表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノイシュとミネアと魂(アニマ)~戦乱の中で育ち、戦いと愛に身を投じる少年少女達~   作者: たんとん
第Ⅰ部 従軍戦記編 第Ⅴ章 ―死闘 かつて義妹だった悪魔―
103/104

第7話 ~自分の命に代えても守らなくちゃいけない人が、僕にはいるんだ~


「お前は邪魔だ、ここで死ね」


 暗紅の悪魔の唇が動き、術句を紡いでいく。


 彼女の身体から仄かに光りが溢れ出していくのが分かり、ノイシュは静かにうつむいた。


 胸の奥でガラスが突き刺さった様な痛みを覚える。


 それが鼓動を打つ度に疼いた――


――どうしても、僕達は戦わなくちゃいけないの……ミネアッ…… ――


「お義兄様……っ」


 後ろから聞き覚えのある声が耳に届き、ノイシュは振り返った。


 そこには長い銀髪を襟足から結わえた少女がたたずんでいる。


 その髪と同じ色彩の瞳が、真っ直ぐにこちらへと向けられていた――


――エルン……ッ


 ノイシュはそっと眼を細めた。


 そうだ、自分の命に代えても守らなくちゃいけない人が、僕にはいるんだ――


「――エルン、術増幅を……っ」


 静かにそう告げると、腰の後ろに差した鞘から大剣を抜刀していった。


 胸中には痛みとは別に、打ち震える感情が湧き上がってくる。


 瞼が熱くなり、不意に視界が滲んだ――


「はい……っ」


 ぼやけた視界の先で、義妹(エルン)の声が耳朶を打つ。


 袖で涙を拭い、ノイシュは再び彼女を見すえた。


 義妹(エルン)は両掌を組み、その場で屈んでいく。


 その両眼を強く閉じた途端、彼女の足許が輝き出していく。


 義妹(エルン)が超高位秘術を発現させたのだと分かる――


――ありがとう、エルン……ッ


 ノイシュは自らも術の詠唱を始めると、静かに頭上へと視線を向けた。


 そこにはかつての義妹(いもうと)が不敵な笑みを浮かべており、その身体から発する光の明度をさらに強めている――


――ミネア……ッ


 目の前で別の輝きに気づき、ノイシュは両眼を細めた。


 自らの身体もまた驚くべき強い光に包まれているのに気づく。

 

 その足許では幾何学模様が煌きながら浮かび上がっていた。


 間違いなく義妹(エルン)の術増幅によるものだろう――


――エルン、君を絶対に死なせたりしない……っ



~登場人物~


 ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手


 エルン・ルンハイト……ノイシュおよびミネアの義妹。術増幅という超高位秘術の使い手


 ミネア・ルンハイト……ノイシュの義妹かつエルンの義姉。魂吸収術という超高位秘術の使い手。通称『暗紅の悪魔』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
義妹と共に、元義妹に立ち向かわないといけないなんて……。 思わず心が折れてしまいそうな状況ですが、それでも立ち向かえるノイシュくんは本当に強い子ですね。 お兄ちゃん、頑張ってください……! 続きも楽…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ