第13話 ラスト・サムライ
王からのお墨付きを得た家康は早速、ゴグリッブグ率いる軍勢を迎え撃つ準備を始めた。
時間は短いのにやることは多い。
まず家康と一緒に分の悪い賭けに付き合う将であったが、まずシルヴィアが強く自薦したことでこれに加わることとなった。
シルヴィアの参戦は兄である王太子は強硬に反対し、王であるレオナルドは【1D100:23】(100ほど強く反対)。
王太子は強硬に反対したが、レオナルドが頷いたことで無事シルヴィアも参加することになった。
ちなみにそろそろ決めておかないといけないシルヴィアのスペックは、
【統率】【1D100:63】
【武力】【1D100:89】×【1D5:3】(最低保証3)
【政治】【1D50:45+50】
【魅力】【1D50:14+50】
レイチェルという優秀な教育係に、幼い頃から鍛え上げられたこともあって目に見えて優秀だ。
特に政治的視野や戦略的視野は、狭路の戦いを通してずっと高まったように思える。今回の賭けにおいては貴重な戦力の一人だ。
他に同じく狭路の戦いで共に戦ったメルヴィンも快く立候補してくれて、メルヴィンが立候補すれば当然エヴェリナは渋々一緒についてきてくれる。
他に家康と共に殿軍を生き残った者たちは、ピエールを筆頭にして家康の旗本となることに決まった。
この異世界で一人の家臣もいなかった家康にとって、この世界初めての家臣である。
また嬉しい誤算としては騎士団長アルベルタが、副将として参加を表明してくれたことだ。
臨時とはいえ大将軍の位にいると副将になれないため、大将軍位を事前に返上した上での参加である。
その理由【1D10:3】
1.万が一の場合、家康に功績が集中しないようにするため(宰相の仕込み)
2.アルベルタ「家康殿のお言葉に感謝しました!」某ミッチー「騙されるな! そいつは狸だ!!」
3.万が一の場合、家康に功績が集中しないようにするため(宰相の仕込み)
4.自分も民を守るという使命感
5.アルベルタ「家康殿のお言葉に感謝しました!」某ミッチー「騙されるな! そいつは狸だ!!」
6.万が一の場合、家康に功績が集中しないようにするため(宰相の仕込み)
7.自分も民を守るという使命感
8.アルベルタ「家康殿のお言葉に感謝しました!」某ミッチー「騙されるな! そいつは狸だ!!」
9.惚れたぜ
10.!1D2(1.クリティカル 2.ファンブル)
「というわけで家康殿! このアルベルタ、大将軍臨時を返上し副将として加わらせてもらう! シルヴィア殿下は家康殿は異世界で大将軍だったというし、きっと強いのだろう! 期待しているぞ!」
家康に与えられた部屋に最低限のノックをしてから入るや否や、そんなことを言い出すアルベルタ。
突然のことに家康の臨時の秘書になったレイチェルは、被っていたニット帽がずり落ちていた。
「最強の女騎士と謳われるアルベルタ殿がお力を貸していただけるとは心強いが、なぜ大将軍の地位を返上してまで? そりゃ殿軍は大事なお役目じゃが、王陛下や避難する民を守るのも大事なお役目だと思うのじゃが」
「何を言う! 異世界の生まれである家康殿ばかりに任せきりでは最強の女騎士の名が霞んでしまうではないか! 家康殿と共に大いに戦い女騎士アルベルタここにありと示すべきだ、と宰相のパトリックが言っていたのだ!」
一気に話がきな臭くなってきた。
「つまり宰相殿の受け売りですか?」
「そうだ!」
「こう言ってはなんですが、よく素直に従いましたのう。この前の会議の様子からお二人は不仲だと思っておったのですが」
「ああ! あいつは性格はひねくれているし、一々言動が冷たいが間違ったことは言わないからな! あいつがそうするべきだと言ったのだから、たぶんそうなのだろう!」
「……貴女が臨時とはいえ大将軍を任せられてた理由が分かりましたわい」
パトリックの横やりは入れられたが、足を引っ張られたわけではない。
寧ろアルベルタという最強の騎士が加わったことで、少ない勝ち目がちょっとは大きくなった。
「さてと」
家康の行動【1D10:9】
1.パトリックに会いに行く
2.ゴグリッブグに内通の密書を送る(嘘)
3.囚人を兵として徴用
4.パトリックに会いに行く
5.ゴグリッブグに内通の密書を送る(嘘)
6.精鋭百人で奇襲だヒャッハー
7.囚人を兵として徴用
8.パトリックに会いに行く
9.全部を提案する軍師が生える
10.!1D2(1.クリティカル 2.ファンブル)
待望の軍師が生えた【1D10:4】
1.女でだから軍人になれない承認欲求の塊(国士無双枠)
2.汚職がバレて首になった人(陳平枠)
3.賢者と噂の人を三顧の礼で訊ねる(孔明枠)
4.上司と衝突して退職した元エリート(劉基枠)
5.上司と衝突して退職した元エリート(劉基枠)
6.汚職がバレて首になった人(陳平枠)
7.賢者と噂の人を三顧の礼で訊ねる(孔明枠)
8.女でだから軍人になれない承認欲求の塊(国士無双枠)
9.もう一人の異世界の英雄(ファ!?)
10.!1D2(1.クリティカル 2.ファンブル)
更にどういう経緯で家康のところにきたか【1D10:1】
1.レイチェルの推挙
2.国が滅亡の危機だし、見て見ぬふりはできずできることだけでもやろうと思って
3.国が滅亡の危機だし、見て見ぬふりはできずできることだけでもやろうと思って
4.シルヴィアの推挙
5.レイチェルの推挙
6.シルヴィアの推挙
7.国が滅亡の危機だし、見て見ぬふりはできずできることだけでもやろうと思って
8.国が滅亡の危機だし、見て見ぬふりはできずできることだけでもやろうと思って
9.家康の土下座
10.!1D2(1.クリティカル 2.ファンブル)
殿軍の司令官を任された家康は、休みなく働いていたが気力は充実していた。数々の戦国武将たちと天下を巡って争っていたあの頃を思い出すのである。
そして一先ずのこなすべき仕事を一段落させた家康は、シルヴィアの推挙で秘書となったレイチェルに向き直った。
「さてレイチェル、時間ができたぞ」
「ええ。それは良かったです。これで1%にも満たぬ勝算が10%になります」
そう言ってレイチェルはにっこりと微笑んだ。
「わしはその者に会うと約束したが、取り立てると決めたわけではないぞ」
「家康様が正しく懸命なご判断をされるなら、【1D2:2】(1.男 2.女)――――彼女を取り立てないはずがありません。彼女に会えばきっと家康様は私にとても感謝することでしょう。賭けてもいいです」
家康としては「本当にわしの貴重な時間を割く価値があるのか?」ともう一つ嫌味を言ってやろうと思っていたのだが、こうも自信満々に断言されてしまうと何も言えない。
レイチェルに渡された『エカチェリーナ』という女性のプロフィールに視線を落とす。
年齢は【1D40:11】(最低25歳)。元はこの国の最高学府を首席で卒業し、エリート街道を突き進んでいたが、上司と衝突して退職。今は実家で【1D100:83】(1ほど貧乏、100ほど良い暮らし)。
実家は貴族ではないが資産家であるため、それからは高等遊民として一日中読書などして過ごす日々を送っていたらしい。
「よかろう。では会いに行くとするか。急に訊ねても追い返されんだろうな。生憎とわしには三回も訊ねる余裕はないのでな」
「三回? ええ、大丈夫です。家康様の仕事ぶりからこの時間くらいに一段落するであろうと予想してましたので、事前にアポイントメントはとってあります」
「別にそのエカチェリーナが有能でなくとも、わしはお前に感謝しとるよ」
家康はレイチェルを連れて王宮を出た。
エカチェリーナの実家であるエミネスク家は、慌ただしい様子だった。
既に王都脱出作戦は始まっている。国王レオナルドは王都を脱出済みであるし、王太子アレクサンドルは脱出の総指揮をとっていた。エミネスク家もまた脱出の準備で大忙しというわけである。
それでも家康が来たことを知ると、エミネスク家の使用人は家康たちを家の中へ案内した。そして、
「初めまして家康様、エカチェリーナ・エミネスクです。この度はお忙しい中、私などの家にお越しいただきありがとうございます」
完璧な礼儀作法にのっとり、家康たちを出迎えた。
「あー、今日はだのう」
「家康様。お時間がないのでしょう。余計な前置きは結構です。どうか本題をお願いします」
無礼にすら受け取られかねない発言であったが、それが家康のためを思っての発言であることは分かったので不快感はなかった。
エカチェリーナの言う通り時間がないのでさっさと本題を切り出すことにする。
「レイチェルから話がいってると思うが、レイチェルからお前を軍師として雇えと推挙された」
「……過分を通り越して、無茶な評価です。私は確かに昔は官僚として王宮に勤めていましたが、軍師などやったことはありません」
「ですがエカチェリーナ。嘗て王宮に勤め始めた頃、言いがかりをつけてきた本職の軍人を言い負かしていたではありませんか?」
「本が好きで昔の戦争の記録などを読んでいただけです。酒場に行けば、政治についてにわか知識で語り合うよっぱらいが何人でも見つかるでしょう。私もそれと同じことですよ」
「お前が生兵法であるかどうかは、わしがこれから判断する」
ぴしゃりと言ってエカチェリーナとレイチェルの話を打ち切ると、懐から紙とペンを取り出した。
それをエカチェリーナの前に置く。
「わしの頭の中を当ててみよ。わしはどうやってオークに『勝つ』気でいる?」
エカチェリーナはペンをとると、すらすらと書き始めた。家康はエカチェリーナの書いた答えを確認すると、くしゃくしゃに丸めて呑み込んだ。
レイチェルが何事かと仰天していたが構わず続ける。
「次じゃ。それを成功するためにわしはどういう策をとるべきだと思う?」
「まずはその策が成功する前提条件が正しいのか確認するべきでしょう。宰相のパトリック閣下に確認に行かれてはどうですか?」
「……それもそうじゃな、ではそれをした上で策は?」
「ゴグリッブグに内通の密書を送り、騙し討ち敵兵を削る。次に騎士団長アルベルタ様率いる女騎士のみの精鋭100人で奇襲し敵兵を削る。そして囚人を免罪という飴と、死という脅しとで兵士として徴用する。敵を削り、味方を増やし戦力差を埋める。基本的なことです」
「基本的……基本的か……」
それが本当にこの世界にとっての基本的なこと、誰でも思いつく当たり前のことなのかは、隣にいるレイチェルの表情を見れば一目瞭然だ。
レイチェルの言葉は正しかった。家康は今、レイチェルに跪いて礼を言いたいほど彼女に感謝していた。
世界が広がっていく全能感。太公望を得た文王の気持ちを家康は完璧に理解する。
「エカチェリーナ。一番上以外、全部をやる。金も地位も領土も好きなだけじゃ。わしに軍師として仕えよ」
「は……? え、い、いや、そんなことを言われるのは光栄ですが……」
「光栄! 光栄と言ったな! 言質はとったぞ!」
「お待ちください! そういうことじゃなくて……」
直ぐにエカチェリーナの両親に許可をとる。娘の才能が腐っていくことを惜しんでいた両親は、喜んで娘を送り出した。