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幼馴染みの弁当

 僕は小谷(こたに)洋平、顔普通、成績普通、スポーツ普通の高校1年生だ。将来の目標も特になく、平々凡々と生きていけばと思うくらいだ。そんな僕には幼馴染みがいる。彼女は望月香織(もちづきかおり)、学校では容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能を鳴らしている。外見は背中まで伸びた綺麗で艶のかかった黒髪に、目はぱっちりとして眉毛と鼻がすっと伸びている。だから学校では『校内三人美女』の一人と言われている。そして料理も出来るから普通の男から見たら高嶺の花である。しかし僕は昔から彼女のことを知っているから良い面も悪い面も知っている。だから彼女に緊張せず普通に接する。周りの男子からはよく羨まれる。


「いいなー、こんな高嶺の花と仲良く出来て~っ」


 僕は香織を高嶺の花と一度も思ったことがないのでよく分からない。よっぽど加西(かさい)さんや山岸先輩の方が緊張する。彼女達は『校内三人美女』のうちの二人で加西さんは同級生で、山岸先輩は部活の先輩だ。

 加西さんはあまり関わりが少ないから詳しくはないが、香織と同じ部活でお互いレギュラー争いしているから切磋琢磨しているそうだ。数回くらいしか観たことないからあまり覚えてないが、少し茶色がかった髪でショートである。勉強は少々苦手らしい。

 一方、山岸先輩はバレー部のレギュラーで成績優秀で生徒副会長とこっちもまた高嶺の花と呼ばれている。容姿は肩まである綺麗な黒髪に目はキリッとして眉毛もシュッと伸びて美しい。彼女は僕にとって憧れの存在で尊敬すべき先輩だ。周りの友人に時々彼女の話をする。この日も、


「まじさーっ、山岸先輩のサーブ超格好良いんだけど。おい聞いているか、香織?」

「もうその話今日入れて3回目よっ!」

「だってあの試合の時のサーブは目に焼き付いて忘れられないんだよっ!」


 はぁ、と香織はつまらなさそうにため息を吐く。


「何だよーっ、いつもは楽しく話したりする癖に、山岸先輩の話になるとつまらなさそうにしてっ。面白くないか?」

「まぁ、あまり……ね」

「お前も見たら分かるぞっ!! 絶対すげーって思うからさっ!」


 彼女は黙る。


「本当、成績優秀で部活のレギュラーで生徒副会長っ! 何を取っても非の打ち所がない先輩は本当に雲の上の存在だ」

「私もほら、周りから『高嶺の花』って呼ばれているし」

「お前はほら、周りには完璧に見せてるだけで本当は……」


 香織は僕の口を抑え赤面しながら、


「わーっ、言わないでーっ。周りにバレたらどうするのよ!?」

「まあ、別にバレてもいいんじゃないの? だらしなくて面倒くさがりでネトゲの住人くらいは?」

「ちょっと!! 言わなくていいって!!」


 彼女は目をキョロキョロしながら、ぷんすかする。


「お前なんてそんな典型的に俗な人間なんだから山岸先輩と比べものにならないよっ」

「……」


 彼女は黙ってむすっとする。全く可愛くない奴だ。この前だってこいつの部屋に行くと服や下着が散乱していた。


「恥ずかしくないのか?」


 と問うと、洋平だからでお終いだ。他にも……、


「……洋平、洋平ってばっ!」

「あんだよっ!?」

「あんたにとって山岸先輩ってどういう存在なの? 好きなの?」

「そりゃあ嫌いではない」


 そういうと彼女は眉毛を下げた。


「……好きというか、まぁ憧れの存在だな」


 そして彼女はふーんと言って学校に着くまで黙ったままだった。

 クラスは共に同じで中学を含めるとこれで3連続だ。だから彼女の学校生活を嫌というほど知っている。男女問わずいつもグループの中心でコミュ力高そうな連中と話している所謂陽キャだ。一方僕は成績が上がらないって分かりつつも勉強したり、本読んだり、少し根暗な連中と話をする。所謂陰キャです、はい。

 そして学校が終わり、僕は部活に向かっていると珍しく香織が付いてきた。


「どうした香織?」

「別に偶々体育館に向かっているのよ」

「いやいや、お前はいつも反対方向に行くだろ!?」

「まぁ、良いじゃない。偶にはこっちの気分なの」

「もしや、山岸先輩のサーブを見たくなったか? そうかそうか。それなら見学したら良いんじゃないか?」

「別に()()()()!」


 そして彼女は体育館に入らずにドアの片隅に隠れた。


「おい、入ってこないのか?」

「ここで良い」


 あと、と彼女は言葉を続ける。


「私が来たのは黙っててね」


 部活が始まると、色んな声が飛び交う。そして女子の休憩中は彼女達が男子バレーを見る。なぜなら弱小だからだ。


「小谷君もう少し周りを見て!」

「はいっ!」


 僕は特に山岸先輩によく注意される。そして部活を終えると、


「小谷君お疲れ~」

「はい、お疲れ様ですっ」

「もう少し肘をこう使った方が良い」

「はい」


 彼女から色々触られるものだから僕はついドキマギする。そしてそれが終わり体育館を出ると香織は既にいなかった。

 そして20時ごろ部屋でくつろいでいると、香織から連絡があった。

『明日から私が洋平の弁当作るからお母様に伝えといて』

『どうして急に?』

 少し時間がかかって、

『作りたくなったから』

 そして母さんに伝えると、


「私も楽になって助かるわっ」


 と言って早々に承諾した。香織はかなりの料理上手で料理オタクだ。暇さえあれば、料理の本を読んでいる。彼女の料理はかなり美味しい。そして翌日。


「はいこれ」

「おう」


 彼女から弁当を貰う。三段の弁当箱だった。


「中身は何?」

「そ、それは開けてからの秘密よ」

「?」


 なぜか彼女は少し顔を赤らめた。

 そして昼休みになり楽しみだった弁当を開けてみると、僕の好きな唐揚げとハンバーグ……やけに香ばしいニンニクの香りがする。そして二段目を見ると、おぉ流石は幼馴染みだ、僕の好きな青椒肉絲(チンジャオロースー)が入っている。よく僕の好みを熟知して……その隣には卵焼きなんだが、卵焼きの方が青椒肉絲よりも面積大きいんだけど、どうして?

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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