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197.学生冒険者、告白される

すみません、朝予約投稿忘れてました。

「短い間だったけど、君達との思い出は一生忘れない。どうもありがとうございました!!」

「「「あーしたっ!!!」」」


魔球部あるある、挨拶の仕方が独特。

オレの所属している(幽霊部員だけど)魔球部でも、唯一の3年生部員、アボット先輩の引退式がささやかに行われた。

感極まっている先輩を見ていると、こっちまでなんか泣きそうになってくる。


(ああ、オレ魔球部に入って(幽霊部員だけど)よかったなあ・・・)


先日行われた生徒会長選挙と前後して、各部活では次々と3年生が引退していった。

魔球部も部員不足で一時は廃部の危機だったが、国立学園との対抗戦で人気に火が付き入部希望者が殺到、今では部員が8人で堂々危機を回避した経緯がある。

ちなみに卒業後は実家で領地経営の勉強をしながらプロ魔球チームの設立を目指すそうだ。


(なんか寂しくなっちゃうね)

(うん)


ミーナの言う通り、3年生がいなくなるのはちょっぴり寂しい。

引退式の後、感傷に浸ってるとキッドがやってきた。


「ボーイ、ちょっといいか?」

「なんだよ、改まって?」

「実はアカネ王女の事なんだけど・・・」

「まだちゃんと告白してないらしいじゃねーか。この前月イチの報告会でアカネが言ってたぞ」

「オマエなあ、相手は王女でこっちは表面上はタダの平民、しかもA組とD組、ボーイが間に入らなくて話をするチャンスがあると思うか?」

「うーん、ないっちゃないかも」


オレとミィは一応アカネ王女の護衛としてこの学園に入学している。まあ、実際はクラスも別だし、ほとんど何もやってないんだけど。


「しかしボーイ、アカネ王女とそんな事まで話してんのか?羨ましすぎるだろ!て言うかオレをネタにすんな」

「まあまあ、でもこの前キッドにとって嬉しい情報を入手したよ。なんと、2年生では初のクラス替えがあるそうだ」

「何っ?」

「期末テストの成績順にクラスが振り分けられるんだって。キッドならば間違いなくアカネと同じA組入りだろ」

「そりゃそうだろうけど・・・残念ながらそこまで待ってもいられなくなった」

「ん、どうした?」

「詳しくはまだ言えないんだけど・・・なあボーイ、年内に1回アカネ王女とセッティングしてもらえないかな?」

「別にいいけど、本気でコクる気になった?」

「あ、ああ。まあそんなとこ。他言無用で」

「わかった。んじゃミーナを通してこっそりアポ取ってやるよ」

「いいのか?」

「ほら、キッド、頼む相手が違うんじゃないの?」

「おっと、ミーナちゃん、そこんとこなんとか宜しく頼むよ」

「このミーナ様にまっかせなさーい!」


ふんぞりかえるミーナ。


(そういや、キッドがオレに頼み事をするなんて珍しいな)


いや、別に珍しくないか。

なんとなく違和感を覚えながらもオレはキッドの依頼を了承した(丸投げだけど)。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



秋が過ぎて、冬の足音が聞こえてきたかと思うともうすぐ年の瀬。

学生の本分は学業だと言うけれど、ここ2ヶ月はイベントというイベントもなく、事件という事件もなくあっという間だった。

魔王の娘だったマリアはきちんと自分をコントロールできており、


「春になったら冒険者になってパパのお手伝いしてあげる!」


と、やる気まんまんだ。

オレとしてはうちの3人娘()には安全な場所で安心な生活をして欲しいんだけど、ヴァンパイアクイーン、オーガクイーン、フレッシュゴーレムに大人しくしてなさいって言っても聞いてくれないんだよなあ。


「寒くなったねー」

「オレの田舎じゃもっと寒かったけどな」

「王国の最北端だったっけ」


オレはいつもの如くキッド、チコ、ブーマー君と教室でダラけていた。

そう、オレが10年間過ごしたシンカータ領の寒さはこんなもんじゃなかった。


「もうすぐ今年も終わりだね」

「あっという間だったんだな」

「早いよなー」

「そういや寮生は年末年始学生寮で年越しするんだって?」

「1週間しかないし、休み明け早々期末テストだからね」


学園は2学期制をとっており、後期は9月から1月(その間1週間だけ年越し休暇がある)、その後2月3月は完全春休みだ。


「ボーイ君は春休みなんか予定あるの?」

「やっぱりきたね、その質問」


まさに夏休み前とおんなじ展開。

あの時はオレだけノープランで恥ずかしい思いをしたけれど、今回はそうはいかないぜ。


「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれた。実はアイシン領主のセシルさんの招待で1ヶ月お世話になるのだよ、エッヘン」

「お世話してもらう側がエラそうに」

「アイシン領主って言えば女傑として名高いスティムボート女伯爵だよね?そんな人をファーストネーム呼びって・・・」

「ボーイ君の事でいちいち驚いちゃダメなんだな」


オレを何だと思ってるんだ?ま、自覚はあるが。


(ボーイ)

(ん・・・)


ミーナに言われて窓の外を見ると、メイド姿のシラヌイがほぼ校舎の建物と同化してこちらを覗いていた。


「あ、ちょっと悪い」


オレは教室を抜け出した。


「どうしたシラヌイ?もしかしてアカネに何か・・・」

「心配ない、それよりもアカネ王女が大事な話があるそうだ。ついて来てくれ」

「わかった」


教室をチラリと見ると、心配そうにこっちを見ているキッドと目が合った。

やべっ、そういやキッドにアカネとのセッティング頼まれてたんだった(丸投げしたけど)。

あれから催促もなかったからすっかり忘れていたよ。




気まずい思いでシラヌイについて行くと、そこは裏庭だった。

『告白の木』と呼ばれるベタな針葉樹の下、アカネはいた。


「ごめんねボーイ、呼び出したりなんかして。忙しかった?」

「いや、全然」


シラヌイはいつの間にか姿を消していた。いや、アカネの護衛だ、どこかで影ながらオレ達の事を見ているのだろう。

うん、シラヌイだけじゃない、他にも数人の視線を感じる(デバガメ?)。流石は伝説の『告白の木』、注目度が高い。でも残念でした、アカネの大事な話ってのは多分そう言うヤツじゃない。


「ボーイ、実はね、私・・・」

「ちょっと待ったーっ!!」

「なっ!?」


割って入って来たのは他ならぬキッドだった。


「キッド君?」

「アカネさん、その告白ちょっと待ってもらえませんか!?そしてボーイ」


キッドは白の手袋をシュッとオレに投げつけた。


「オレと決闘してくれ!宝具使用、従魔呼び出し何でもありのガチバトルだ。そして勝った方がアカネ王女をもらう!」

「「えええーっ!」」


何でいきなりそうなる!?

お読みいただきありがとうございました。これからも毎週更新していきますのでよろしくお願いします!

また、ブクマ、評価等いただけるとメチャクチャうれしいです(*^_^*)

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