4/弱虫の言い訳
どうもはじめまして、かいみん珈琲です。
こちらのサイトに投稿は初めてですが、よろしくお願いします。
作品の紹介として、
作風として『ゾンビらしくないゾンビ』×『死生観』というテーマです。
あくまでもゾンビ風にしているので、スプラッタなシーンは少ないです(笑)
表現もソフトにしています。
温かく完結まで見守っていただけたら幸いです。
●ヒルデ墓所
1度、朝食をとった後。
エインとメメントは保護した少年から事情を聞く。
少年の名前はコレット。
今年で10歳。
生まれてずっとこの街に両親と共に住んでいる。
だが最近、両親がある宗教に執心するようになった。
コレットにも強いるようになっていった事。
両親や自分が外に出ようとすると、喪服の男達が咎めてくる事。
そして、なんとか男達から逃げ出してきた事。
――と、コレットは止めどない想いを言葉にする。
それをただただ、聞き入れる2人の兄妹。
メメント、足を組んでソファに腰かけている。
片や、エインはその後ろで佇んで見守る。
――助けてあげたい。
皮切りはエインだった。
だが、メメントは即座に異を唱える。
「私は反対。それって最近、街を騒がせてる”死済教”ってやつだろ? 奴らが絡むとロクな事がない。私は骨折り損は嫌いだよ」
”死救済”とは『死こそ救済である』と唱える異教徒である。
この街は港街に近く、貿易を主軸に栄えてきた。
しかし、ここ数年。
別の大陸から布教を目的とした宗教団体も、流れ込んできたのだ。
――生きる事こそ、前世で成した贖罪。神への冒涜。
――死ぬ事こそ、尊い神への信仰。唯一の救いである。
と、司教や教徒は皆、神の啓示であると豪語する。
「噂じゃ街の中央にドでかい支部を立てて、わが物顔で信者達が街を歩いてるって話だ。それに……」
「……それに?」
メメント、流し目に少年を見やる。
「”死済教”の手口は、麻薬で信者を無気力にする事。この子の両親はまんまとその手口にはまっちまってる可能性が高い」
「麻薬って……穏やかじゃないね……」
「ああ。信者は通例の儀式として、死への恐怖を薄めるんだ。おそらく監視でもついてるんだろうな、追ってきた男達がいい例だ」
通例の儀式。
それは禊と呼ばれ、生命を手放す前準備である。
考える事を手放した信者はそうして自ら命を絶つ。
絶てば、自分自身は神の元へ召されるからだ。
人は皆、苦行の中を生きている。
人生を手放す事で、安寧や苦行から解き放たれる。
「――って信者をだましている寸法。しかも、この辺の領主も信者になって誘致してるから質が悪い。良い噂は聞いた事もない。」
だから立ち向かうだけ分が悪い、といい放つメメント。
貧乏ゆすりをする彼女や、表情が険しくなるエイン。
「……父さんも母さんも……助けられないの……ねぇ?」
会話の全部を理解していなくとも、なんとなく察してしまった。
コレット、次第に涙をためていく。
メメント、大袈裟にため息も漏らす。
「おいガキ。泣いてもお前の父ちゃん母ちゃんは治らねぇぞ。つか泣けばいいってもんじゃねぇ」
たしなめるような啖呵。
「……死んじゃうの? 父さんも母さんも……このままだと死んじゃ、うの……?」
だが、それが余計に拍車をかけてしまう。
少年、震えた泣き声が出始める。
「どうっ、すればいい、の……? ボクはッ、どうすれ、ばっ……!?」
メメント、いらだってタバコに手が伸びるが、空を掴む。
浮いた手を戻し、腕を組む。
「はぁ……なぁガキ……」
「ガ、キ……じゃない。コレット、名前……っコレット……」
「んじゃコレット。お前、虫がよすぎだぜ?」
ふざけんな、と言葉が荒くなる。
「自分じゃない誰かが助けてくれると思ってるのか? んで助けてくれないとわかったら、自分のやる事を他人に聞くのか?」
「で、もっ! ボ、ボクじゃなんにも、でき、ないよ……っ!」
「できない? そりゃ言い訳だ。目の前の事に必死になってない弱虫の言い訳だよ」
「ボ、クは……よわ、むしじゃ……っ……ないッ!」
「んなわけないだろ。自分の意思も他人任せ! 流されるだけで待つだけ! それじゃ死体と同じだぜ!?」
「――メメント、いいすぎだよ」
エイン、少年を責める妹の肩を掴む。
鼻を鳴らして、その手を振り払うメメント。
速足で自室へ入っていく。
「――本当に何も考えようとしない。だからガキは嫌いなんだ」
と、扉の閉まる音が居間にこだました。
ここまで読了、ありがとうございました。
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・文字のボリューム(1000~1500文字程度)
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・擬音語や擬態語、抽象的な表現はできるだけ出さない
・ダラダラした、尺を長くする描写を控える
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