【第一章】お芝居の始まり
目の前に広がる火の海。あちこちに広がる瀕死の人間。その中で懸命に戦う月野朝陽。
「きりがないな…これだと」
ふと。家の方に目をやると妹が怯えて家から出てきているのを確認した。背後からの黒い影と共に。
俺は死ぬ気で妹の方へ走る。そして…
―パリンッ
俺は次の瞬間、妹を助けた代わりに『力』を失った。
「起きてよ。朝陽お兄ちゃん。ねぇ、起きてっ!」
勢いよく起きた俺。また、夢を見ていたようだ。時々見るあの夢。忘れられない夢。
「お兄ちゃん、今日朝早くから教えてくれるって言ったよね?実里、忘れてないからねっ!」
彼女は月野実里。一様、年齢は14歳で俺の妹。
「朝陽、実里の言う通りよ、早く支度してくれる?私も決して暇じゃないの。」
そして、月野千穂。実里の双子の姉で俺にあたる姉。
「朝陽が言い出した事でしょ?早く、着替えて行きましょ。」
「全く、お姉様は容赦ねぇな。実里はあんなに大はしゃぎだぜ?千穂姉様も少しは―」
「私も十分喜んでるわ。父様や母様にお話を聞いていたから。」
千穂の顔は喜んではなさそうだが、これ以上千穂姉様を怒らせると何が起きるか分からない。これ以上は触れない方がよさそうな事に変わりはない。
「二人とも、意地張ってないで行こ~行こ~」
こうして、俺らは自室を後に、ある人の部屋へ向かった。
「千穂ちゃんと実里ちゃんもここで雇ってほしいですって!?」
実は、俺たちはある人に生活する場所をもらっている、その代わりに俺をここで働くという条件で。
「まぁ、たしかに。朝陽君は知ってると思うけど、月野神社はかなり人手が足りてないし敷地もそれなりだし。有難いけど…」
「大丈夫!紬さん、実里達の事は心配無用!」
実里はほら見て、と魔法を見している。
「実里、勘違いしてるみたいだが仕事場での魔法の使用は禁止だぞ。」
「えっ!」
「えっ…」
俺の発言に千穂と実里が驚く。
「朝陽、私魔法を使わないで暮らした事がないんだけど…」
千穂は恥ずかしそうに聞いてくる。
「知ってるよ。だから、提案したの!二人とも魔法が使えないって言ったら絶対来ないじゃん。」
確かに…と口を揃える双子。
「朝陽君、なんでこんな提案を?」
紬さんが聞いてくる。確かに、今までの俺だったらそんな事絶対言い出さないはずだ。
「俺、最近夢に出てくるんです。『悪女狩り』の光景が」
悪女狩―世の中魔法使いはひどく批判を受けていて差別用語も飛び回ってるぐらいだ。ある有名な事件、一人の少女がいた。その少女は学校で虐められており、遂に溜まった怒りが彼女を支配した。
そして、彼女はある男子生徒に魔法を放つ…。そして、男は命を絶ってしまった。その、事件が有名になり魔法使いは『目に見えない武器を持った殺人鬼』世間から呼ばれてしまっている。そして、このような事例が二度と起きないように政府は魔法使いを見つけ次第…
「俺、仮に俺らが見つかって紬さんに迷惑かけたりするのだって、千穂姉様や実里が捕まるのだって見たくない。だから、この提案をして魔法を一度離した生活をしてほしいんだ。彼女たちは『トクベツ』だから」
「そうね。それなら私も少し考えてあげようかな?」
紬さんはそうゆうと奥から一冊のノートを持ってきた。