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第15話  アルマゲドン(関ヶ原)

 徳川家康率いるミハイル王国軍とゴグリッブグ率いるオーク軍は、ミタクニ平原で相対した。

 徳川軍の手勢はおよそ二万に対して、オーク軍はオークが一万に人間が二万の混成軍である。オーク一人は人間の兵士三人分の戦力があるので、単純に比較すれば二万対五万の戦いである。

 戦力差はおよそ三倍。徳川軍が圧倒的に不利であった。


「偵察にあった通り、どうやらミハイル王国側は王都を捨てる算段らしい」


 完全に攻撃をかなぐり捨てて、防戦にのみ特化させた陣営をしく徳川勢を見ながらゴグリッブグは嘆息した。


「どうするゴグリッブグ?」


「もちろん逃がしゃしねえさ。ここを速攻で突破して、さっさと王都を落とす。それで王都で腹ごしらえして、直ぐに逃げた王を追うぞ」


 焦っているのはミハイル王国側だけではない。ゴグリッブグもである。

 今回のことはオーク王の意向を無視したゴグリッブグとその支持者たちによる完全な独断。ミハイル王国を滅ぼすことで、完全にオークと人間の戦いに決着をつけなければ、ゴグリッブグに待つのは処刑だけだ。


「お前にも大いに働いてもらうぞ、テオドリック?」


「分かっている。この嘘と談合に満ちたこの世界にうんざりしていたのは私も同じだ」


 たまに山を越えて人里を襲い、略奪の限りを尽くしていくオーク。そんなオークを追い払う王国軍。たまに城砦に押し寄せてくるオークに、オーク領へ出兵する王国軍。そして『死刑囚には埋葬すら許されない』という建前のもと、処刑されたはずの女死刑囚の行き着く先。

 城塞司令官として全ての茶番を知っているテオドリックにとって、この世の全てが下らないものだった。こんな茶番を続けている王国は勿論、オークにすら失望した。

 そこへ現れたのがゴグリッブグである。ゴグリッブグは当時のミハイル王国王とオーク王、そして秦檜が作り上げたこの茶番劇を壊そうとしていた。

 そこに爽快感と種族を超えた憧れを抱いたからこそ、テオドリックは人類を裏切りゴグリッブグに降ったのである。その後の人間の玉座だのなんだのは、後付の目的にすぎない。


「お前達! ミハイル王国の王は俺達の進軍に恐れを成して尻尾撒いて逃げた! あそこにいるのは王に切り捨てられた負け犬の尻尾だ! さっさと踏み潰して、逃げた犬の首をへし折ってやるぞ!!」


 ゴグリッブグの号令にオークたちが雄たけびをあげた。一方でテオドリックが率いてきた人間の兵士たちは、食いしばるように沈黙している。元気なのはオークと一緒になって雄たけびをあげているスカーレットくらいであった。

 だがその時だった。


「かかれ! 狙うはオークの将ゴグリッブグの首だ! オークを血祭りにあげろ!」


 茂みに隠れていた家康勢の軍団が飛び出してきた。ミハイル王国側の奇襲である。

 数はおよそ200そこそこ。本来であればその程度の奇襲など恐れるようなものではない。その200人が全員『女』でなければ、だが。


「こ、こいつら全員が女騎士だ!?」


 そう叫んだオークはそれが遺言となった。女騎士軍団の先頭を走る騎士団長アルベルタに切り伏せられたのだ。

 アルベルタは自身の身の丈の倍はある巨大剣を、バトンかなにかのように軽快に振り回しながら、次々にオークを殺戮していく。その姿はオークたちから『鬼』と恐れられたのも納得するほどのものだった。

 この奇襲で【1D10:10】




1.どうにか迎撃し捕らえることに成功

2.被害だけ出してまんまと逃げられた

3.アルベルタを討ち取る過程で【!1D100】×100が犠牲になった

4.1

5.3

6.1

7.3

8.被害だけ出してまんまと逃げられた

9.オーク側の将が!1D10人ほど犠牲に

10.【1D2:2】(1.クリティカル 2.ファンブル)




【1D10:7】

1.討ち取る1万の兵と!1D10人の将が犠牲になる

2.6

3.討ち取る1万の兵と!1D10人の将が犠牲になる

4.6

5.討ち取る1万の兵と!1D10人の将が犠牲になる

6.↑更に討ち取れず逃がす

7.テオドリックぅぅううううううううう!

8.スカーレットぉぉおおおおおおおお!

9.ラスボス退場

10.!1D2(1.クリティカル 2.ファンブル)




 僅か200の女騎士の奇襲に、きりきりまいになるオーク軍。

 だがこの不甲斐なさがアルベルタの超人的武勇のみが理由ではないことに、一番早く気づいたのはテオドリックだった。

 女騎士の軍団は的確にオークのみをターゲットにして殺している。テオドリックが率いてきた人間の軍団には、近寄ろうとさえしないし、向かってきた者も適当に倒すだけで済ましているのだ。


「ちっ! そういうことか! ゴグリッブグ! 私は兵たちに発破をかけてくる!」


「おう、頼む。まさかこういう離間の計とはな」


 自分達が襲われ殺されるでもすれば、人間の兵士もなんの疑問もなく、自分の命を守るという根源的理由で応戦したことだろう。けれど女騎士たちが自分達を襲ってこないことから、人間の兵たちは応戦を躊躇してしまっている。

 これではこの戦いが終わった後、オークたちは人間を役立たずと思うだろうし、最悪の場合は敵だと看做しかねない。彼らの戦後の待遇を守る為にも、彼らを戦いに駆り立てる必要がテオドリックにはあった。


「おいお前達! なにをぼさっとしているか! 我々はここに遊びに来たのではないぞ! 戦わなければ、お前達もお前達の家族も、これから捕虜になる人間たちと同じ家畜の人生だ! それが嫌ならば――――」


 それ以上テオドリックが言葉を続けることはなかった。

 なぜなら【1D3:1】



1.エヴェリナが背後からばっさり

2.アルベルタが突撃してきて討ち取る

3.流れ矢って恐い




 いつのまにかテオドリックの背後に忍び寄っていた女騎士――――出自から盗賊剣士などとも揶揄されるエヴェリナが、首を刎ねたからだ。

 兵士達を奮起させるため声を張り上げた表情のまま固まって、宙を舞うテオドリックの首。それを曲芸師のようにキャッチすると、高らかに首をとったことを主張することもなく、無言で走り去っていった。

 本当に一瞬の早業で、兵士はそれをぼんやりと見ていることしかできない。

 そして女騎士軍団がゴグリッブグの首を諦め撤退する頃には、オーク側におよそ【1D50:33】×100の犠牲が出ていた。




 家康は仰天していた。

 アルベルタの武勇と女騎士のみで構成した精鋭なら、成功する公算は高いと思っていた。しかしここまでの戦果をあげるのは嬉しい想定外である。


「ここは【1D10:4】」




1.これこのまま普通に戦っても勝てるんじゃね?(高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処)

2.初志貫徹、防衛に専念する

3.これこのまま普通に戦っても勝てるんじゃね?(高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処)

4.小早川秀秋展開

5.初志貫徹、防衛に専念する

6.これこのまま普通に戦っても勝てるんじゃね?(高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処)

7.初志貫徹、防衛に専念する

8.初志貫徹、防衛に専念する

9.わしは真田じゃ! 真田になるのじゃ! 狙うはゴグリッブグの首ただひとぉつ!!

10.!1D2(1.クリティカル 2.ファンブル)




 ミハイル王国はハマザーニー城塞都市の陥落により戦略的に詰んでいる。

 例え今ここでゴグリッブグ率いるオーク軍を打ち破って撃退ができたとしよう。だがハマザーニー城塞がオーク側のものとなった以上、オークは何度でも王都への攻撃を開始することができる。そうなればどちらにせよ王都は放棄せざるをえない。

 だからこそ宰相パトリックは早々にゴグリッブグとの決戦という選択肢を捨て、王都の放棄と副都市への避難を判断したのだ。

 この状況を逆転させ、オーク側に対して戦略的勝利を掴むたった一つの策。それは家康が嘗て秀吉に対して決定的な敗北を遂げた小牧・長久手の戦いの再現だ。

 小牧・長久手の戦いで家康は局地戦において大勝利を掴みながらも、秀吉は家康が大義名分として担いでいた織田信雄を攻めることで電撃和睦。大義名分を喪失した家康は、やがて秀吉に降ることとなったのである。

 家臣たちは戦には勝利したと家康を慰めたが、家康はとても勝ったなどと思えなかった。寧ろ数多くの敗戦の中で最も敗北感を感じた。所詮は織田信長の死に乗じて運よく成りあがっただけの男と思っていた秀吉が、自分より遥かに巨大な怪物であると自覚したのもその時である。

 その経験から家康は今回の作戦を描いた。

 即ち一万の精鋭と緊急徴用した民間人と罪人たち一万の合計二万で、捨身の殿軍をしているようにみせて時間を稼いでいるうちに、一万の精鋭部隊を迂回させ、背後のハマザーニー城塞都市を落とす。

 ハマザーニー城塞都市の民衆はオークに心服している者ばかりではなく、反抗的な者もいるはず。その者達と協力して内と外から攻めれば、一万ぽっちでも城を落とすことはできるかもしれない。

 そういう一縷の希望に縋った乾坤一擲、一発逆転の大博打であった。だが、


「家康様。これこのまま普通に戦っても勝てるんじゃないですか?」


「うむ。わしも今そう思った」


 アルベルタの超人的暴れっぷりにドン引きしながらエカチェリーナが進言する。


「だが勢いで描いた作戦を台無しにしてもいいものか」


「家康様。大事なのは目的地に辿り着くことです。どのような道を通るかは問題ではありません。時に考えるより勢い任せで動くべきかと」


「そうじゃな!」


 天下人に伸し上がった家康は、判断力も迅速だった。


「オーク側についた人間の軍に火矢を射かけい! ただし当てるな! 目の前に派手にぶちまけてやれぃ!」


 スカーレットとはエカチェリーナの策で『もしもオークが敗北するかもしれないと思えばこちら側につけ』と内通してある。

 本当はハマザーニー城塞都市の陥落によってスカーレットをこちらに寝返らせ、オーク軍に止めを刺すつもりであったのだが、こうなった以上は使えるものはなんでも使える。スカーレットが裏切らなければその時はその時だ。

 家康の号令で兵が火矢を人間軍の鼻先へ撃ち込む、果たしてスカーレットは、


「聞け! 皆の者! 私はオークに降伏するふりをして、オークと逆賊テオドリックを討つチャンスをずっと伺っていた! そのチャンスが今訪れたのだ!」


 惚れ惚れするほど見事に裏切った。

 どこぞの小早川秀秋のように優柔不断に迷うこともない、清々しいほどの裏切りっぷりであった。


「全軍反転! 我々の敵はオークだ! オークを討て!!」


「貴様ぁぁあああああああ! この恥知らずがぁぁあああああああああああ!!」


 ゴグリッブグの叫びに事情を知る全ての人間が同意し、相手がオークであることを忘れ同情してしまう。

 だが手は緩めない。いきなり二万の兵に裏切られたオーク側に、人間たちは果敢に飛び掛かっていく。

 戦力差は完全にひっくり返っていた。1万の精鋭と1万の寄せ集めと、1万の怪物と2万の精鋭による戦いは、5万人の人間で1万のオークを四方から襲う構図へと変わった。

 もはや陣形も糞もなかった。ただひたすら目の前のオークを屠っていく。

 そして日が暮れる頃――――1万のオークは全滅していた。


「こん……な……一日で……」


 首を刎ねられる直前、ゴグリッブグはそう無念そうに漏らした。




 一方ハマザーニー城塞要塞。

 こちらには一万の精鋭を率いて迂回してきたシルヴィアが、正に攻撃を仕掛けようとするところだった。


「今頃は家康様がゴグリッブグとの戦端を開いている頃ですね。一日でも早くハマザーニー城塞を落とさなければ」


 シルヴィアが決意を新たにしていると、伝令兵が飛び込んでくる。


「シルヴィア様! ご注進! ご注進! 一大事でございます!」


「っ! なにがあったのですか!? 家康様になにか……?」


「ミタクニ平原で徳川勢とオーク勢が激突! お味方大勝利! オークは全滅しました!!」


「!!!????」


 その後、混乱から立ち直ったシルヴィアはオーク全滅の情報を武器に、ハマザーニー城塞都市の内部の人間を説き伏せ、同じく一日で陥落させた。


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― 新着の感想 ―
[一言] ファンブルで生まれた大ピンチがファンブルで覆る。 なろうよ、コレがダイスだ!
[一言] もっと苦戦すると思ってたらテオドリックのファンブルであっさり終わってしまった… ダイスこわww
[一言] これは流石に草を禁じ得ないw あれだけオーク万歳してたスカーレットがここまで日和見主義のコウモリだったとは思わなかった
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