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11.駆け出し冒険者、黒執事をシカトする 2

「うわっ!」


応接室を飛び出したオレに、両手に鉤爪のついた手甲を装備したメイドBが襲い掛かってきた。拳法か何かをやっているのだろう、蹴りも加えた連続攻撃は鬼気迫るものがあった。


「見てただろ、メイドA(おともだち)の件は不可抗力だ。できればあんたも傷つけたくはない!」

「うるさい!」


どうやら聞く耳持たないようだ。まいった、女子供には手を上げないのがオレのポリシーだってのに・・・


カキーン!

別方向から飛んできた何かをメイドBが弾いた金属音が響く。床に転がったのはくないのような鋭利な刃物。


「!」

「ここは頼む!」


見えないものの影に一瞬攻撃の手が緩んだメイドBを残し、オレはさっき目星をつけていた屋敷北側の離れの方へ進んでいった。


(助けて・・・)


行先の方向からミーナの声が脳内に直接響いてくる。

入り組んだ屋敷の最奥に近い角を曲がると正面10m先にあの胡散臭い執事長のセバス、もといハンクスが立っていた。


「ム~!ム~!」

「ミーナ!!」


その手には猿轡をかまされたうえロープでグルグル巻きにされたミーナがぶら下がっていた。


「ここまではお見事、と言いたいところですが、嫌と言うほど経験不足が露呈していますなあ」

「わかっとるわ!」


コロを外に残してきたこと、ギュピちゃんとカールさんを応接室に残してきたこと、ミーナと別行動をとったこと、そしてまた()()()()?に助けてもらったこと・・・反省点だらけだ。


ハンクスは指先でピッとミーナの猿轡とロープを切ると、そのままミーナを開放した。


「ボーイーッ!!」

「ミーナ!」


ミーナはオレに抱きついてきた。


「ハンクスさん、あんた、もしかして味方・・・」

「んなわけないでしょ!クロよ、真っ黒!黒執事よっ!」


ハンクスはゆっくりとレイピアを抜いた。


「人質を取る意味がないのでお返ししたまで。お二人とも私のレイピアの錆となってもらいましょう。あの『氷の貴公子』が選んだ男と聞いて多少は期待していたのですが、とんだ期待はずれ・・・」


「ミーナ、おまえ捕まったのかよ!何やってんだまったく。認識阻害はどうした、認識阻害は?」

「しょーがないでしょ、あの黒執事には何故か私が見えてるみたいなんだもん!」


「そう、私はこれでも元A級冒険者。精霊の気配を感じ取るなど造作もない事・・・」


「見えるもんには見えるってあれほど注意したのに、このすっとこどっこいが!」

「なによ、すっとこどっこいって!それを言うならボーイこそ何やってんの!男爵だってメイドだって、まだ息があるみたいじゃない!」


「アダムス男爵はただの下っ端。ブッチャー様よりこのジハーダ地区を任されているのは実はこの私・・・」


「人を殺し屋みたいに言うな!それに前にも言ったろ、女には手を上げない、って!」

「どーせまた鼻の下伸ばしていて逃げられちゃったんでしょ!」

「またって何だよまたって!ミーナのくせに、オレの何を知ってるって言うんだよ!」

「ひどい、そんな言い方しなくたっていいじゃない!私なりにボーイの力になれるようがんばっているのに」

「うわっ、泣くなよ、こんなとこで。わかったよ、今度うまいもん食わせてやるから」


「お前ら、人の話聞いてるのか?」


空気になったハンクスがドカドカ近づいてきた。


「おいったら!!」


グイッと肩を掴まれた。


「「うっせーんだよ!!」」

ドガッ!ゴワー!!

「がー!」


思わず回し蹴りをかましたが、同時にミーナの風魔法の突風が発動した為、ハンクスは大きく弾き飛ばされドガーンと突き当りの壁に激突した。

ハンクスは小さくグフっと音を出すと、そのまま崩れ落ちた。


ゴゴゴゴと低い音がすると床の一部が開き、地下へと続く階段が現れた。

どうやら今の衝撃で扉を開く隠しスイッチが押されたようだ。


「はは、結果オーライってか」

「良かったじゃない。さ、早くお宝回収しましょ」

「ミーナ・・・」

「ん?」

「なんか色々ごめん、そしてありがとう。あと、さっきの、お前魔法使えたんだ?」

「言ってなかったっけ?精霊は人間と心が繋がると魔法が使えるようになるって」


ミーナはちょっぴり頬を染めながら言った。


「ミーナ・・・」

「だから何?」

「言ってて恥ずかしくないか?」

「バカちんがー!」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



地下道は暗いだけで特にトラップもないまま進んで行く。


「今度は離れんなよ」

「ん」


デュークさんは確か秘密の商品があるって言ってたけど、どんなお宝が眠ってるんだろう。

財宝?宝具?もしかして神具だったりする?


「ボーイ、この先に誰かいる」

「わかった」


オレはロングソードを構え直した。

お宝の番人がいるのだろうか?


「そこだ!って、あれ?」


目の前は行き止まりで、鉄格子に仕切られて牢屋のようになっていた。

その中には・・・ボロボロになったまだ5〜6歳に見える少年が横たわっていた。


「ボーイ、 まさか商品って?」

「人身売買、か」

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