表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

山岸先輩からのメッセージ

 体育館から少し離れた木の下で山岸先輩とラ○ンの交換をした後、うきうきしながらいつもの裏門から学校を出て、歩いて帰る。山岸先輩のラ○ン~♪、山岸先輩のライ○~♪。スマホを見て彼女の名前が登録されているのを確認しては嬉しい気分になる。あれ? 何か忘れている様な……なんだっけ? うーんと考えるが思い出せない。まぁ、いっか。思い出せないのは大したことじゃないだろうと思い直し、そのまま家に帰った。背後に誰か付いて来ているにも気づかずに。

 部屋でくつろいでいると、山岸先輩からチャットが来る。

『こんにちは』

 僕は嬉しさのあまり直ぐに返す。

『こんにちはです』

『いざこういった感じの1:1で話すのは案外恥ずかしいものだ』

『どうしてですか?』

『小谷君はそう思わないの?』

『少し緊張するくらいですかね?』

『私は部活相手にはあまり連絡手段としか使わないからこういう普通の話には慣れてないからかな?』

 僕はドキッとする。じゃあ、僕には連絡手段以外でチャットしてくれてるって意味ですか? ドキドキしながら画面をタッチする。

『そうなんですね』

『そういう意味で緊張するの』

『へ~』

『小谷君は違うの?』

 僕は……、

『僕は憧れの先輩と話すからですかね?』

 その後は『ふーん』とだけ来た。

『先輩はどうしてバレーボール部に?』

『それはね……』

 それから僕達は色々たわいもない話をする。

『へえ、そうなんですか』

『そうなんだよ』

 くだけた先輩と話すのは意外な一面を見れて楽しい。

『ところで小谷君』

『はい』

『明日土曜日でしょ?』

『はい』

『部活終わりに私の欲しい服があるから一緒に買い物に付き合ってくれないか?』

『え? どうして僕と!?』

『君が選ぶ服が気になるからな』

『えと、僕で構わないんですか?』

『構わない』

 それって実質デートみたいな感じ? 心臓の鼓動が止まらない。そしてスマホのタッチパネルを押す。

『分かりました。お供します』

 そう送った。

『分かった。では明日ね』

 これで、山岸先輩とのチャットは終わった。そして何回も彼女と送った内容を反芻する。そしてある文に差し掛かった時、心のどこかで引っかかりを感じる。


──一緒に買い物に付き合ってくれないか?

 一緒に買い物に……、買い物に……


「あーーーーーーーーっ!!!」


 僕は思いだして叫んだ。そして下から母さんが訊いてくる。


「どうしたの? 何かあった?」

「いや、ゴメン大丈夫……」


 いっけねーっ。香織に謝らないとーっ!! そして急いで香織に送った。

『今日はゴメン』

 そしたら少ししてから、

『うん、もう良いよ』

 ふー、良かったーっ。そしたら彼女からチャットが連続に来る。

『それよりさ買い物が嫌ならさ』

(?)

『お昼どこかに食べに行かない?』

『え? どこ?』

『お蕎麦屋さんとか』

『え、うん構わないけど。どうせご飯は食べないといけないし』

『そう』

『けど急ぎで頼む。その後用事が出来たから』

『え? 何の?』

『聞いて驚くな。山岸先輩の用事のお供だ』

 ふふんと思いながら送る。そして既読になり、少し間が空いたと思ったら、電話が来た。


「な、何だよっ?」

『ちょっと用事って何のことよ!? 洋平!?』

「何がだよ?」

『何の用事かって訊いてるの!?』

「そ、それは……」

『ん!? 何!?』

「ふ……」

『ふ!?』

「彼女の服選び……」

『はぁ!? 私の買い物には付き合ってくれなかったくせに、山岸先輩の服選びには付き合うの!?』

「え? だってそれは先輩から直々に頼まれたからさっ」

『私の時は面倒くさいって言った癖に! 最っ低! 本当に信じらんない!』


 彼女はずーっと文句を言い続けたのでつい弱々しく対抗して、


「お前には一緒にご飯食べるだろう!?」

『それも先輩の服選びの為に急いで食べなきゃ駄目なんでしょ!?』

「……」

『ほら、返事がないっ。もう本当にさいてー!!』

「……ゴメン」

『もう謝ったって仕方ないわよ! 彼女と約束してるんだし!』

「う、うん……」

『だから帰り道やけに嬉しそうだったのね』

「知ってたのか!?」


 彼女は電話越しでため息を吐く。

 同じ方向なんだから分かるわよと言った後、何やら考え事をしているらしい。奥から小さい声がぶつぶつと聞こえる。


『分かったわ、ならこうしましょう!』

「何?」

『私が先に約束しようとしてたのに、それをないがしろにしたお詫びに日曜日一緒にボウリングに行くこと!』

「えー?」

『何!? 行けない用事でもあるの!?』

「いや、ないけど……」

『じゃあ、ちゃんと来ること! 良い!?』

「……は、はい」


 僕は押し切られる形で承諾した。 


「……じゃあ香織、また」

『……それと』

「何?」

『もう少し私のことちゃんと見て……よね』

「え?」


 今までの怒った声とは裏腹に少し悲しげな声で言う彼女に僕はギクッとする。香織のことをちゃんと見てない、か? まぁ、確かに連れ感は否めないな……。今日も彼女に謝ることを忘れていたし、良いことがあって少し調子に乗りすぎたな……。そしてふと美馬の言葉を思い出す。


──『親しき者にも礼儀あり』だ


 そして僕は改めて香織の声を思い出し急に胸が痛み、あまりにも無神経だった事を反省し、もう少し香織のことをちゃんと見ようと考え直した。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

ブックマーク、評価頂き励みになってます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 両手両手に花とかそういうレベルじゃねぇなぁ、 羨ましすぎかよぉ [気になる点] 続き♡
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ