第6話 ~ごめんね……君の本当の想いが、今になって分かるなんてっ……~
――……もう一人の義妹を、助けるために……ッ――
ゆっくりとノイシュは周囲に視線を巡らした。
そこには地に倒れ伏したマクミルや、傷をかばってうずくまっているノヴァの姿もあった――
――仲間を、救うためには……っ
「――死ぬのはっ、貴様の方だ……っ、」
不意に少女の無慈悲な声が聞こえ、ノイシュはつられる様に振り向いた。
すぐ眼前で暗紅の悪魔が左手をかざしてくる――
――今しかないんだ……ッ
ノイシュは瞼に力を込めた。
強く奥歯を噛み締め、湧き上がる感情を全て無理に追いやる――
――僕にしかっ、できないんだ……っ
視線を下にやると、片手剣がすぐ傍らに転がっている。
とっさに腰を屈めて右腕を伸ばした途端、肩口や腹部から劇烈な痛覚が湧き上がってきた。
もうお前は動くなと告げてくる様に――
――……仲間のためッ、義妹のためッ、喰われた数多の魂達のために……ッ――
ノイシュは強く両眼を閉じて激痛に耐えると、そのまま片手剣を拾う――
「――今度こそっ、灼き尽してやる……ッ」
冷酷な少女の声が耳に届き、ノイシュは視線を向けた。
視界に映るのはその右手を暗紅の輝きで包んでいく、少女の姿――
――暗紅の少女……さよなら……ッ
ノイシュは短めの片手剣を水平に構えた。
そのまま眼前の義妹へと剣先を向けていく――
――ミネア……ッ
ノイシュは両眼を細めた。
彼女の心臓に狙いを定める――
『――はやくっ……ノイシュッ――』
義妹の悲痛な声を聞き、ノイシュはかぶりを振った――
――やッ、やらなきゃっ、僕が……ッ
握った剣の柄が自然に震え出し、金属音を立てる。
脳裏にかつて義妹と過ごした情景が浮かんできた――
――学院の卒業式で、おめでとう、と声をかけてきた時の義妹の微かな笑み――
――久し振りに帰郷した日、思い出を語りながら呆れた表情を浮かべる義妹の姿――
――激戦の中、大神官エスガルにとどめを刺せず、涙する義妹の姿――
――ミネアッ、ごめんね……君の本当の想いが、今になって分かるなんてっ……――
ノイシュは口許を歪めた。勢いよく胸中から義妹への想いが湧き上がってくる。
自然に瞳から涙が溢れてきた。
下顎が痺れ、震え出す。鼻腔からもだらしない液が溢れでた――
――やっぱり、できないよっ……とても……ッ
「――死ねっ、ノイシュッ」
無慈悲な声が耳朶を打ち、ノイシュは視線を向けた。
ぼやけた視界の中で猛炎の塊に気づく。それがさらに膨張していく――
~登場人物~
ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手
ミネア・ルンハイト……ノイシュの義妹かつエルンの義姉。魂吸収術という超高位秘術の使い手。通称『暗紅の悪魔』




