表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/252

41.旅する冒険者、マッドサイエンティストを殴る 1

「オーク、ここに入ったよね?」

「はい」

「ってことは素晴らしき再生の会(リボーンズ)のアジトで間違いない筈だよね?」

「と、思うのですが」


逃げたオークを追跡すること3分、鬱蒼とした森の中、ではなく、普通の木立を抜けて街道沿いにその建物は普通に建っていた。頑丈そうな石造りの平屋建。門扉の脇には『社団法人 ヒムラー生体化学研究所』の看板が掲げられている。防護結界が張られている様子もない。余りに無防備かつストレート過ぎる佇まいに、オレ達はいささか毒気を抜かれてしまった。


「どうするニャ?リーダーに任せるニャ」

「うーん」


建物のドアが開き、メガネをかけた白衣の男が現れた。ゆっくりとこちらに近づいてくる。ミーナはとっさに【認識阻害】のスキルを発動させる。男は面倒臭そうな顔をしてはいるが、殺気までは感じ取れなかった。


「君たち、こんな時間に見学希望かな?王都の学生さん?」


オレ達は顔を見合わせた。オークを追ってきたのはオレ、アカネ、ミィ(ミーナとギュピちゃんもいるけど)。見事に子供チームだな。


「いえ、冒険者です。ガオカナへ行く途中で目にしたので」


オレはあえて素性を明かし、ギルドカードを提示して見せた。


「ほう、 C級冒険者か。若いのにたいしたもんだ」


男はニコリともせずに言った。


「ガオカナの町はあと小一時間程で見えてくるよ。休憩したいならば寄っていくといい、ジュースくらいご馳走するから」

「どうも」


オレ達は誘われるまま男について行った。他のメンバーなら状況を判断し、臨機応変に対応してくれるだろう。


「そうか、あんな子供達がC級か・・・面白い、是非とも体組成を解析してみたいな・・・」


何やら不気味な事をつぶやいている。こいつがアキラさんの言ってた()勇者なのだろうか。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「今は5人の科学者が共同で研究を続けている。研究室は地下にあるから見学は自由だが邪魔はしないでくれよ」


研究所1階は事務室とパーテーションで仕切られた小さな応接室。男はそれだけ言い残すと地下へ降りて行き、オレ達4人と1匹は取り残されてしまった。


「これって」

「誘っていますね」

「やっぱりそうだよな」

「とりあえず、せっかくだからジュースでも頂くニャ」

「あ、ちょっとまてミィ!」


獣人は喉が渇きやすいのか、ミィは出されたジュースをゴクゴクと飲んでしまった。


「ん?」

「毒でも入っていたらどうすんだ!」


オレは自分のジュースを指ですくい、ペロッと舐めてみた。


「毒は入ってないみたいだな」

「ほら、ボーイは心配症だニャ・・・ぐぅ・・・」


ミーナはコロンと寝てしまった。毒ではないが強力な睡眠薬が仕込んであったようだ。 もっともオレとアカネは薬物には耐性があるから効かないが。


「ったく、何やってんだよ」


ギュピちゃんから気付け薬を取り出し、ミィの鼻先にかざした。


「・・・ブハッ!!」


ミィが目を覚ました。


「殺す気はないようですけど」

「敵確定ね。ご希望通り誘いに乗ってやろうじゃないの」

「油断しないでね」

「オッケー」


ミーナも認識阻害を解除し、臨戦態勢をとった。待ってろよ、()勇者!

まずは地下へと続くドアをガンッ!と蹴破ると、螺旋階段を用心深く降りていく。中は照明が灯っており意外と明るく、秘密基地っぽくない。

地下1階は廊下越しに研究室のような部屋があった。大きな窓がいくつも廊下に面しており、中の様子がわかる。見たこともない機材が沢山あるけど、人の気配は・・・

カチャ。

ドアを開けて中から男が1人出てきた。


「「わっ!」」


出会い頭にぶつかりそうになり、瞬間オレはアキラさん仕込みのエルボーを男の顔面に叩きつけた。


「ぐわっ!」


男は吹っ飛び、壁に激突して気を失った。


「ちょっと、派手にやり過ぎじゃない?」

「相手が一般人だったらどうするニャ!」

「一般人はジュースに睡眠薬なんて入れねーよ。それに、仮にそうだとしてもテレサさんが治してくれるだろ」


女性陣はジト目でオレを見たけど気にしない気にしない。

オレ達は研究室の中に入って探索するが、変わったものは見つからなかった。


「何だね、君たちは!」


研究室に別の男が入ってくる。オレは男の背後に回り込むと、チョークスリーパーで頸動脈を絞めあげた。


「ぐ・・・」


3秒で絞め落とした。


「これなら静かでいいだろ」


どうやらこのフロアには何も無いようだ。


「よし、下の階に行ってみよう」

「みんな倒してたら何も聞けないじゃない!」

「甘いなミーナ。最初の奴が言ってたろ、今は5人で研究してるって」

「あと2人ならやっつけても問題ニャいって事だニャ」

「そう言う事」

「ボーイ様、あの・・・」


アカネが何か言いかけたところで、下から階段を上がってくる足音がした。


「何だね、君たちは!」

「どりゃ!」


オレは階上から急降下ドロップキックをかました。


「ぐわっ!」


男はもんどりうって壁に激突し、そのまま動かなくなった。


「よし、行こう!」

「あの、ボーイ様・・・」

「どうした、アカネ、さっきから?」

「ボーイ様が倒した2人、いいえ、今の人を含めて3人、何か似ていると思いませんか?」

「どういうこと?」


オレは気絶した男たちを見比べた。


「白衣にメガネ、どこにでもいそうだけど」

「私達を招き入れた男も同じ顔だったよ!」

「おまけにセリフまで同じだったニャ!」


間違い探しじゃないけれど。確かに何から何までそっくりだ。もしかして、いや、もしかじゃなくて・・・


「こいつら全員クローンか・・・」

お読みいただきありがとうございました。これかも毎週更新していきますのでよろしくお願いします。

また、ブクマ、評価等いただけるとうれしいです(*^_^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ