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ノイシュとミネアと魂(アニマ)~戦乱の中で育ち、戦いと愛に身を投じる少年少女達~   作者: たんとん
第Ⅰ部 従軍戦記編 第Ⅰ章 ―バーヒャルト近郊の戦い―
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第20話 ~胸が張り裂けそうな勝利~


「ミネア……ッ」


 ノイシュはそこで言葉を吐く自分に気づいた。


 視界の先では覚悟を決めた義妹(いもうと)の表情があった。


 彼女は強く眼を閉じると唇が開き、何かを口ずさむ。確か、大神官エスガルが詠唱(えいしょう)していた術句――


 次の瞬間、ミネアから(ほの)かな燐光(りんこう)が湧き上がった。


 不気味な暗紅(あんこう)の色合、その身体を(おお)うようにうごめく蛇の様な帯状の放出物、その顔や(はだ)幾何学(きかがく)模様が黒く染めていく――


「なっ、なにぃっ……」


 敵神官が大きく口を開き、初めて驚愕(きょうがく)する姿を見せた。義妹がそっと眼を開ける――


「どけっ、ミネア……ッ」


 突如(とつじょ)として大喝(だいかつ)が響き、ノイシュは顔を向けた。  


 視界の先ではいつの間にか巨躯(きょく)の戦士が現れ、ミネアを(かば)うべくその前に立ちはだかる。


 義妹が眼を大きく見開き、瞬く間に赤黒い光芒(こうぼう)が消失していく――


――あれは、ウォレン……ッ


 ウォレンが勢いよく大盾(おおたて)を地面に打ち()えた瞬間、荒れ狂う大神官のアニマ吸収術が衝突(しょうとつ)した――


「うっ、っおおぉおぉぉッ」


 次の瞬間、ウォレンの()たけびとともに耳を(ろう)する轟音(ごうおん)と振動が周囲に(ひび)(わた)る。


 ウォレンの巨盾(きょたて)激突(げきとつ)した敵神官の波動が赤黒い稲妻(いなずま)を空中に四散させていく。


 眼前の勇士がひたすら歯を食い(しば)り、巨盾を懸命に支え続け続けている――


「ノイシュ、今だッ」


 不意にウォレンが声を挙げながらこちらへと視線を向けてくる――


――そうだっ、今、僕がやるべき事……ッ


 ノイシュは唇を引き()め、眼を見開いた。

 

 そして(けん)(つか)(にぎ)り、小刻みに()れる(あし)に力を()めて数歩(わき)へと地を()み締める――


――父さん、ミネアッ、お願いだっ……あと一振りだけ、僕に力を……ッ


「うっ、ぁあぁっぁッ……」


 ノイシュは再び大きく剣を振り上げた。


 途端(とたん)に傷口から血が()(あふ)れ、臓物から激痛(げきつう)(おど)った。


 脱力感とともに全身が(ふる)えて(ねら)いが定まらない。が、それでも眼前だけは強く見据える――


「行ッけえェぇ――ッッ」


 ノイシュが一気に剣を振り下ろすと、瞬く間に自らの術が発現した。


 刀身から烈風(れっぷう)とともに衝撃波(しょうげきは)が広がっていき、ノイシュは思わず(こし)を落として片膝(かたひざ)をついた――


――く……ッ


それでも気を張りながらノイシュが前方を見据えると、不可視(ふかし)の波動が甲高(かんだか)い音を立て、空を切り()きながら敵神官へと殺到(さっとう)していくのが分かった。


 エスガルがこちらの攻撃(こうげき)に気づいた瞬間(しゅんかん)、彼の放つ赤黒い光芒が一気に主へと吸い込まれていく。


 すぐさま衝撃波を回避(かいひ)すべく大神官が身体を引いていく――


「があぁあぐっぁッッ……」


 次の瞬間、エスガルの右腕が不自然に歪曲(わいきょく)した。


 筋骨の破砕音(はさいおん)が生々しく響き、エスガルの下腕が錫杖(しゃくじょう)とともに空高く()い上がった――


~登場人物~


ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の(じゅつ)戦士で、剣技と術を組み合わせたじゅつけんの使い手


ミネア・ルンハイト……ノイシュの義妹いもうと。女性。ヴァルテ小隊の術戦士で、れい力を自在にあやつる等の支援|術の使い手


 ウォレン・ガストフ……ヴァルテ小隊の隊員で、戦士。男性。あらゆる術を無効化する術(たい)性の持ち主


 エスガル……レポグント王国の大神官。バーヒャルト救援(きゅうえん)部隊の指揮官。男性。術士。



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― 新着の感想 ―
[良い点] うわーっ!やっぱりウォレン頼りになるーっ!(* ゜Д゜) ノイシュ、やっちゃえーっ!٩(;゜Д゜)و
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