一人ぼっちの怪物とリベルフィリア
陽が落ちると、辺りはきらきらと蝋燭の灯りで輝き始めた。
リベルフィリアの夜になると、騎士達が、ファーシタルの王宮のあちこちに置かれた蝋燭に魔術の火を灯す。
祝祭飾りの木やリースはいっそうに煌き、雪景色の中にその輝きと影が落ちれば万華鏡のような祝祭の夜の出来上がりだ。
はらはらと舞い落ちる雪は詩的な美しさで、幸いにも風はなかった。
どこからか、聖歌を歌う子供達の声が聞こえてきた。
きっと教会の大聖堂では、今まさにリベルフィリアのミサが行われているのだろう。
家族で過ごす祝祭であるリベルフィリアだが、朝と夜には教会のミサがある。
ディアの大好きな美しい大聖堂の中には、香木を焚いた香炉が吊り下げられ、ステンドグラスの影の中で聞く司教の祈りの声はさぞかし美しいだろう。
ファーシタルの教会に祀られているのは、外の国々の教会の主柱と同じ修復を司る聖女だ。
真っ白な鹿の角を持っていたその乙女は、修復を司り弟子達と共に巡礼の旅を続けた聖人である。
だが、教えを説いて回る旅の途中で悪しき禍いの獣の迫害を受け、その最期は、町一つを崩壊させ一面を白百合の花畑に変えたと言う。
だが、その話をディルヴィエにしたところ、夜明かりの妖精は眉を顰めて首を横に振った。
「そちらの聖女は魔物ですよ」
「……………まぁ、人間ではないのですね」
「修復を司るのですから、それを成せるということはもう人間ではないでしょう」
「……むむ」
「彼女は召喚をかけた人間と寄り添った者で、その最期は契約者である青年と恋に落ち、結ばれようとしたもののそれが叶わずに崩壊したのです」
初めて聞く聖典の真実に、ディアは目を丸くした。
となると、これまで信仰してきたものは、魔物と人間の業務提携の旅路であり、一人の魔物の恋の顛末でもあるのだった。
(でも、…………そう知った方が、私は前よりも聖女様が好きになれそうだわ…………)
沢山の奇跡や救いを齎したそのひとも、愛する人と生きゆく為に悩んだりしたのだろうか。
どうして結ばれる事が出来なかったのかと眉を下げると、ディルヴィエはその顛末の原因を教えてくれる。
「人間と人外者とでは、根本的な体の作りが違います。この世界で、唯一人間だけは生来の魔術を持ちません。その代わりに体に魔術を通して扱う魔術回路を持ち、その上限を示したのが魔術所有値となるのは既に履修済みですね?」
「ええ。その際の、魔術侵食への耐性が、魔術抵抗値になるのですよね?」
ファーシタルには、その抵抗値という言葉は存在していなかった。
土地の魔術が薄いので必要とされる場面がなく、また、その言葉を残しておくことは、得られないものは無かったことにしてしまうファーシタルの民には耐えられないことだったのかもしれない。
ディアが抵抗値という言葉を知ったのは、ノインが教えてくれたからだ。
当初のノインからは、二人の契約がディアの身に馴染んできた事で、そしてノインが度々訪れた事で、ディアの生活棟の周辺の魔術基盤の調整がついたのだと言われていた。
だが、昨日、双方の誤解を解いた結果、かやの木の下で蹲ってしまったディルヴィエに言わせると、ノインの作るものを食べ続けたディアの体が抵抗値を上げたことで、近くに人ならざる者達が増えても悪い影響が出なくなったという事であるらしい。
「人間と番う場合、或いは特定の人間を気に入って手元に置いたり自分達の国に招き入れる際には、人間が我々の持つ魔術に損なわれないようにする為の工夫が必要になります」
「それが、ノインの場合は食事だったのですね」
「精霊は皆、食事で取り込むのが一般的でしょうね。その上で、系譜ごとに指輪や首飾りなどの伴侶の証を贈ります。ですが、ノイン様は特別でもありますよ。あの方程に料理に長けたものは高位の精霊の中でも少ないでしょう。大抵の精霊は、育てた果実を与えたり、小さな焼き菓子や砂糖菓子などを与えるそうですから。また、系譜の王や貴族達は、臣下が作った食べ物を与える事も多い」
(そうか。だから教会のあの絵には、ご馳走を載せたテーブルと、精霊が描かれていたのだわ…………)
そう考えたディアは、はっとして、こくりと喉を鳴らした。
あの絵画は連作で、他の人外者達のものもあるのだ。
となると、信仰を妨げる人間の欲を人外者達の誘惑に当て嵌めて描いたように見せつつ、本来の意味はそちら側の領域に向かう事こそを罪として戒めたものなのだろうか。
(だとすれば、ジラスフィへの粛清への罪悪感の無さは、この国の成り立ちから成されてきた教育や信仰の所為という側面もあるのだろうか…………)
「もしかして、妖精さんはダンスでそうなさるのですか?」
「ええ。我々はダンスと、……もう少し踏み込んだ意味合いも持ちますが、そのようなもので。魔物は自らの魔術を切り出した指輪を贈ります」
「……………竜は」
「竜については、番う事に耐えられる強靭な肉体が求められるので、その基準に届かないとなれば、鍛錬を積ませたり、魔術の階位を上げる為に冒険などを経て祝福を集めたりする事になるでしょうね」
「………思っていた以上に修行感満載でした。だから、ファーシタルにある戒めの絵画には、竜は力という主題の絵が残されていたのですね………」
そうか。
それでなのかと、ディアはまたここで一つの理解を得る。
(……………ファーシタルの人間にとっては、それこそが最も忌むべき、………望んではいけない罪だったのだ。なぜならば彼等は存在する筈がなく、それはもうファーシタルの民には叶えられない願いであるのだから………)
聖女を祀ったものが教会であるが、同時にあの聖堂は、人ならざる者達と過ごした日々を絶ち、それをおとぎ話に封じ込める為の装置でもあったに違いない。
そこに残された形は、信仰そのものを尊ぶものばかりではなく、人間の為に作り上げられた信仰とも言えるのだろう。
「………聖女様は、お相手に指輪を贈るのを忘れてしまったのでしょうか?」
「いえ、贈り続けてはいたのでしょう。幾つもの指輪を少しずつ体に馴染ませ、けれども、もういいだろうと思ったところで体を繋げたものの足りなかった。愛する事で相手を殺すという顛末は、これ以上ない悲劇です」
その言葉に頷き、ディアは窓の向こう側を眺めた。
どこから持ってきたものか、ディルヴィエの手で用意された晩餐は、どれも素晴らしいものであった。
ディア用にと届けられた王宮の料理は、すぐ側で細長いタオルのような夜雲雀がむしゃむしゃがつがつと食べている。
時折、こてんと横倒しになるのは、どうやら雪水仙の蜜の毒が入っているかららしい。
とは言え、その刺激も美味しくいただけるそうで、またすぐに起き上がるとがつがつと食事を再開するのだった。
にゃーんと鳴くタオルの食事風景なので、じっと見ていると若干心が不安定になりかけてしまい、ディアは慌てて視線を目の前の料理に戻す。
ほこほこと湯気を立てているのは、キノコのクリームスープで、一口飲むとその美味しさにむぐっと目を丸くしてしまう程だ。
とろりとしたソースをかけたローストビーフは柔らかく、添えられたのはジャガイモの小さなチーズグラタンと、宝石のようなカットの人参のグラッセ。
グラタンの上には食べられる花が飾られていて、一口で食べると檸檬のような爽やかな風味であった。
まだ温かい焼き栗や揚げた茄子などが入っているサラダには、ドレッシングの他に乾燥させた苺を砕いたものがぱらりとかけられ彩りになっている。
燻製にした鮭のムースと冬野菜にフェンネルのクリームを盛り付けた前菜は、コンソメのジュレを散らしてまるで可憐なケーキのようだ。
どの料理もとても美味しかった。
お腹がいっぱいになる幸福感は例えようのないものであったし、ディルヴィエ曰く、この料理は全てノインの作ったものであるらしい。
だが、この最後の夜に。
そしてディアの大好きなリベルフィリアの夜に、やはりノインはここにはいないのだった。
「ケーキはもう宜しいですか?」
「ふぁぐ。…………もう二個も食べてしまいました」
「では、紅茶をお淹れしましょう」
微笑んだディルヴィエが紅茶を淹れてくれたので、ディアは、また初めましての美味しい紅茶に出会う。
だが、やがてお皿の上のケーキも無くなってしまい、ディアは、明日の舞踏会の為にも、入浴して就寝の準備をしなければいけなくなった。
(……………私は、復讐をするのだから)
それは、大好きな王子様よりも復讐を選んだディアが、最も優先させるべきもの。
そして、今夜は本来ならその事ばかりを考えていなければならない夜だ。
当初の予定では、祝祭飾りの木を見たりしながらリベルフィリア気分を堪能してしまい、きっと訪ねて来るだろうノインと少しお喋りをしたら、後はもう明日のおさらいをして過ごす筈だった。
ディアが殺されるのが明日だからこそ、この日はきっとノインが来てくれるだろうと信じ、最後の贅沢になるのかなと、結果としてはリベルフィリアを大好きなノインと過ごせる事にわくわくしていたのだ。
(だから、私は狡いのだわ………)
ディアは、最後まで家族を優先させた。
あの嵐の夜にも家族を助ける事を優先させてしまい、今回も、復讐をする為には明日の夜まで生き延びておかねばならず、ノインにこの想いを告げる事は出来ない。
そんな風に全てを自分の思い通りにしておいて、けれどもリベルフィリアの夜にノインに会いたかっただなんて、どれだけの我が儘だろう。
(死者が亡霊となって地上に上がれるのは、死者の日だけだから、私はもうリベルフィリアを見る事は出来ないのだ)
もう最後なのにと、そんな風に悲しくなるのもまた、ディアだけの身勝手な思いなのだった。
だからディアは、余分な我が儘をぎゅっと噛み締め、こうして胸が苦しいのは我が儘が過ぎる自分のせいなのだとぎざぎざした心の欠片を飲み込んだ。
ゆっくりと、刻々と夜が更けてゆく。
窓の外の美しさはおとぎ話の様相で、入浴しても部屋に人がいるという不思議さに落ち着かなくそわそわしながら、ディルヴィエに髪の毛を乾かすのを手伝って貰い、顔の肌には丁寧に化粧水とクリームを塗り込まれた。
リベルフィリアの為にと着たお気に入りのドレスはもう脱いでしまったし、結い上げていた長い髪は下ろしていて、テーブルの上の晩餐は綺麗に平らげてしまい片付けられた。
「では、私は下がらせていただきますが、もし何かございましたら、名前をお呼び下さい」
「はい。本日も有難うございました。後はもう眠るだけですので、どうぞゆっくり休まれて下さいね」
ディルヴィエが下がると、広い部屋の中はしんとした。
窓の外がどうしても見ていたいからと、カーテンは少しだけ開けておいて貰っている。
時計の針が真夜中を過ぎれば、庭園を飾る蝋燭の火は消されてしまい、明日の朝までに全ての飾りは外されてしまう。
もうほんの二刻ほどだけの猶予のリベルフィリアの最後の時間を、ディアは、なぜだか懐かしさを感じる静けさの中で過ごしていた。
(明日の夜に、私は殺される)
ここまでの日々を経てもディアは家族を殺した人達を許すことは出来ず、それは同時に、この国の人達にとってもやはりディアが必要だとは思えなかった十三年でもあった。
明日の舞踏会で彼等に齎すべき復讐のナイフは選んであるが、それ迄に考えた様々な手段を思い浮かべてみる。
残念ながら、協力者には恵まれなかった。
ジラスフィの粛清に関わった者達も、さすがにそのくらいの警戒はしていたようで、現在の国の在り方に不満を持っているような者達に、ディアが接触出来るような機会は得られなかったのだ。
(そもそも、私が復讐を考えるのは、ただの私怨だもの。結果として、王家の選択は間違っていて、この国は人ならざるものの禁忌に触れてしまったけれど、それはあくまでも結果に過ぎない。大義はないに等しい私が、何かの活動の旗印になったり、その運動に参加したりするのは難しかったのではないだろうか)
だからディアは、結局一人だった。
それでも、第一王子妃として成婚となってしまうのなら、その立場から国に大きな不利益を与える不手際を演じても良かったし、水差しに毒を入れられてから、同じような毒物を扱う事を考え、毒の入っていた水差しの水を取って置いたこともある。
(でも今は、…………私は私をナイフに出来る。私がいなくなれば、この国がどのような禁忌に触れたのかを知る者がいなくなり、この身を以て、私は彼等がより深い障りを受けるのであろう政策への舵取りとなるだろう………)
それは、ノインという人外者に再会出来たからこそ、復讐の手段に出来たものであった。
人ならざるもののことを知ったからこそ、それが災いを呼ぶと確信出来るのだ。
一方で、ノインとのことはどうだろう。
ディルヴィエが誤解を解いてくれたとしても、彼はやはり高位の精霊だ。
約束は確かに破られているのだから、ディアが正式に謝罪をしない限りは何かを改めてという話にはならないのだろうし、リカルドやこの国の人達がディアを殺す舞台を愉快に鑑賞するという悪趣味さを示している以上は、彼はやはりディアを許さないと思うのが妥当だろう。
物語を教典とするのなら、飲むなと言われた泉の水を飲んだくらいでも愛する女性を呪い殺せるのが人外者達で、せめてもう少しの慈悲をと思うのはいつも、種属性の差を理解しない人間の勝手な言い分に過ぎない。
(……………だから私は、生きている間は望まないわ。やるべき復讐があるのだもの。それが例えノインであっても、やるべき事を終えるまでは殺される訳にはいかないのだ)
ぽつり、ぽつりと、静かな囁きや願いが心の水面に落ちてゆく。
断固とした決意があり、それを覆すような稚拙な願いがある。
迷い、首を振り、そしてまた迷う。
ゆらゆらと風に振り回される風見鶏のように心が揺れて、それでもやはり同じ場所に帰ってくる。
(本当にしたいことは、私にはもう出来ないこと)
からりと笑って復讐などは投げ捨ててしまい、自分を生かして、自分を甘やかす為の都合のいい選択肢だけを残してみたい。
それはきっととても普通で、罪悪感はあっても素敵なことだろう。
でも、ディアはもう普通ではないのだ。
また一人、更に一人と、愛する人達が無残に倒れてゆくどすんという音を聞きながら、あの嵐の日にディアのどこかが手の施しようのないくらいに壊れてしまった。
だからここから逃げ出したくて堪らなくても、やはりディアは復讐の戸口に戻って来てしまう。
何度でも、何度でも。
それはまるで、悪夢の中の迷路のように。
そしてその度に、ただ一人の自分の為に多くの人達を破滅させんとする己の残忍さと醜さを、鏡の中に怪物を見るようにして突き付けられるのだ。
「……………っ、」
窓の外から、美しい夜の庭園を見下ろす。
夜のその美しさに身を浸す度、ディアはとても大切なものに寄り添うような安堵と胸の痛みを覚え、自らの罪と向かい合い、それでもやはり夜が好きだった。
先程まであんなに美味しいものを食べ、美しい妖精が淹れてくれた紅茶を飲んでいたのに、なぜ心のどこかに穴が空いているのだろう。
そこから、貯めたばかりの幸福感がさらさらと流れ落ちて行ってしまうのは、やはり今夜が最後のリベルフィリアだからだろうか。
震えた息を吸い込み、奥歯を噛み締める。
けれども、慌てて涙が零れないように心を空っぽにしても、胸が潰れるような苦しみが押し寄せた。
「……………っ、っく」
それはとてもとても孤独な夜で、ディアは、声を押し殺して沢山泣いた。
しゃくりあげ咽び泣き、誰もいない広い夜菫の棟のディアの鳥籠の中で、子供のように泣いた。
けれど沢山泣いていると疲れてしまい、最後には寝台の下に隠し持っていた美味しいビスケットを一枚食べて終わりにする。
これは、ムクモゴリス用に騎士から貰ったものなので、ディアが安心して食べられる唯一の備蓄食料だったのだ。
惨めで寂しい人生の終幕には、あまりにも侘しい、そしていつもの夜だった。
「ディア」
もう寝るのだと、目をごしごし擦ってから寝室に向かおうとしたディアは、ふいに後ろからふわりと抱き締められた。
そろりと振り返れば、そこにいたのはノインだった。
(ノイン…………?)
ひくりと息を飲み込み、ディアはゆっくりと瞬きする。
見間違いではないかどうか、ぎゅっと抱き締められた腕の温度を確かめるようにそこに手をかけ、更にぎゅっと抱き締められると、言葉に出来ない荒々しい感情のうねりで胸がいっぱいになった。
「今夜はリベルフィリアだからな、少しくらい夜更かしするか」
「……………ふぁい」
「お前が、俺に抱えられたままでいると約束をするのなら、外の国のリベルフィリアの祝祭に連れて行ってやってもいいが、どうする?」
「い、行きます!!」
「……………よし。それならまずは着替えだな」
ふわりと持ち上げられ、こつんとおでこを合わされると、ディアはどきどきするような甘い胸の高鳴りではなく、お腹の底から冷たくて悲しいものを剥がして落とすような安堵の溜め息を吐いた。
じわっと滲んでしまった涙を煩わしがるのではなく、なぜかノインは小さく笑うと、ディアのおでこに口づけを一つ落とす。
「……………ノイン?」
「いいか、ディア。明日の舞踏会では、俺もディルヴィエも隣にはいないが、それでも契約も守護もお前の手の中にある。俺は精霊だからな、人間のような倫理観は持たない。心置きなくやれ。今はこれしか言ってやれんが、………さすがに明日には、土地の契約調整も含めこちら側の手続きも終わるだろう」
「それは………、」
「お前の物語を終わらせる迄は、見届けてやる。俺がお前から得る対価が死の領域に結びつかなくなったら、その時にはこちら側に来い。現状では、俺自身が司るものの顛末に紐付く結実や満了の資質も、死と結びやすいからな………」
ひくりと目元が震え、ディアの見開いた瞳からぽろぽろと涙が零れた。
ディアをくるりと振り返らせてそれでも腕の中に収めているノインは、機嫌良く微笑んでいるというよりも、どこか祈るような眼差しだった。
(実は、言われている事はよく分からない…………)
それが精霊の言葉なあまりディアには少しだけ難解で、その難解さこそが理解を妨げていた。
でも、それでも良かった。
ここにノインがいて、リベルフィリアがまだ終わっていないから。
それだけで充分に幸せで、その先の事はもうどうでも良かった。
「……………ふむ、こんなものか」
「まぁ、………知らない間に着替えています」
「時間がないから、今夜は特別だ。さぁ、出かけるぞ。手を離すなよ」
「……………はい」
大好きな夜の国の王様に子供のように抱き抱えられながら、ぎゅっとしがみついた。
窓を開ければ、はらはらと吹き込む雪がある。
そこから見えたファーシタルの王宮の大きな祝祭飾りの木を一瞥すると、ノインはふんと鼻を鳴らした。
これから向かう町のリベルフィリアのかやの木を見たら、こんなものは祝祭飾りの木の内に入らなくなるぞと自信満々で言われ、ディアは小さく微笑んだ。




