第7話 ~白み始めた空~
不意に身体が軽く、胸に心地よい感覚が湧き起こるとともに自我が目覚めた。視界の闇が少しずつ赤みを帯びていく。ノイシュが瞼を開けると、そこには馴染みのある天井の木目が広がっていた。
――朝か……
ノイシュが視線を窓辺に動かすと、開け放たれた鎧戸からは白み始めた空が顔をのぞかせており、そこで景色を眺める少女の姿に気づく。
戦士服を身にまとった彼女へと微風が吹き抜け、褐色の長い髪が仄かになびく。
ノイシュが声をかけようとした瞬間、遠くの稜線からまばゆい陽光が照らし出された。差し込む外光を受ける彼女のまなざしは、ただ遠くを見ていて――
「……おはよう、ミネア」
そう言ってノイシュが微笑むと、義妹が慌てて目元を拭った。そこで彼女が涙していた事に初めて気づく――
「おはよう、ノイシュ」
ミネアが振り向いて眼を細めた。
「……ごめんね、昨夜は――」
そこまで口に出し、一気に胸から熱い感情が湧き上がるのをノイシュは感じた。
「ううん」
ミネアは首を横に振った。
「……一緒に、行こう。バーヒャルトへ」
――ミネア……ッ
ノイシュは義妹を見つめ、そしてうなずいた。
「……分かった。一緒にいよう。これからも……」
そう告げるとミネアがゆっくりと微笑んでいく。
「ありがとう……朝食の支度、すぐできるから着替えてて」
義妹は踵を返し、部屋の奥へと姿を消していった。ノイシュは自分の胸を強くつかみ、そして眼をつむった。
――とうとう、僕達は戦場に行くんだな……
~登場人物~
ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手
ミネア・ルンハイト……ノイシュの義妹。女性。ヴァルテ小隊の術戦士で、霊力を自在に操る等の支援術の使い手