撃剣【波斬】ッ」 


 不意にノイシュは前方からの大声を聞き、急いで視線を向けた。


すぐに視界に飛び込んできたのは、鈍色に輝く波動――


――なっ、なんて大きいんだ……ッ


 ノイシュは思わず眼を見開いた。


 衝撃波は巨樹程の大きさで、轟音を立てながら周囲の下草はおろか樹木まで次々と破砕していく。


 更に奥へと眼を凝らすと、そこには大剣を握った一人の戦士の姿が映る。


 甲冑に身を包んだ彼の名は、確かイデム――


――僕の術剣の威力は、どこまで対抗できるか……っ


 こちらへと迫る衝撃波の圧力に、ノイシュは胸の鼓動が跳ね上がるのを感じた――


――義妹(エルン)、信じてる……ッ


「――発現せよッ」


 そう声を上げると、ノイシュは剣先を下段に構えた。


 そして渾身の力で一気に振り上げる。


 直後、輝く刀身に斬り裂かれた大気から陽炎の様な揺らめきが生じていった――


「――衝撃剣【烈飆(れっそう)】ッ」


 突如として耳を聾する爆鳴が周囲へと響き、前方の地表が次々と激しく噴き上がっていった。


 放出した衝撃波が、大量の土砂を抉りながら敵戦士の放った煌めく波動へと迫っていく。


 すぐさま対峙した衝撃波同士は激突し、瞬く間に不可視の衝撃波が巨樹を両断、大きく断ち裂いていく。


 地表に巨大な爪痕を残しながら烈飆は勢いのまま敵戦士へと殺到する。


 イデムが衝撃波に呑み込まる瞬間、大きく両眼を見開く彼の姿があった。


 ノイシュは思わず眼を細めた――


――……願わくば若き戦士の(アニマ)に、永遠の安らぎを――


そう心中でノイシュが鎮魂の祈りを挙げた直後、大地が裂けていく轟音の中に砕ける金属音を聞いた。


 噴き上がっていく土砂の中に甲冑を着た若き戦士の姿が映る。その四肢はもう、どこにも見当たらない――


――さらに寛大な許しを給わば、麗しき淑女の(アニマ)にも静謐な安眠を――


 ノイシュは強く奥歯を噛んだ。


 自らが放った衝撃波の勢いは衰える事なく破壊を続けていき、後ろに控えていた攻撃術を放つアネットにも迫っていく――


「いっ、嫌ぁぁァぁ――ッ」


紫髪の修道士が粉塵の中へと消えていくものの、すぐに彼女の身体が錐揉みしながら空中へと跳ね上がっていくのをノイシュはとらえた。


 既にその首級は視認できず、物体と化した胴体が周囲に血飛沫を撒き散らかせながらやがて地面へと落下していった――


――ウォレンは……ッ


すぐさまノイシュは巨漢の仲間へと視線を向けた。


 彼が構える大盾にはその背丈の何倍もの氷柱がそびえているが、彼の背後でうずくまる様に座する義妹(エルン)やビューレ達は無事な様だった。


ウォレンもまたその場に座していく姿を視認しながら、ノイシュは深くうなだれた。今の僕には、こうするしか……ッ――


 ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手


 ウォレン・ガストフ……ヴァルテ小隊の隊員で、戦士。男性。あらゆる術を無効化する術耐性の持ち主


 ビューレ・ユンク……ヴァルテ小隊の隊員であり、術士。また修道士でもある。女性。回復術の使い手


 エルン・ルンハイト……ノイシュおよびミネアの義妹。術増幅という超高位秘術の使い手


 ミュンツ……レポグント王国のダルビット親衛隊の隊長


 アネット……レポグント王国のダルビット親衛隊の隊員


 イデム……レポグント王国のダルビット親衛隊の隊員


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