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ノイシュとミネアと魂(アニマ)~戦乱の中で育ち、戦いと愛に身を投じる少年少女達~   作者: たんとん
第Ⅵ章 ――ミネア……ッ、君の魂(アニマ)は、消えていなかったんだね……っ――
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第2話 ~ミネ……ア……ッ~


――止めてくれっ、ダメだ……っ


 とっさにノイシュは唇を開いた。


「――ビューレッ、義妹エルンを頼むっ」


 そう告げるとノイシュは素早く立ち上がった。


「ノイシュ……ッ」


 困惑する彼女の声を聞きつつも、ノイシュは舞空する少女に視線を向け続ける。


「――僕があいつを喰い止めている間に、みんなを安全なところへ……ッ」


「そんなっ、ノイシュッ――」


 次の瞬間、ノイシュは土を躙って駆け出した。


 視界に映る悪魔の身体から、暗紅の輝きが湧き上がっていく――


――ダメだっ、二人とも僕の義妹(いもうと)なのに……ッ


 とっさにノイシュは腰元の片手剣を抜き、急いで術句を紡ぎ始めた。


 もう自分には、僅かな霊力しか残っていないだろう。


 でも、それでもやるしかない。


 その間にも悪魔の身体からは蛇の様にうねる帯状の煌きが発現していく――


――(アニマ)吸収術っ……あれを浴びたら、義妹(エルン)(アニマ)が……ッ


 はやる気持ちを抑えながら詠唱していくと、仄かな輝きが自分の身体から発せられていくのに気づく。


 急いでノイシュは剣を大きく振りかぶった。意識を集中させ、霊力を刀身へと伝えていく――


「――衝撃剣……っ」


 ノイシュは声を張り上げ、剣を一気に振り下ろした。


 直後に甲高い音が響き、衝撃波が暗紅の悪魔へと向かっていく――


「――ッ、何だ……っ」


 異変に気づいた暗紅の少女が振り返り、僅かな空気の揺らぎを視界にとらえる――


「これはっ、衝撃波……ッ」


 刹那の後、彼女は素早く身を翻した。暗紅の輝きを消失させながらも、衝撃波を躱していく――


「来いっ、僕はここにいるぞ……ッ」


 すかさずノイシュは声を張り上げ、剣を構える。視界の先では暗紅の悪魔が唇を鋭く吊り上げていった――


「バカめ、自ら死を望むとは」


 そう告げると暗紅の悪魔がこちらに掌を突き出してきた。


 瞬く間に紅い煌きが腕より発せられる――


「――さぁ、灼け死ぬがいい」


 刹那の後、暗紅の悪魔から大型獣の大きさはあろう火炎弾が放たれた。


 それが幾つもこちらに降り注いでくる――


――くっ、来る……ッ


 ノイシュは近接する火炎塊(かえんかい)の輝きをにらんだ。


 迫る炎魔(えんま)からは燃え猛る音が次々と耳朶を打つ――


――この敏捷性を増幅した動きで、猛炎(もうえん)をどこまで回避できるか……っ


「――ふふっ、甘いな」


 突如として頭上から嘲りを含んだ声が耳に届き、ノイシュは両眼を見開いた。


 次の刹那、視界の先で火炎塊が次々と破裂していく。


 膨大な量の炎が拡散し、周囲に広がっていく――


 思わずノイシュは両眼を閉じ、とっさに片手剣を前に構えた。


 しかし、とっさに反応できるのもここまでだった。


 瞬く間に降り頻る炎の雨が注いでくる――


「アァッ、アアッァあアァッ――ッ」


 耐えがたい熱と痛みが肌を灼き、ノイシュは思わず絶叫し続けた。


 真っ暗な視界の中、自分の皮膚や毛髪の焦げる臭いが鼻腔を刺激する。


 耳許で炎の爆ぜる音が鳴り止まず、余計に恐怖を煽り立ててくる。


 もう剣など投げ捨ててその場に倒れ伏すが、炎の雨は追撃の手を緩めようとしない――


「ウワアッアあアァッアァッ――ッ」


 こらえ切れない熱さと痛み、そして恐怖にノイシュはひたすら身悶えた。


 いつしか振り注ぐ炎の量が衰微しているものの、完全に降り止むまでとても恐怖が拭えない。


 やがて、地獄の様な炎雨の燃えかすが止んでいく――


――ミネア……ッ


「――どうだ、自分が焦げている気分は……っ」


  頭上からの勝ち誇った少女の声にノイシュは気づく。


 馴染みのある声音なのに、その口調はあまりに知っているものと違う。


 自らの肉が灼ける臭いを嗅ぎながら、ノイシュは静かに顔を上げた。


 視界に映ったのは暗紅の長い髪と瞳の少女――


――……ミッ……ネ……ア……


 とっさにノイシュは声を出そうとするが、喉奥からは濁った様な息だけが漏れ出てくる。


 胸を動かすだけで苦しい――


「――醜い姿だ……では、もっとそうしてやる」


頭上から冷然な声が降り注がれた次の瞬間、左肩に熱い痛覚が広がる――


「ぐあァぁあッ……」


 思わずノイシュは叫びながらも視線を向けると、そこには槍斧の刃が深々と突き刺さっていた。


 鎖帷子に鮮血の色が広がっていくのを視認する――


「今度は腹を裂いてやろう……っ」


 残忍な声をノイシュが聞いた直後、左肩から更なる痛みがはしった。


 同時に勢いよく身体を振り動かされる。目まぐるしく視界が変わり、黄昏の空と暗紅の少女が映されて静止した。


 眼前に少女を見据え、胸が大きく鼓動するのに気づく――


――ミネ……ア……ッ



~登場人物~


 ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手


 マクミル・イゲル……ヴァルテ小隊の隊長。男性。ヴァル小隊の術戦士で、増強術という支援術の使い手


 ウォレン・ガストフ……ヴァルテ小隊の隊員で、戦士。男性。あらゆる術を無効化する術耐性の持ち主


 ノヴァ・パーレム……ヴァルテ小隊の隊員で、術士。女性。様々な攻撃術の使い手


 ビューレ・ユンク……ヴァルテ小隊の隊員であり、術士。また修道士でもある。女性。回復術の使い手


 エルン・ルンハイト……ノイシュおよびミネアの義妹。術増幅という超高位秘術の使い手


 ミネア・ルンハイト……ノイシュの義妹かつエルンの義姉。魂吸収術という超高位秘術の使い手。通称『暗紅の悪魔』


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