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06.見習い冒険者、逆夜這いに辟易する SideB

私は風の精霊ミーナ。

昼間この辺りでは珍しく膨大な魔素のうねりを感じ、少し(こっそり)おすそ分けいただこうかと銀狼の泊り先に先回りして、ちょっとウトウトしていたところ、


「ちょいちょいちょい!あんた、いたいけな少女に何しとんねん!!」


いきなり人を、まあ人じゃないんだけど、窓からポイ捨てしたガキンチョに、私は思わず素で突っ込んだ。


「妖精、さん?」

「ちがーう、精霊!せ・い・れ・い!!」

「あんたねえ、精霊を窓からポイ捨てする人間なんてあたしゃ初めて見たよ。精霊だよ、精霊、その姿を見たものは必ず幸せになれるって言ううわさの・・・」

「あくまでうわさなんだろ?」

「そうそう、人間が勝手に作ったただのうわさ・・って言わすな!」

「だいたい、どうして私の事が見えるのよ!精霊は魔力を持つ人間と、その存在を認識した人間にしか見えないハズなんだけど?」

「オレに言われても知らんがな。で、その精霊さんがどうしてオレのベッドでよだれを垂らしながら寝てたんだ?」

「あんたが悪いのよ!あんまり来るのが遅いからついウトウトと・・・って、別にあんたを待っていたわけじゃないんだからね、私の目的はそこにいる銀狼の・・・わっ!ちょっと、ちょっと待って!」


銀狼の名前を出した瞬間、ガキンチョはなんとスライムからロングソードを取り出すと私に突き付けてきた。


「コロに危害を加えるのならオレは容赦しない。たとえどんなにカワイイ()にだって」

「か、カワイイって・・・」


(ガキンチョのくせに、わかっているじゃない・・・)


何より、仲間思いなところも気に入った。私はちょっぴりテレながらもゆっくりとベッドの上に着地した。


「とは言え、窓から放り出したのは悪かったな。オレはボーイ、見習い冒険者だ。」

「わかればいいのよ。こっちこそ勝手に人の部屋に入り込んで(枕をよだれで汚して)悪かったわ。私はミーナ。最後の『風の精霊』」




数分後、私とガキンチョ、もといボーイはベッドに仲良く腰かけてお茶をすすっていた。

私は自分の事情をボーイに簡単に説明する。もちろん、一番重要な部分は包み隠しながら・・・


「忠告したからね、これからあなたたちは魔力が尽きるまで一生誰かに狙われ続けることになる・・・」

「でも、えっ、それってミーナだって・・・」

「しっ!早速お出ましよ。寝たフリ寝たフリ!」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あたしはアンナ、田舎町のクソボロい宿屋で住み込みで働いている。

今日はすごい客がやって来た。なんとあの銀狼を連れている、しかもガキンチョ。

いつか大金を手に王都で華やかな生活を送ろうと思っていたあたしには、カモがネギしょってやってきたようにしか見えなかった。あのガキンチョを()って銀狼を売れば金貨100枚も夢じゃない。

あたしはガキンチョの泊まる部屋の水差しに大量の睡眠薬をぶち込んでその時を待った。




コツコツ

真夜中、あたしはガキンチョの部屋のドアをノックした。


「お客様、まだ起きていらっしゃいますか?」


ゆっくりとドアを開けると、そーっとガキンチョの部屋の中に入っていく。ピョンと寄ってきたスライムをシッシッと追い払う。


「寝ていらっしゃるようですね・・」


あたしは布団にくるまっているガキンチョに向け、両手でつかんだナイフを振り上げた、ハズだった。


「はい、そこまでー」

「な・・・」


寝ていると思っていたガキンチョはダミーだった。

ガキンチョはあたしの後ろから持っていたナイフを取り上げた。


「あんた、寝ていたんじゃ・・・えっ?」

「今夜のことは宿代とチャラってことでいいですよね。そっちだってこんなことで捕まりたくはないでしょ。」

「くっ!」


ガキンチョと言えど冒険者、あたしの襲撃は完全にバレていたようだ。

あたしは悔しさに部屋をダッと飛び出して行った。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



私はベル、ミカミの町で神父様と2人だけの小さな教会のシスターとして神に仕えている。

神父様が時々私の事をいやらしい目で見ているのは知っていた。でも今回の神父様の命令は私の理解を超えていた。


「そ、そんなふしだらなマネ、私には出来ません!」

「出来ないではない、やるんだ!あのガキを垂らしこむこと、これこそが神の御心である」


私は神父様に押し切られる形でボーイ君の部屋へと向かって行った。




「ボーイさん、入ってもよろしいでしょうか」

「どうぞ」


ボーイ君はいつもの礼拝の時と同様、穏やかな表情で私を部屋に招き入れてくれた。


「こんな夜分にすみません。実は先ほど神の啓示を受けまして、すぐにお知らせしたくてお邪魔した次第です」

「はぁ、神の啓示、ですか」


私は恥ずかしさをこらえ、ボーイ君の手を握り締めた!


「ちょっ、シスター、何するんですか!」

「神は言いました。銀狼は神の御使い、そして銀狼を使役する少年こそ神が現世に受肉する租となるべく存在である、と」

「それってどういう・・・」


私は握ったボーイ君の手を自分の胸に押し当てた。


「うゎ!」


ボーイ君はは思わず手を引っ込める。


「どうして逃げるのですか?神は私とボーイさんの子供として転生することをお望みです。そのためなら私の操をボーイさんに捧げましょう」

「ななな・・・何なんですか、どうしちゃったんですかシスター!?」


もはや自分でも何を言っているのかわからなかった。


「シスター、落ち着いてください。いいですか、操を捧げるってことはオレと〇〇ピーな事や✖✖ピーな事をやっちゃうってことなんですよ。ホントにいいんですかー?」

「えっ?」


ボーイ君の生々しい発言に私はハッと我に返った。


「私、そんなつもりじゃ・・・ど、どうして、ご、ごめんなさい!」


私はカッと真っ赤になって部屋を出て行った。そう、私は聖職者、今の行いはまさに神への冒涜でしかない。いくら神父様の命令とは言え、この罪なき少年に大きな十字架を背負わせてしまうところだった・・・ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



私はサラ、冒険者パーティー『地を駆ける白狼(ホワイトファング)』の弓使い。

今日は白狼どころか銀狼を目の当たりにしてテンションちょー高め。今のうちにボーイ君を正式にパーティーメンバーに引き入れちゃえば『地を駆ける白狼(ホワイトファング)』はC級昇格も夢じゃない!

と、言うわけでボーイ君の部屋に逆夜這いを敢行したんだけど、ちょうどトイレだったみたい。


(チャーンス!!)


私は生まれたまんまの姿になって、ボーイ君のベッドにもぐりこんだ。




待つこと数分、トイレにしては長かったけどようやくボーイ君が帰ってきた。


「どこ行ってたの?来ちゃった」


疲れた様子で毛布をめくったボーイ君は、セクシーポーズで手招きをする私を見て固まった。


(ふっ、ウブなネンネにはこう言うド直球(ストレート)が効果あるのよ)


ボカッ!!

勝利を確信した私の頭を誰かが思いっきり殴りつけてきた。


「痛ったーい!」

「痛ったーいじゃないわよ、このおバカ!」


そこにはおかんむりのジョディ姉さんが立っていた。


「ごめんね、ボーイ君、こんなおバカだけど許してやって、ねっ」

「は、はあ」

「あ~~ん」


私はジョディ姉さんに引きずられてボーイ君の部屋から退場していった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


?「どうやら主の貞操は守られたようね」

?「ご自身が大変にもかかわらずシスターをフォローするなんて、さすがボーイ様です。」


実はボーイはトイレに行くと言いながら神父のところへ忍び寄り、シスターベルには余計な手を出すなと釘を刺していたのだった。2人はそんなボーイの一部始終を見守っていた。


?「本当、アカネは主大好きっコだよね」

?「私は物心ついた時からずっとボーイ様をお慕いしています。そしてこれからも。シラヌイ姉さんもそうではないのですか」

?「私が言ってるのはそういう意味じゃないんだけどね」


2人は影。決して表舞台に出ることはない・・・。

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