第4話 猿の名は。
教師役を引き受けてくれたレイチェルの指導が良かったこともあって、家康はこの二か月たらずでこの世界で生きていく上での知識を身に着けることに成功した。
勿論世界の常識を二か月足らずで全て覚えることはできないが、これ以上ただ書庫に引き籠っていたら、今は家康を自由にしている王も気を変えるかもしれない。それに書物だけでは得られない知識というのも往々にして存在する。
そろそろ積極的に外へ出て、交流なりなんなりをするべき頃合いだ。
そして【1D10:9】
1.前任者の手記を発見
2.女騎士たちの訓練に参加してみる
3.王に呼び出しを受ける
4.家康「この世界って鉄砲はないのかのう」
5.前任者の手記を発見
6.女騎士たちの訓練に参加してみる
7.王に呼び出しを受ける
8.女騎士たちの訓練に参加してみる
9.オークが攻めてきました!
10.!1D2(1.クリティカル 2.ファンブル)
折角だし女騎士の訓練に参加してみよう、と家康は思った。
言うまでもないが下心が動機ではない。女騎士とは全員が『痕持ち』であり、その訓練の激しさも通常の兵士たちの受けるそれとは比べ物にならない。そして家康もこの世界に召喚される際に『痕持ち』になったので、参加するべきは女騎士の訓練のほうであろう。
女だらけに男一人というのは居心地が悪いが、止むを得ない。
「……しかし、今日はやけに城内が騒がしいのう」
取り合えずシルヴィアかレイチェルあたりに訓練に参加したい旨を伝えるべく、自室から出ると、廊下を慌ただしく人が飛び交っていた。
これはなにかあったか、と家康が感じ取った直後、
「家康様! 大事がありました!」
息を切らせ、顔面を蒼白にしたシルヴィアが駆けこんできた。
懐かしい、音を聞く。戦に怯える、女の呼吸音だ。自然、家康の気が高ぶっていく。
「戦か?」
「え、なんで分かったんですか……?」
「勘じゃ。それで分かってることを教えてくれい。敵はなんで、どれくらいで、どこにきた?」
「敵は……オークです、当たり前じゃないですか! 規模は【1D100:66】で、狙ってきた場所は【1D10:8】です!」
1.村
2.最前線にある都市
3.村
4.輸送部隊
5.村
6.最前線にある都市
7.輸送部隊
8.最前線にある都市
9.王都
10.王宮内(どういうことなの?)
「狙ってきたのはオークの支配領域の最前線にある城塞都市ハマザーニーで、兵力は6000以上らしいです!」
オークの腕力が人間の三倍であることを踏まえれば、大体2万の兵力で襲われたようなものだろう。
関ヶ原で自分が率いていた兵力の五分の一である。
「ハマザーニーか」
家康もこの世界の常識を一通り学ぶ中、ハマザーニー城塞都市の名前は何度も目にする機会があった。
オーク出現前は人間同士の戦で、出現後は人類の防衛線として、常に存在し続けていた場所である。
その耐久力は【1D10:10】
1.昔は難攻不落だったけど、度重なるオークの攻撃で城壁はボロボロ
2.防御力!1D100
3.昔は難攻不落だったけど、度重なるオークの攻撃で城壁はボロボロ
4.函谷関並みの要害
5.昔は難攻不落だったけど、度重なるオークの攻撃で城壁はボロボロ
6.防御力!1D100
7.防御力!1D100
8.防御力!1D100
9.函谷関並みの要害
10.【1D2:2】(1.クリティカル 2.ファンブル)
初ファンブルでござる【1D10:10】
1.もうボロボロで破棄予定だった(民間人の引っ越し? まだよ)
2.陥落した
3.陥落した
4.函谷関並みの要害だったけど、そこの守将がオーク側に調略された(ひぇ)
5.もうボロボロで破棄予定だった(民間人の引っ越し? まだよ)
6.もうボロボロで破棄予定だった(民間人の引っ越し? まだよ)
7.函谷関並みの要害だったけど、そこの守将がオーク側に調略された(ひぇ)
8.もうボロボロで破棄予定だった(民間人の引っ越し? まだよ)
9.函谷関並みの要害だったけど、そこの守将がオーク側に調略された(ひぇ)
10.【1D2:2】(1.クリティカル 2.ファンブル)
うわあああああああああああああああ(吐血)【1D3:2】
1.さっきの全部
2.さっきの全部
3.城塞が陥落させたオーク軍が王都に向かっている
「ハマザーニーは東西に山脈のある峡谷に建造された城塞都市で、これまでも幾度となくオークの侵攻を防いできた要害です。またそこを守る将もまた優秀で、女騎士も多く配備されています。万が一ということもないでしょう」
オークが攻めてきたという情報に顔面を蒼白させておきながら、まだ(戦争的な意味で)童貞であろうシルヴィアが、ギリギリで落ち着きを持っている理由が分かった。
例えオークが攻めてこようと絶対に陥落しない、という信頼がハマザーニー城塞にあるのだろう。
(逆に言えば、そこが陥落するようなことがあれば阿鼻叫喚じゃな)
家康は前の世界で超えられない存在としてあり続けた男を思い出す。
天下人・豊臣秀吉。自信に満ち溢れたあの男なら、そういう場所こそを陥落させようとするだろう。
あんな怪物がオークの中にいるとは思えないが、秀吉の次の天下人になった家康は、嫌な予感が拭えなかった。
「……援軍は出すのか?」
「はい、大丈夫だとは思いますが念のためそういう方針になりました。私も【1D4:2】
1.王族だから将という扱いだけど、もちろん実質的総大将は副将が務める
2.副将として参加
3.女騎士の一人として参加
4.どうせ大丈夫だろうからという奢りが初陣まだの王女を将軍に抜擢させた
「不肖この私も援軍の副将として出陣することになりました。私みたいな初陣もまだの未熟者は、一兵卒扱いでいいと父上に言ったのですが、王女の立場でそれは駄目と嗜められてしまいました……。特別扱いは嫌なのに」
「まあそれが血筋の責任ってもんじゃ」
ハマザーニー要塞は難攻不落。援軍などなくとも独力でオークの軍勢を追い返せるだろうから、援軍として派遣する部隊に、初陣がまだの王女で女騎士であるシルヴィアをつける。
別に悪いことではない。シルヴィアは兄である王太子になにかがあれば、次の王になるかもしれない人物。比較的安全な戦で経験を積ませようというのは普通の考えだ。
だが一方で家康の中の名前のない不安はどんどんと肥大化していった。
ちなみに援軍を率いる将のスペックはこんな感じだった。
性別【1D3:2】(3なら女騎士)
【統率】【1D100:64】
【武力】【1D100:66】
【政治】【1D100:67】
【魅力】【1D100:71】
シルヴィアによると援軍を率いる大将はメルヴィン・メルヴィルという名の【1D:100:27】才(最低保証25)の人物で、飛びぬけたところがないが苦手もない、あらゆる事をそつなくこなす人物だそうだ。
27という年齢で援軍の大将を任せられることから察せる通り貴族階級の出身者でメルヴィル伯爵家の【1D3:1】男坊である。
「……シルヴィア。この戦、わしも参加してもいいかのう?」
「え!? 家康様が出陣して下さるんですか!」
「おう。この世界の戦を肌で感じてみたい。一緒に王陛下に頼んではくれぬか?」
シルヴィアは申し訳なく思うくらい表情を輝かせると、家康と一緒に王を説得しに王宮の間へ向かった。
幸い王はあっさりと許可を出し、家康は王妃のお付きというふわふわとした立場のまま従軍することを許された。
この世界での家康にとっての初陣が始まろうとしていた。