5/神からの贖罪
どうもはじめまして、かいみん珈琲です。
こちらのサイトに投稿は初めてですが、よろしくお願いします。
作品の紹介として、
作風として『ゾンビらしくないゾンビ』×『死生観』というテーマです。
あくまでもゾンビ風にしているので、スプラッタなシーンは少ないです(笑)
表現もソフトにしています。
温かく完結まで見守っていただけたら幸いです。
●テストラント(街中)
エインはコレットを連れて、彼の自宅へ向かう。
彼らの他に、メメントの姿はない。
あれから自室にこもっりきりだ。
誘ってはみたが、部屋からの返事は皆無だった。
だから仕方ない、と。
エインとコレットで彼の自宅に足を運んでいる。
「あの女の人、大っ嫌い!」
と、震えた涙声も落ち着てきたようだ。
目元はまだ腫れているが、次第に収まるだろう。
エイン、微笑みながら左手でコレットの頭を撫でる。
「あれでもイイところは一応あるんだよ?」
言葉は乱暴だけど、優しい性格である事。
ものぐさで出不精だけど、いざという時は率先的な事。
何より、兄想いな良い妹である事。
それらを口にしても、あまり実感がわかないのか。
コレットは終始、疑いの眼差し。
道中ずっと納得はしなかった。
●コレットの自宅
扉越しからでも漂ってくる、異臭。
鼻をおさえた手を扉のノブにかける。
カギはかかっていなかったので、容易く入る事ができた。
しかし、まず目を疑ったのは麻薬が散乱したその有様。
玄関先から居間にかけて、麻薬を包んでいた紙袋が落ちている。
エイン、それを踏みつけて居間へと進む。
すると、そこにはひげ面の男性が座り込んでいる。
「父さんッ!?」
コレットの父だ。
彼は壊れたオルゴールのように小さく嗤い続けている。
目に光がなく、焦点も合わない。
呼びかけても、身体を揺すっても反応は乏しい。
奥にある扉からも、声が漏れている。
コレットを父につかせて、エインはその部屋へと入る。
――またもや言葉を失った。
コレットの母だろう。
若い女性が自らの腕に、何度もナイフを振り下ろしていたのだ。
ベッドや床は深紅に染まり、青白い母親がより際立つ。
一心不乱にナイフを下ろす。
そしてえぐりながらナイフを抜き、また下ろす。
それを楽しむかのように、口元が歪む。
「――そこのお前、今は禊の最中だ。身を清めていない外界の者は部屋に入るな!」
と、背後から喪服姿の男が3人。
その1人はコレットを羽交い絞めにしている。
「離せっ、離してッ!! 父さん! 母さん!」
「クソガキめ、手間かけさせやがって……くそッ!」
「おい、そのガキはどのみち禊のやり直しだ。キヨの粉を与えて、支部の独房でおとなしくさせとけ」
キヨの実。
麻薬の原料にもなっている植物の1種である。
乾燥させて粉末にするモノを摂取する事で、幻覚や意識障害を引き起こす。
「ここの夫婦はどうします?」
「ああ、そっちは禊もイイ具合になってる。女は出血死、男もいずれ死ぬだろ。放っておけ」
「キヨの粉に身も心も清められた愛し合う夫婦に、死後の世界での祝福を――」
と、誰がいったのか。
それに倣い、左手を胸に当て黙とうする男達。
その風貌や言動から”死済教”の信者に間違いはないだろう。
「――その子を離して、どこかに消えろ」
「拒否する。この子供も我が”死済教”の信者だ。この世の罪を贖い、救済される権利がある」
「――麻薬で思考を鈍らせて、自殺に追い込む。それが人間にとって救済なのか?」
男達は皆、嘲笑をこらえながら頷く。
「そうとも。人は死を恐れると同時に生きる事に苦悩する」
「長い人生の中、刹那の死よりも生き長らえる事が辛く、苦しいのは明白。生きる限り、そうした苦痛が絶え間なく続くのだ」
「そう、生を享受する事こそ人にとっての悪である。そして、生命こそ神から与えられた贖罪であると我々は理解する」
「前世の罪を払拭するために生きる事を強要する神は、神ではない。人に希望を与えてくれる希望こそ神なのだ」
「我々の司教様は、死という重圧から解き放ってくれる神との繋がりがある」
「神こそは人の味方であり、救いの手を差し伸べる希望である。我々は死後、そんな神々の世界へと悩める人々を誘っているのだ」
「御託はいい。早くそこを――」
横目にベッドに倒れた母親を見る。
気を失っているのか、ナイフが手からこぼれて床に転がっていた。
手足の痙攣が止まらず、その都度、血溜まりに波紋ができる。
――どうにかして医者に見せなければいけない。
とは思いつつ、部屋や居間への道を塞がれてはどうしようもない。
「――ったく。世話焼ける兄さんだこと」
刹那、親しんだ声の主が喪服の1人を蹴り飛ばした。
ここまで読了、ありがとうございました。
文字ボリュームはどうでしたか?
個人的に投稿していく中で気を付ける点として、以下の通りです。
・文字のボリューム(1000~1500文字程度)
・矛盾点があれば、その都度リライト(修正)
・擬音語や擬態語、抽象的な表現はできるだけ出さない
・ダラダラした、尺を長くする描写を控える
もし何かありましたら、コメントしていただけると参考になります。