噂の話
「さとちゃん!」
「えっ…由莉かぁ、朝からどうした?」
今はもう8時過ぎなのだが未だに眠気が覚めずにいた、親友の由莉に後ろから話しかけられるまでは。
「なんか噂で聞いたんだけど、めちゃくちゃイケメンの1年がさとちゃんのこと探してるらしいよ?」
イケメンの1年…?誰だろう。
「一体誰なの?!」
「んー?知らない」
「えー、つまんない〜!」
「いや、だって知らないもん」
私にそんな少女漫画的展開があるはずない。
可愛い人だったらあるかもだけど。
あぁ、今自分で言って少し傷ついた。
その後の授業を終え、何事も無く家に帰宅した。
委員会の仕事をしたくなくて、仮病を装い帰ってきたので罪悪感が後から押し寄せてきた。
ダイニングテーブルの上のクッキーを食べると横に置き手紙があった。
親戚の集まりに行ってくるから6時頃帰るね。
母より
やけに家が静かだと思ったら出掛けてるのか。
まだ2時間あるし、勉強しよう。
そう思い、机に向かったがいつの間にか意識を手放していた。
目が覚めると時刻は6時を回っていて、窓の外は暗かった。
「お母さん…」
台所へ行くとお母さんがいた。
「あ、起きた?実はちょっと話があって…」
「あーごめん、ちょっと先に顔洗ってきていい?」
そう言うと「いいわよ」と言ったので洗面所へ行った。
洗面所は浴室と繋がっているのでふと、そちらを見ると誰かがシャワーを浴びていた。
私の家は所謂”シングルマザー”というもので、母ひとり子ひとりという家庭であった。
今、母は台所にいる。そこからここまではここを通るしかない。
ということは浴室にいるのは誰だ?
嫌な予感がして、台所に走った。
走った距離は近いのにとても息が切れた。
「おっ、お母さんっ」
お母さんはびっくりしながらも「大丈夫?」と言ってくれた。
「どうしたの?」
「あ、あのね。この家の浴室にっ、誰か知らない人がいるのっ」
「あ、それは…」
何かを察した様子だが、私には全く理解ができない。
「えっとね、実は里美に話さなくちゃいけないことが…」
それと同時に、
ガチャ
ドアが開いた。
すると、
「おばさん、お風呂貸してくれてありがと」
そう言いながら上半身裸で首からタオルを提げた男の人が出てきた。
しかもかなりイケメンの。
「え、」
「あ。」
それが、彼との”再会”だった。