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17.駆け出し冒険者、旅に出る 1

「良かった、無事だったんだ・・・」


オレは、ばあちゃんの体をポンポンと叩いた。どうやらケガもないようだ。こんな焼け野原で、よくもまあ全員無傷で助かったもんだ。


「ばあちゃん、これどうしたんだよ?一体何が・・・」

「突然謎の黒ずくめの集団が現れ、ボーイがいないとわかると火を放っていったんですじゃ。私どもはなすすべもなく、炎を避けてシェルターへ逃げ込んでおりました。」

「へー、シェルターねー、って、そんなのあったんかい!それにその話し方!なんで孫に丁寧語?」


ばあちゃんは半ボケ老人とは思えない軽快な動作でバックステップし、オレの前で片膝をついた。

19人の村人達、シラヌイにアカネもそれに続く。


「ちょ、ちょっと待ってよ、みんな・・・」

「お帰りなさいませ、ボーイ・デスティニー・アルンメリア第3()()

「はい?」




どうやらオレはこの国の王子らしかった。


「つまり、オレの母さん?、アルンメリア王妃は大戦前の不穏な世界情勢からオレを守るべく、王妃に絶対服従の20人の部下と2人の影候補と共にオレを退避させ、この『最北の開拓村』でただの開拓民の子供として生活させていた、と」

「その通りですじゃ」


オレのばあちゃん(実は偽物だったけど)、村長で稀代の大魔女、サマンサ・ハーマイオニーはそう説明してくれた。思い当たる節はいくつもあった。ばあちゃんの作る薬草は聖女か大魔導士くらいしか作れないものらしいし、お隣りのただのおやじと思っていた、実は伝説の剣聖、マードックさんに教わった剣技はB級冒険者のそれを軽く凌駕していた。そしてトドメはシラヌイとアカネ、2人の影の存在だ。オレが王家の人間ならばすべて得心がいく。ちなみにばあちゃんとマードックさんは、先代国王の側近だったそうだ。


「王妃はボーイ王子が成人するまで影から支え、その先は王子の臣下となり力を貸してやってほしいと私達に言い残されて戦場へと旅立っていきました。そしてこの命令が文字通りの遺言になった訳ですじゃ」


アルンメリア王妃は大戦で還らぬ人となっていた。その後国王は後妻をめとっていない。

ばあちゃんは続けた。


「これからはボーイ王子が私たちの新しい主となります。老体ではありますが何なりとお申し付け下さい」

「ちょっ、ちょっと待って・・・いやマジで状況を整理させて」


22人44の瞳がオレを見上げていた。プラスギュピちゃんとコロで48の瞳か。オレはどうしたらいいのか、深呼吸してから王子としてではなく、普通のオレとして考えた。


「取りあえず、村をこんなにした奴らを許すわけにはいかないな。マードックさん、犯人に心当たりはある?」

「ボーイ王子、あなた様は自分が思っている以上に重要人物なんです。心当たりだらけで逆に見当がつきません。魔族の復讐か、あるいは他国の先兵、国内でも王位継承争いの渦中の第1王子や第2王子の手の者、神聖教団の暗殺者やブッチャー盗賊団の残党・・・」

「わーったわーった!」


マードックさんまで丁寧語。やりづらいな、まったく。でもオレのやるべき事は見えてきた。


「やられたらやり返す、100倍返しだ!!敵の狙いが第3王子だっていうのなら話は簡単、オレ自身が撒き餌になって敵を誘い出してぶっ潰してやる。ばあちゃん、ごめん、前に田舎(ここ)でのんびり暮らすって言ったけど前言撤回、オレ、旅に出るよ」

「王子、では我々もお供致します」

「いや、ばあちゃん達はここに残って村を再建して欲しい。帰る場所がないと寂しいからね」

「「「はっ!!!」」」


深く頭を垂れるばあちゃん達。それもあるけど、ばあちゃん達に無理させたくないってのが本音だ。もう今まで充分過ぎるくらいの恩があるしね。あと・・・


「ばあちゃん、オレ、取りあえず王都に行こうと思うんだ。その、なんだ、父さん?、国王にも会ってみたいし、他にもたくさん知りたい事があるからね」

「賢明なご判断ですじゃ。もう何も言いますまい」

「言っとくけど、別に今生の別れとかじゃないからね。必ず帰って来るから。だから、必ず待っていてよ!」

「「「御意」」」

「となれば善は急げ、だ。ここにはもう敵はいないようだし、町に心配事が残ってるからオレ、もう行くよ。」

「主」

「あの、ボーイ様、私達は・・・」


シラヌイとアカネが仲間になりたそうにこちらを見ている。


「2人とも今までありがとう。もう自由に生きて構わないよ。でも、もしよかったらこれからも一緒にいてくれないか?オレ、2人の事結構好きだから・・・」

「「はい、喜んで!!」」


正直、2人がついてきてくれるか心配だったんだ、でもよかった。


「ボーイ王子、私からの餞別です。どうぞお納め下さい」


マードックさんから渡されたのは一振りの剣。っていうか、これって異世界の刀って奴だよな。それにしては気持ち小さめな感じが。


「これは・・・」

「これは脇差といって、異世界の戦士が第2の刀として使用するものです。剣の修行中も感じておりましたが、ボーイ様はまだ成長途中。大剣よりもこのくらいの大きさのエモノの方が扱いやすいかと」


オレは刀を手に取り鞘を抜いた。何でできているのだろう、片刃の刀身が吸い込まれるような漆黒の光を放っている。片刃なのもいい、無駄な殺生をしないで済む。


「きれいだ」

「異世界の名工、村正の作と言われております。銘は『斬月』」

「ありがとう、大切にするよ」

「私からの選別はコレです。使いたい方がおられるのでしょう」


ばあちゃんがくれたのは小瓶に入った真っ赤な液体、エリクサーだった。さすがばあちゃん、オレの欲しいものはなんでも知っている。


「ありがとう、ばあちゃん」


オレはばあちゃんにハグをした。ほんの一瞬だったけど、ばあちゃんはオレの耳元で他の人には聞こえないよう、そっと囁いた。


「シラヌイとアカネを頼みましたぞ」

「もちろん」

「あと、王には決して気を許さぬよう・・」

「えっ?」


ばあちゃんはニコニコしながら体を離した。まるで何事もなかったかのように・・・


「さあ、お行きなされ。ご武運を」

「お、おう」


よくわからんがよしとしておこう、うん。なんかフラグっぽい感強いけど。

オレはシラヌイとアカネを引き連れ村の出口まで歩いて行った。村の20人は律儀にも体勢を崩さないままこちらを見つめていた。

村から出て行く事が寂しくないと言えば嘘になる。それが役目だったとはいえ、20人はオレにとても良くしてくれていた。オレは1度振り返ると、元気よく手を振りながらこう叫んだ。


「今までありがとう!ばあちゃん、マードックさん、ゴッチさん、ロッカさん、シュミットさん、テーズさん、マイヤースさん、アトキンスさん、カービーさん、ウィルキンスさん、アンダーソンさん、アポロさん、カタリナさん、キャシーさん、トーニャさん、ナタリアさん、ジャネットさん、エレーナさん、ナンシーさん、エリザベータさん、あなた達の事は決して忘れない!!」

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