125.運命の冒険者、人事を尽くして天命を待つ 7
あんな巨大サンドワームを前にしては、一気にテンションだだ下がりだった。
「ボーイ、アレを倒すいい手はあるか?」
ディックさんに聞かれたが、返答に困ってしまう。
「残った全員で一斉攻撃を仕掛けるのが最善手だと思うけど、こんなヘロヘロなメンツじゃどう足掻いても倒せそうにないですね。いや、いっそ丸呑みにされて腹の中から攻撃すればワンチャン・・・」
「「ないない!」」
「ですよねー」
戦闘前はまだ薄暗かった空が、今では朝焼けで真っ赤に染まっている。こういう砂漠地帯ではよく見かける風景だそうだ。
ド、ド、ド、ド・・・・
地鳴りが響き始めた。最後の魔物大暴走の行軍の始まりだ。
「思えば悪くない人生だったな」
「バカじゃないの、アンタ」
見つめ合うディックさんとアギレラさん。あれ。いつの間にそんな関係に?
「野暮なこと言わないの!」
「そっとしてオいて上げて、お兄チャん」
「うす」
うちのメンバー、変なところで理解があるな。
「キシャャャャャ〜〜〜〜!!!!」
ドドドドドドドド!!!!!
2回目の巨大サンドワームの咆哮が合図となり、スタンピードは一気に速度を増して突っ込んできた。
チラリとホテルの方を見上げると、絶望の表情で窓際に張り付いている一般客達。でも、冒険者達は戦意を喪失してはいなかった。
「ボーイ、言ってくれ」
「オレですか?」
「他に誰がいるのよ!」
こんなガキンチョに命を預けてくれた冒険者達には感謝しかない。
「みんな、泣いても笑ってもこれが最後の戦いだ!冒険者魂を見せてやるぜーっ!」
「「「おお〜っ!!」」
出来る手は全て打ってきた。後は最後の最後まで諦めない事。
オレは弱ってきている握力で斬月を握りしめた。あれだけ斬りまくったのに刃こぼれ1つない。
(こいつにも感謝だな)
(それだけ?)
久しぶりにミーナが心の中で語りかけてきた。そうだ、そうだよな。
「今までありがとう、アリス、ウマ」
「お兄ちゃん大好キ」
「うす、親父」
「ちょっと、私には?」
(好きだ、ミーナ)
(へ?ちょ、ちょっと何よそれ!?)
ミーナがデレた。相変わらずチョロいな。でも本当に感謝してる。お前がいたからオレはここまで・・・
「「ガルル!!」」
「「ギャギャギャッ!!」」
「「ブモーッ!!」」
「「キッキー!!」」
「「ゲロゲーロ!!」」
ったく、感傷に浸る暇もないってか。ならば斬って斬って斬りまくってやるぜ!!
「って、おいっ!」
オレ達に向かって真っ先に突っ込んできたのは、ザコモンスターではなくあの30メートル級の巨大サンドワームだった。デカいから早いのか?
「キシャャャャャ〜〜〜!!!」
気色悪い大口を開けて迫ってくる。丸呑みにする気満々だ。
(くそっ、これまでか・・・)
巨大サンドワームが全ての冒険者をひと飲みにしようかという、まさにその時だった。
「出でよ、【大地の壁】(ニャ)!!!」
グヂャッッ!!!!
目の前に突然現れた巨大な土の壁に直撃し、サンドワームは梨汁よろしくブシャーと体液を撒き散らしながら見事にブッ潰れた。
何が起きたのかわからず、あ然とする冒険者、そして魔物達。でもオレとミーナは誰がやったか知っている。
「お待たせしましたニャ!」
「ちょっと、来るのが遅いんじゃない!?」
土の壁の上にちょこんと座っていたのは『最後の希望』のボケ担当?虎の獣人ミィだった。
お読みいただきありがとうございました。今週は短めのヤツを毎朝更新していく予定です。
ブクマ、評価等ぜひぜひよろしくお願いしますm(__)m




