料理以外に私が出来ること
Tバック? って紐みたいなパンツの? まさか……はは、まぁ何かの聞き間違いだろう。うん、多分聞き間違いだ。
「ゴメン、何て?」
「Tバック穿いてるっ」
聞き間違いじゃなかったーーっ。はぁーっ、何でそんなの穿いてるんだあ!?
「何でそんなパンツ穿いてんだよ!?」
「ちょっ馬鹿。声が大きいわよっ!」
「おまっ、学校の制服の下にそんないかがわしい……」
「気になる?」
「……」
気にならないと言えば嘘になる。このムラムラしている状況でそんな話されては正直興奮する。しかし相手が……、
「何?」
香織が満面の笑みでこっちを見る。いや、駄目だ。香織に欲情するなんてどうかしてるっ。
「気になるか馬鹿っ!」
ふーんと彼女はそっぽを向く。……たく。香織の奴何考えているか全く分からん。そして僕達はしばらく無言で帰って僕のうちが見えてきた辺りで、
「洋平」
「何だよ?」
「明日も料理楽しみにしといてねっ」
「お、おう」
普通の返事が来て拍子抜けした……と思ったら、
「料理以外にしてあげれることある?」
「え?」
彼女は突然そんなことを言う。何かしてくれるって一体何をしてくれるんだ? うーんとしばらく考えてみて、
「そ、掃除とか?」
そう言うと彼女の顔はぱあと明るくなり、
「じゃあ今から洋平ん家に行くねっ!」
「は?」
いやいや、そんな急に言われても困るんだけど!?
「いきなりは駄目だってっ! 部屋散らかってるしっ!」
「その為に掃除するんでしょ?」
「ぐっ……。あー、そうそうっ! お前は勉強、部活で忙しいのにその上僕の料理までしてくれているんだ! それ以上のことはしなくて良いよっ!」
「私、貴方の為にしたいのっ」
そんなこと言われて嬉しくない男子がこの世にいるだろうか? 答は否である。その上その幼馴染みが面倒くさがりなら尚更である。いや、待て。
「お前掃除苦手なのに、出来るのか?」
「洋平の為よ! 頑張れるわっ!」
彼女の熱意にたじろぎ、僕は考えて、
「はぁ、分かったよ。僕も軽く答えてしまった節があるし。はい、お願いします」
香織は嬉しそうな顔になり、僕は渋々彼女を家に入れ部屋に連れて行った。
「これは……」
彼女に引けを取らない程の散らかり様だ。
「あんた。人のこと言えないじゃないっ」
「面目ない……」
そして片付けを始めた。それから5分後。
「あーーーーー、無理ーー……」
彼女は直ぐにギブアップして床に項垂れた。
「何だよ。あんだけ啖呵切っといて全然出来ないじゃないかっ」
「だって私掃除苦手だしっ」
「……たく。もう良いよしなくて、しんどいだろ?」
「いや、もう少しだけさせて」
そして30分後。何とか収納は済んだ。
「おぉ、出来たなっ」
「はー、疲れたーっ」
香織は勢いよく僕のベッドに倒れた。
「!!?」
「うーん、ベッド気持ち良ー」
彼女はベッドで伸びをする。僕は再びドキッとした。
「おい、どけって」
「片付けしたんだからご褒美くらい頂戴よ~」
「何がご褒美だ。早く帰れっ」
「えー、ひどー」
僕は彼女を強引に引っ張って部屋から出した。僕の部屋は二階だから彼女を無理矢理下へ降ろす。
「いや、もう少しゆっくりしたいーっ」
「駄目だっ。降りてくれーっ」
そして階段の中央部辺りで何の拍子か彼女が足を滑らした。
「きゃっ」
「危なっ!」
どたどたどたどた~っ! 彼女を抱えながら階段を滑り降りてしまった。
「痛たたた……」
「洋平大丈夫?」
「いやいやお前こそケガはない……」
「どうしたの?」
「お前ー……」
「え?」
「下着は普通の白のパンツじゃないかっ! 何がTバックだ!!」
「ちょっとどこ見てんのよ、変態!」
「お前がケガしてないか、心配で見てたんだよ!! それが何だ!? ただのパンツだよ、白のパンツ! ったく。期待させやがって」
そういうと彼女は初めギョッとしたが、それからニヤリと笑う。
「何だよ?」
「Tバックを穿いてるのやっぱり期待したんだ」
「え? あっ」
しまった、ついっ! そして彼女は僕の耳元に近づけて囁いた。
「もうHね♪」
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