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02.見習い冒険者、盗賊団を一蹴する 1

「知らない天井だ」


お約束なので言ってみた。

いや、いつもの部屋なんだけどね。


いつもと違うところもある。

ベッドの脇をを見ると白くてちっちゃい、コロコロとした白狼(モフモフ)がスヤスヤと寝息を立てていた。


「コロ~~~ッ!!」


オレはベッドから白狼(コロ)に向かってダイブした。

そのまま抱きしめると、メチャクチャ頬ずりする。

モフモフモフモフモフモフモフモフ・・・・

タンスの上からギュピちゃんがジト目で見ているが気にしない。


「キュ、キューン」


コロも目を覚ましたようだ。

特に抵抗もしないのでまんざらでもないんだろう。

朝のモフモフを堪能し、オレは二匹の魔物を連れて部屋を出た。




「おはよー、ばあちゃん」

「よく眠れたかい?、ボーイ」

「まあね」

「今日も町の冒険者ギルドに行くのかい?」

「昨日言ったじゃんか、今日はいよいよギルドの実技試験だって。たぶん2、3日帰らないからよろしく頼むって」


ちょっぴりボケてきた?ばあちゃんの作ってくれた料理を食べながらオレは言った。


ここはアルンメリア王国シンカータ領にある『最北の開拓村』。名前は無い。

『神魔大戦』終結後、有志によって結成された開拓団の一つによって開村された。

今は主に農業で生計を立てている。

別に外界と隔絶されているわけではないが、村とミカミの町との交流はほとんどない。

オレの両親は開村後まもなく大型の魔物の襲撃に遭い、幼いオレをかばって命を落としたそうだ。

全然記憶にないし、ばあちゃんも村の皆もオレには良くしてくれているから別に気にしていない。


「んじゃ、行ってきまーす」

「バゥバゥ」


オレはいつもの通りギュピちゃんとコロを連れてミカミへと出発した。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あれからもう半年か・・・」


いつものように通いなれた田舎道を走りながら、オレは思った。


白狼親子を助けたあの夜、異能(レアスキル)を使って燃え尽きたオレは、運よく()()通りがかったお隣りのマードックさんに拾われた。

翌朝あの大きな母狼のことを尋ねると、マードックさんは黙って首を横に振った。

そして子供の白狼、コロはうちの子となった。


「お前もあっという間にデカくなったなぁ」

「バゥバゥ」

「色々あったけどお互い良くがんばったよ」


いつかゆっくり話せたらいいんだけど、本当に色々あったんだ。

もっと強くなりたい一人と一匹は、猛特訓の末いつしか強い友情で結ばれていた。


「お前も、な」

「ギュピ~」


ギュピちゃんはお気に入りのコロのモフモフの背中で揺られている。

今回のギルドの試験が終わって無事本当の冒険者になったら一人と二匹でこの片田舎でのんびりやっていこう。



ミカミの町に到着すると、町の入り口に一台の乗合馬車が停まっていた。

週に一回、隣町のジハーダとの間を片道10時間かけて往復している。

そう、今回の実技試験はズバリこの乗合馬車の護衛任務だ。ごくまれに襲ってくる盗賊や魔物から乗客と積み荷を守る、定番の依頼(クエスト)だ。他の冒険者と臨時パーティーを組んで無事に依頼を完了すればクリアとなる。よほど運が悪くない限りそんなに難しい試験ではない。それでも試験と名がつくものはいくつになっても緊張する。


最初にオレに声をかけてきたのは『地を駆ける白狼(ホワイトファング)』の4人。


「おっ、来たな。ちびっ子三人組」

「おはようございます。そのあだ名はやめてくださいよ」

「いいじゃない、ミカミのギルド自慢の癒し系のチームなんだから」

「コロちゃんまたちょっと大きくなった?お姉さん後でたっぷりモフモフしちゃうから」

「バゥバゥ!!」


コロはブンブン尻尾を振り回している。コロよ、お前もやっぱり女の人のほうがいいのか。


「「今日はその駄犬にもきちんと仕事をしてもらうからな」」

「わかってますよ、オレもコロも」


ミカミ所属のもう一組、『シャープ兄弟』はいつものようにハモってきた。

不愛想な双子だが、時々裏でコロにエサをあげているのをオレは知っている。


以上が今回の臨時パーティーのメンバーだ。もっともミカミの町の冒険者ギルドにはこの2組しか所属していないため、ほとんど固定メンバーだ。


「みんな集まったようですね」

「「「おはようございます!」」」


受付嬢のマリアさんがやってきた。さすがに真面目な顔をしている。


「今日の依頼はご存じの通りボーイさんのギルド登録実技試験とさせていただきました。ボーイさんはすでに先日実施した筆記試験で満点をたたき出しています」

「「おおー」」


(テレるな・・・)


「今回の実技試験では総合的な依頼達成能力を先輩冒険者に審査・判定していただきます。戦闘力は問われませんので、身の危険が生じた場合はくれぐれも無理をしないでください」

「了解っす」

「『シャープ兄弟』『地を駆ける白狼(ホワイトファング)』もよろしくお願いします」

「「わかりました」」

「それと・・・」


マリアさんは急に小声になると、乗合馬車の乗客に聞こえないよう、そっと囁いた。


「情報筋によると、今回の乗客の中には盗賊団の手引きが紛れていて、襲撃は既定路線らしいです・・・」

「「「マジかよ!!」」」


試験のハードル上げすぎだろ!

マリアさん、そういうことは先に言ってくれないと・・・

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