第一話:いつでも出会いは突然。
「じゃーな、マサトー」
「おう、じゃーなー」
何の変哲もない学校の帰り道。
部活を終えて、友人と別れて帰り道。
カバンからmp3プレイヤーを取り出し、イヤホンを耳にかける。
その瞬間、後ろから「あの・・」と声をかけられた。
石神 雅人。普通の16歳、高校1年聖の秋だった。
バレー部でそこそこ運動して、授業中はそこそこ転寝をして怒られて。
そこそこ可愛い女の子の話をして。
高校を出たら大学に行って、社会人になる。
「この世の中」の歯車のひとつになるのだと、自然と受け入れた。
そんな「普通の人生」を送る人間が世の中の大半だ。
他人と違う何か「特別」に憧れたときもあった。
そんな自分を今、激しく反省している今この瞬間。
「あの・・・私、死神のイルヴィーナと申します。なので、あなたの命を頂にきました!」
「・・・・・・・・・・はい?」
声をかけられて振り向いたそこには・・・。
自分よりも50cmは身長が低いと思われる女の子が立っていた。
小学生くらいだろうか。
ただ、その身なりは黒い布をまとい、手には大きな鎌を持っている。
マサトを見つめる目は真剣だ。
「えーっと・・・君、お母さんとかは・・・?」
聞いたことはなかったことにして、きょろきょろとあたりを見回す。
「えいっ」
大きな鎌が振り下ろされる。
「うわっ・・」
とっさにマサトはよける。
ザシュっと重そうな音とともに、鎌はコンクリートの道路に突き刺さる。
「あ・・」
どうやら抜けないらしい。
「えーっと・・・・・じゃ、そういうことで!」
マサトは少女に背を向けて一目散に走り出した。
(何だ、今のは。)
(新手の通り魔か?!!)
(いや、何もなかった、俺は誰にも会っていない!!!!)
後ろを振り返ることなく、一人暮らしをするマンションまで全力疾走で駆け抜けた。
「はぁ・・・疲れた・・・」
息を整えながらマンションの2階へと階段を上がっていく。
運動部にかなり力を入れている私立稜蘭学園には、県外からの学生も多く、学校の近くには学生が一人暮らしできるようなマンションやアパートが多い。
マサトもそんな県外遠征組の一人だ。
「ったく・・・・何だったんだ・・」
階段を上りきると、ふと顔を上げる。
ドアの前に人影が一つ。
「な・・・」
人影と目が合う。
もちろんその人影はさきほどの小学生。
くるっと踵を返したとき、すぐ後ろにいた人にぶつかる。
「ぶ・・すいません」
「いえ・・」
ぶつかった人は、小学生と同じ黒い布を身にまとい、大きな鎌を持っていた。