224.留学冒険者、争点ズレまくる
「「エンヤ校長・・・」」
騒然としていた音楽室の雰囲気が一変した。
風紀委員会と番長連合の一触即発の場面を制したのはサファテ教頭とマドンナ先生、その他諸々引き連れたエンヤ校長だった。
「あなた達!学園内では自主性を重んじて学生の行動を咎める事はしませんでしたが、授業中にこんな騒ぎを起こすのはさすがに行き過ぎです!」
「校長先生っ、違います!これは番長連合がやった事で・・・」
「校長っ、目ん玉腐ってんのか?悪いのは風紀委員会なんだ!」
いや、そもそも実行犯はゲストの弦楽四重奏団だろ、ヤツらを締めれば自ずと黒幕がわかるんじゃないか?
「おまけに部外者まで巻き込んで・・・教頭先生、彼女達を保健室まで連れて行っていただけますか?」
「わかりました」
サファテ教頭は数名の先生と一緒に、気絶したままの弦楽四重奏団の連中を連れ出していく。
「ちょっ・・・」
「ボーイ君、あなたはここに残って!第3者として証言してもらう事になると思うから」
「いや、そーじゃなくて・・・」
オレは先生方に行手を阻まれてしまった。このままじゃヤツらを逃がしてしまう・・・
「はーい、みんなー、整列ーっ、そしてその場で正座ねー」
マドンナ先生の号令で、風紀委員会、番長連合、そして1組、2組の全学生は一斉に移動、整列、そして正座した。オレもつい流れに乗って正座してしまう。
(外でも結構騒ぎになっているようだし、弦楽四重奏団の事は5組に編入しているミィが何とかしてくれるだろう、多分・・・)
いや、でもミィの事だからなあ・・・
「さてと・・・」
エンヤ校長は続けた。
「音楽室が見事にグチャグチャですが、一体何があったんですか?」
「楽団の演奏を聴いているうちに何だかボーッとなって」
「気付いたら全身傷だらけで倒れてたんです!」
「アレはきっと悪魔の音楽だ!」
学生達が口々に叫ぶ。
まあ、そうなるわな。あの後かろうじて意識を保っていたのはオレとクラリスだけだったし。
「間違いない、これは番長連合の仕業だ!」
「何言ってんだ、オレ達に罪をなすりつけようとする風紀委員会の仕業だろ!」
「犯人は番長連合だ!」
「風紀委員会だろ、ボケッ!」
あーあ、なんか話が元に戻っちゃったよ。
エンヤ校長はふぅとため息をついて言った。
「大体わかりました。これはどちらが犯人か、決闘で決めるしか無さそうですね」
おいっ、どうしてそうなる?
「上等だ!」
「今度こそ決着をつけてやるぜ!」
何でコイツらもやる気満々なんだよ!
「待って!私見たんです!留学生のクラリスさんが1人で悪魔の音楽に対抗するのを」
「私も見た、いや感じたわ。クラリスさんの優しい歌声で心と体が包まれていくのを」
「オレもだ!」
「私もよ!」
「まさに」
「「天使の歌声だ!!」」
おっ、まだかろうじてあの時自我が残っていた学生がいたみたいだ。しかし天使の歌声って言い過ぎだろ!
しかも歌詞は運動会応援歌のパクリだし。
「確かに。私達もクラリスさんが学生達を介抱するのを見たわ」
「認めよう、彼女は間違いなく聖女だ」
風紀委員会に番長連合、ここは同意見のようだ。
「なるほど、大体わかりました。『王国の聖女』を賭けて勝負したいと」
「おう、やってやるぜ!」
「望むところよ!」
おい校長っ、何が大体わかっただ、さっきから全然見当違いじゃねーか!
それに風紀委員会と番長連合っ、簡単に乗っかるな!
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
オレがツッコむより先にクラリスが口を開いた。
「確かに私は聖女ですけど、まだまだ修行中の身です。怪我をした学生さん達はここにいるボーイさんのハイポーションがあったから助ける事ができた訳で・・・」
「はぁ?」
「ガリ勉が?」
今まで目立たないように振る舞っていたのが奏効したのか、訝しげにオレを見る学生達。いいね、このまま静かにフェードアウトできれば思惑通り・・・
「なるほどなるほど、大体わかりました。クラリスさんは同郷のボーイさんに功を譲りたいと」
「いえ、私は別に・・・」
「奥ゆかしいところも聖女に相応しいと言えましょう。それにしてもボーイさん、人の功績を横取りしようとは見下げたものですね」
だから、どうしてそうなるんだよ!
「そうだそうだ、全ての元凶はガリ勉だ!」
「クソ留学生、許すまじ!」
風紀委員会と番長連合、バカだろお前ら!
「わかりました、ではこれはどうですか?風紀委員会と番長連合は、それぞれ3名の代表者を選出して交互にボーイさんと決闘してもらいます。ボーイさんを倒した方が聖女クラリスさんを仲間にできるというのは?」
エンヤ校長!何かオレに恨みでもあるのかよ!
まあ、確かに引き抜きの話を断った事があったけど・・・それにしても争点ズレまくりだろ!
「わかりました」
「こっちもそれでいいわ」
マジか?両陣営のカーミラさんとガガさんからGOが出ちゃったYO。
「ごめんボーイ、まさかこんな事になるなんて・・・」
「しゃーないクラリス、こんなん、誰も予想で出来ねーよ」
申し訳なさそうなクラリス。もちろんクラリスのせいじゃない。
「それでは今日の放課後、校庭に集まって下さい。逃げたりしないで下さいね」
そう言い残すとエンヤ校長は入室と同様、教師達を引き連れて音楽室を出て行った。
「ボーイ君、あなたには失望したわ」
「カーミラさん・・・」
「正直ガッカリね」
「ガガさん・・・」
捨てゼリフを残し風紀委員会と番長連合も退室して行った。
「ガリ勉、ドンマイ」
オーディズ君が残念なものを見るような目でポンとオレの肩を叩いた。
なんか泣きたい・・・
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