第5話 ~ノイシュ……地面に落ちているその剣で、私にとどめを――~
再び眼前の少女が冷然な声音を吐き、その頭を抱えてうなだれる。
きっと義妹の身体の中で、二つの魂がせめぎ合っていて――
「――ミネア、君の魂は消えていなかったんだね……っ」
とっさにそう声をかけると、ゆっくりと義妹がこちらに顔を向ける――
『――うん……でもね……ずっとこうしては、いられなくて――』
「――止めろッ、くそっ、お前の魂など、またすぐに沈めてやる……ッ」
眼前で義妹が交互に別の声音を吐いていく――
『――ごめんね……私、そのうち……負けてしまう――』
義妹の言葉を聞き、ノイシュは静かに唇を噛んだ。
彼女がじきに消えてしまうというに、僕は何もできないのか……っ――
『この意識を保てるのは……今だけ……だから――』
そう言って、義妹が片頬で優しく微笑んだ――
『――だからノイシュ……地面に落ちているその剣で、私にとどめを――』
義妹の言葉を聞き、ノイシュは両眼を見開いた。
無意識に鼓動が強く脈打つ。
自然と唇がわなないた――
「そんなっ……この手で義妹を殺めるなんてッ……」
とっさにそう告げると、ノイシュは自らの胸ぐらを強く握りしめた。
眼前の少女――その暗紅の瞳もまた、大きく見開いていく――
「――なっ、こ、こいつッ、何てことを……っ」
『――お願いっ、ノイシュ……ッ』
そう訴える翠眼の瞳から、新たな涙が溢れていく――
『私が喰らったこの魂達を、解放してあげて……っ』
――ミネアが喰らった魂達……ッ
静かにノイシュは眼を細めた。
確かに義妹の中には、あまりに多くの魂が囚われている。
それらは間違いなく解放され、救われるべきだ。
ケアドやヨハネス、そして義妹の両親の魂だって――
――エルン……ッ
とっさにノイシュは顔を上げ、義妹へと視線を巡らした。
視界に映ったのは、ウォレンの腕の中で意識を失っている義妹の姿――
――……もう一人の義妹を、助けるために……ッ――
~登場人物~
ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手
ミネア・ルンハイト……ノイシュの義妹かつエルンの義姉。魂吸収術という超高位秘術の使い手。通称『暗紅の悪魔』




