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ノイシュとミネアと魂(アニマ)~戦乱の中で育ち、戦いと愛に身を投じる少年少女達~   作者: たんとん
第Ⅰ部 従軍戦記編 第Ⅰ章 ―バーヒャルト近郊の戦い―
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第16話 ~劣勢~


「ノイシュッ、()けてッ」 


 不意にミネアの声が耳朶(じだ)を打ち、ノイシュが急いで顔を上げると右前方から陽炎(かげろう)の様に揺らいだ大気が視界に入った。


 甲高(かんだか)い音を立てて下草を()ぎ払い、灌木(かんぼく)を折りながら一気に距離を縮めてくる――


――敵の衝撃剣(しょうげきけん)……ッ


 ()動が強く脈打ち、慌ててノイシュは全身で(わき)へと飛びすさる。


 そのまま身体を激しく地に打ちすえた直後、不可視(ふかし)の波動が激しい砂利(じゃり)音とともに耳元を擦過(さっか)していくのが分かる。


 ノイシュは背筋に冷たいものを感じながら去っていく攻撃(こうげき)を見送った。まともに直撃を受けたらきっと、全身の骨が粉砕(ふんさい)されていただろう――


「くっ……」


 素早く立ち上がるとノイシュは視線を奥へと向ける。


 そこには巨剣(きょけん)を持つ一体の骸戦士(むくろせんし)がいた。


 (すで)に相手は(くちびる)(なめ)らかに動かして詠唱(えいしょう)を始めている。


 こちらもすぐさま衝撃剣を発現させるべく術句を(つむ)ぐが、先に光芒(こうぼう)()かび上がらせたのは死霊兵(しりょうへい)の方だった――


――は、はやいっ……


 ノイシュは眼を見開いた。相手の方がより激しい燐光(りんこう)を身にまとっている。


 つまり敵兵の方が強い(れい)力という事だ。


 こちらの動揺(どうよう)を察してか、相手の死霊兵が唇を吊上(つりあ)げて笑うのが分かった。


 そのまま対峙(たいじ)した骸戦士が巨重剣(きょじゅうけん)を上段へと()りかざしていく――


――くっ……


 ようやく術句(じゅつく)を結ぶと、ノイシュは大剣を(わき)へと引き(しぼ)る。


 (すき)のない相手の動きにノイシュは眼を細めた。もう攻撃するほか無い。


 たとえ()ち合いではこちらが負けると分かっていても――


 次の瞬間、後方から何かの音が近づいてくるのが分かった。


 直後に青い波動が脇をすり抜けていく。


 思わず顔を向けると、視線の先では光芒に包まれた義妹(いもうと)が手をかざしていた――


「ノイシュッ、今のうちに骸戦士を……っ」


 ノイシュが再び視線を死霊兵(しりょうへい)へと向けると、彼女の放った術が敵戦士に直撃していた。


 先程まで強く(きらめ)いていた相手の燐光(りんこう)が、その明度を一気に落としていく――


――そうか、ミネアが霊力(れいりょく)を吸収して……っ


「――発現せよっ」


 ノイシュは光芒が刀身へと伝わっていくのを横目に見ながら、一気に大剣を大きくぎ払った――


「――衝撃剣っ、行ッけえぇえぇぇ――ッ」


 剣を振り切った瞬間、光芒が剣から()脱した。


 直後に風が巻き起こり衝撃波が発生する。


 陽炎(かげろう)の様にゆらめく破壊術(はかいじゅつ)が高速音を立てて死霊兵へと接近していく。対峙する敵戦士は完全に霊力を消失させていた――


 次の瞬間、放った衝撃波が骸戦士の頭部を捕らえるのをノイシュは視認した。


 太い首(すじ)が不自然に(ねじ)れ、そのまま肢体(したい)から首級を裂き切っていく。

 

 残った(どう)体は首元から多量の血が()き上げつつ、数歩たたらを()んで(くず)れた――


――残る死霊兵は、あと一人……っ


「ノイシュ……ッ」


 不意に後方から少女の声が耳に届き、ノイシュは振り向くと眼を見開いた――



~登場人物~


ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の(じゅつ)戦士で、剣技と術を組み合わせたじゅつけんの使い手


ミネア・ルンハイト……ノイシュの義妹いもうと。女性。ヴァルテ小隊の術戦士で、れい力を自在にあやつる等の支援術の使い手


マクミル・イゲル……ヴァルテ小隊の隊長。男性。ヴァル小隊の術戦士で、増強術という支援術の使い手


 エスガル……レポグント王国の大神官。バーヒャルト救援(きゅうえん)部隊の指揮官。男性。術士。





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