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04.見習い冒険者、ジャイアントスパイダーを瞬殺する

(マズい)


逃げた盗賊の身に想定外の異常事態が起きたのは明らかだった。

出会い頭に大型の魔物と遭遇したのか、それとも待ち伏せか。


「ギュピちゃん!」

「ギュピ―」


オレはギュピちゃんからロングソードを取り出し臨戦態勢をとった。

角を曲がったオレの目に映ったのは、10m近い巨大なクモの魔物と、その前足に馬ごと弾き飛ばされているシャープ弟の姿だった。

ジャイアントスパイダー、Cランクだ。


「ぐはっ!!」

「マイクさん!」


マイクさん(シャープ弟)は立ち木に叩きつけられると悶絶した。

迫りよるジャイアントスパイダー、マイクさんを捕食する気だ。


(ダメだ、間に合わない、でも・・・)


「コロ、頼む、【君は1000%(オメガトライブ)】」


オレはコロの可能性に懸けて異能(レアスキル)を発動させた。

コロはまだ子狼(ころう)(シャレ?)だがそのスピードと攻撃力が1000%=100%覚醒時のさらに10倍になれば、それはもはや大人の白狼以上のレベル。ジャイアントスパイダーを倒せないまでも十分牽制にはなるハズだ。


「ワオーン!!」


オレの呼びかけに呼応するかのように雄たけびをあげると、コロはジャイアントスパイダーに向かって猛然とダッシュした。それも・・・銀色にはじける電気の鎧、電撃を全身にまといながら・・・


「な、なんだ~!?」


オレは思わず声を上げた。

たぶん馬車からこの様子を見ていたベンさん(シャープ兄)、地を駆ける白狼(ホワイトファング)、乗客たちも同じ思いだったろう。

白狼はランクCの魔物だが、魔法属性は持っていない。しかしコロのそれは明らかに雷属性魔法だ。つまりコロは実は白狼ではなく、Aランクの魔物、()()・・・


「ガルルルル」

「シュゥゥゥーッ」


飛び掛かるコロにピアノ線よりも固い糸を吹き付けて攻撃するジャイアントスパイダー。

しかしコロはまさに電光石火の早業でその攻撃をかわしながらジャイアントスパイダーの周りを一周した。


「グワワワー」


ズシンと音を立ててジャイアントスパイダーの大きな体は地面に崩れ落ちた。

コロはペッと今しがたかみちぎったジャイアントスパイダーの足を吐き出した。そう、一瞬のうちにジャイアントスパイダーの8本の足すべてをかみちぎっていたのだ。正確に言うと電撃のエネルギーを加えて焼きちぎっていたのだろう。転がる8本の足の切り口はシューシューと音を立て黒焦げとなっていた。


「ワオーーーン!!!」


ビシャーン!!


コロがひときわ大きな雄たけびをあげると、天から一筋の稲妻がジャイアントスパイダーを直撃した。

オレが駆け付けるまでもなく、コロは文字通りジャイアントスパイダーを瞬殺していた。


「コロ、オマエって一体・・・」

「バゥバゥ」


コロはどう、すごいでしょ?とでも言うように嬉しそうにオレに抱きついてきた。まだ少し帯電しているのだろう、抱きしめた瞬間ビリっとするのを感じた。

今回は異能(レアスキル)を使っても体力全部持っていかれずに済んだ。でも、


「これって、ヤバいやつだろ、やっぱり・・・」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



その夜、数時間遅れで乗合馬車はジハーダの町に到着した。


「ありがとう、君たちのおかげで本当に助かったよ。」

「どういたしまして。皆さんご無事で何よりです。」


依頼主のハワードさんとパーティーリーダーのベンさん(シャープ兄)が握手を交わす。女の子はお母さんの腕の中でお休み中だ。

他の乗客たちは疲れているのか、それとも何か思うところがあるのか、ほとんど無言のうちに三々五々散っていった。


幸いにもマイクさんのケガは軽く、脳震とうと全身打撲だけだったが大事をとって安静にしている。

捕縛した盗賊は近くの村でジハーダの警備兵に引き渡すためタカさんとトシさんが見張っている。


「ボーイ、弟を助けてくれてありがとう。あらためて礼を言う」

「ベンさん、もういいですよー」

「明日の朝にはタカとトシも遅れて到着するだろう。今後の方針についてはそれから話し合おうと思うのだが」

「「意義なーし!!」」


ジョディさんとサラさんが息の合った返事をする。


「それじゃ、解散」


パーティーはいったん解散し、オレも離れにある『ペット可』の自分の客室に入った。

6畳ほどの大きさだろうか、ベッドと小さなテーブル以外は何もない簡素な小部屋だった。殺風景ではあるが、客がどんなペットを連れていても対応できる作りなのだろう。


(今日は色々あったな・・・)


オレはそのままベッドに倒れこもうとして、枕の上で丸まっている()()を発見した。


(何なんだよ、ったく。休ませてくれよ・・・)


オレはため息をつくとソレをヒョイと摘み上げると、観音開きの窓を半分明け、ポイっと投げ捨てた。

ソレはガサッと草むらの中へ落ち、その瞬間ギャッと小さな声が聞こえたような気がした。


「っと、大丈夫、だよな・・・」


窓からのぞき込んでいると、それは再びガサッと音を立て飛び上がってきた。


「ちょいちょいちょい!あんた、いたいけな少女に何しとんねん!!」


緑の髪に緑の瞳、一見異国の少女のような風体のソレは・・・身の丈10cmくらいで蝶のような、いや、どちらかと言えば空想上の天使の羽根に近いモノを羽ばたかせ、オレの目の前で浮かんでいた。


「妖精、さん?」

「ちがーう、精霊!せ・い・れ・い!!」

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