第4話 ~ミネア、君の魂(アニマ)は消えていなかったんだね……っ~
――そこで鞘鳴りが耳に届き、次いでノイシュは右肩で疼痛を感じた。
そっと視線を向けると、そこに片手剣が突き立てられている――
――グッ、く……っ
無意識にノイシュは口許を吊り上げた。
思い出したかの様に、新たな傷口から血が溢れていく――
「――くそっ、離せッ、死ね……っ」
暗紅の少女が呪詛の言葉を吐きながら、こちらの右腕に何度も剣を突き立ててくる。
自らの腕から力が抜けていき、彼女の身体を離してしまった。
すぐさま彼女が立ち上がっていく。
腕に残った彼女の体温は、すぐに冷えていった――
――ミネア……いつか君が、正気に戻ったら――
不意に瞼が熱くなり、ノイシュは自分の視界が滲むのに気づいた――
――僕がいなくとも、どうか……幸せになって欲しい……――
「――なっ、なんだ、これはっ」
突如として頭上から困惑した少女の声をノイシュは聞いた――
「――なっ、なぜっ、なぜ私が……っ」
そう告げる彼女の声にノイシュは眼を凝らすが、滲んだ視界では眼前の光景をうまく視認できない――
「――なぜ、私が涙など……うっ、うあアアァッ」
次の瞬間、暗紅の少女の叫び声とともに片手剣の落ちる音をノイシュは聞いた。
痛覚に構わず手負いの腕で涙を拭うと、鮮明になった視界を彼女に向ける。
そこには両手で顔を覆いながら苦悶する暗紅の少女がいた。
その頬には涙が伝い、指の隙間から覗く濡れた片方の瞳は――
――あっ、あれは……ッ
ノイシュは大きく両眼を見開き、懸命に上肢を起こす。
彼女の瞳の色は、暗紅では無い。
惹き込まれそうなほどに、清んだ翠――
「――眼ッ、眼がっ、私の眼がッ……」
――ミッ、ミネア……ッ
『――……ノイシュ』
優しく聞き馴染んだ声に、ノイシュは全身の肌が粟立つのを覚えた――
『――ノイシュ、ごめんね……』
「――ミネア……ッ」
思わず義妹の名前を呼んだ途端、再び自分の瞼が熱くなっていく。
懸命にノイシュはかぶりを振った。彼女の姿が再び滲んでしまわないように――
「――くっ、くそっ、この女が勝手に口を聞いて……っ」
再び眼前の少女が冷然な声音を吐き、その頭を抱えてうなだれる。
きっと義妹の身体の中で、二つの魂がせめぎ合っていて――
「――ミネア、君の魂は消えていなかったんだね……っ」
~登場人物~
ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手
ミネア・ルンハイト……ノイシュの義妹かつエルンの義姉。魂吸収術という超高位秘術の使い手。通称『暗紅の悪魔』




