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草原と雪山




 セオと奴隷を購入して教育することを話し合ってから一月余り、ダンジョンの階層が増え、薔薇の迷路もほぼ完成していた。

 ギルベルトが品種改良してくれた薔薇は、あらかじめ指示をしている通りに動いて、迷路の道を変えてくれるので、最初のうちは1週間に一回、道を変えてもらうことにした。

 冒険者の視点で迷路をチェックしてほしいけれど、当然ながら冒険者の知り合いなどいなくて、試しにと自分で迷路に挑戦して、しっかり迷子になってしまった。

 セオが迎えに来てくれてからは、すんなりと迷路を抜け出られたのだけど、猫精霊は方向感覚が優れているのかな?

 多分、私が方向音痴なわけではないはず。

 日本にいた頃は、ほとんど迷ったことがないのだから。

 もちろん、地図アプリは愛用していたけれど。

 迷路のほぼ中心に設置してある噴水のあるスペースは居心地がよくて、薔薇を眺めながらのんびりとお茶を飲むのは最高の気分だった。

 自動販売機はまだ設置していないけれど、そこまで雰囲気が壊れることがないように、箱の部分をテーブルや椅子と同じ白で塗装するのもいいかもしれない。




 迷路の次の層は、予定していた通り草原エリアにした。

 迷路の後だけに、ほとんど視界を遮るものがない一面の大草原は、解放感をより強く感じる。

 広大な草原のあちこちに、大小いくつもの落とし穴があって、深い穴の底には巨大スライムを配置する予定だ。

 穴に落ちた時に怪我などしないか確かめたかったので、落とし穴に落ちる実験をしてみたけれど、穴いっぱいに広がったスライムは素晴らしい弾力を持っていて、深い穴に落ちても、まるでトランポリンの上に落ちるみたいで、怪我をすることはなかった。

 この後スライムたちは、テイムスキル持ちの精霊に人を襲わないように調教してもらって、穴の底に住んでもらうことになっている。

 大きな体をしているけど狭いところが好きな子らしいので、落とし穴はいい住居のようだ。


 穴に落ちると、ペナルティで一定時間は出られなくなるけれど、代わりに採掘をすることができるようにした。

 運が良ければ宝石なども掘れるので、待っている間も退屈はしないだろう。

 決められた時間が過ぎると、穴の底を塞いでいたスライムが伸び上がって、穴の上まで運んでくれるので、安全に外に出られる仕組みだ。

 次の層に続く階段は、落とし穴の内の一つに設置してあるから、穴に落ちなければ次の層へ進むことができない。

 階段の場所は3日ごとに変わるので、膨大な数の落とし穴の中から次の層へ行くための階段を探すには、運と根気が必要だ。

 3日ですべての落とし穴を巡るのは大変かと思ったけれど、ここは複数のパーティが同時に挑戦できるから、あえて3日ごとに出口を変えることにした。

 階段の位置が変わる日は、階層の入り口にいる管理人に聞けば教えてくれるようになっているので、3日の期間を効率よく使って攻略できるように、2層目の入り口には待機用のコテージをいくつか設置した。

 近くには川が流れていて、釣りや水遊びなども楽しめるようにしてあるので、ぜひとものんびり過ごしていただきたい。

 コテージのテラスでは、バーベキューをすることもできるので、パーティメンバーとの親睦を深めるにもちょうどいいだろう。

 階段の位置が変わるのを待っている間に、他のパーティと話し合って連携を取ってもいいし、事前に落とし穴の場所をチェックしてパーティで分担してもいい。

 効率的な攻略方法は、考えればいくつもあるはずだ。

 管理人の住居も兼ねた宿では、管理人と話をして、ダンジョンの情報を集めることができるようにもなっているし、落とし穴に落ちている間に使う、採掘用のつるはしなどを購入することもできる。

 草原には薬草やハーブなども生えていて、それらを採集することもできるので、宿で買い取りもするようにした。

 宿での食事は有料なので、少しでも稼げるようにという配慮だ。

 宝箱に関しては、数は多めに設置してあるけれど、穴に落ちないと手に入れることができない。


 ダンジョン内での殺生を、一切なしにするかどうか悩んだのだけど、狩りがストレス発散になるのならと思って、食料になるという魔兎や魔猪、魔鹿などを配置することにした。

 魔物で固有の名前があるものは、最初から魔物として生まれた魔物、名前の前に魔とついている魔物は、動物として生まれながら魔物に変化してしまった魔物だ。

 魔力の多い場所で生まれた動物が魔物化するのは珍しくなく、動物が魔物化すると爪や牙などが鋭くなり、体内に魔石ができて、時には魔法まで使うようになるらしい。

 魔物化した動物の住環境は様々なので、草原エリアだけど小さな森も作った。

 不帰の森を抜けてこられるような冒険者が、魔兎などに殺されることは、どれだけ不運が重なったとしてもあり得ないようなので、気軽に狩りを楽しめるはずだ。

 もちろん、余った肉や他の素材などの買取もしていて、それらはダンジョンで働く人たちの食料にもなる。

 魔兎たちは勝手に繁殖するので、増えすぎた時は、セオ達が狩りをして数を調整するそうだ。

 多分、このエリアで狩りができるようにした方がいいとセオが勧めてくれたのは、居住区で飼育している魔物を殺すことに、私が忌避感を持っていたからかもしれない。

 その証拠に、このエリアには、居住区で飼っている魔鶏や魔牛、魔豚も放たれることになっている。

 卵や牛乳は、働き者の精霊達が回収してくれる予定だ。


 ダンジョンでは、攻略して先に進まなければならないという固定観念を取り払えば、この層で生活することもできると思う。

 落とし穴で鉱石を掘ったり、珍しい薬草を採取したり、狩りをして魔物の素材や肉を売り払ったりすれば、宿代や食事代くらいは簡単に稼げるのだから。

 上手く宝箱を見つけることができれば、中身によっては一獲千金も狙えるのだけど、やってくる冒険者達がそれに気づくかどうかはわからない。

 



 3層目は、雪山エリアにした。

 かなり寒いので、入り口のロッジで、防寒着の貸し出しや販売をしている。

 イメージしたのはもちろんスキー場で、さすがにリフトは作れなかったけれど、セオのおかげで山の頂上まで転移するための転移陣を用意できた。

 頂上からそりなどに乗って下山していき、途中で宝箱を探してもらい、その中にある鍵を持って、次の層に進むための扉に向かう仕様だ。

 スノーボードやスキーも作ってもらったし、寒さに強い精霊達の中では、ウィンタースポーツにすっかりはまってしまう子も出てきた。

 将来、ダンジョンに人が増えたら、インストラクターとして活躍してくれる精霊もいるかもしれない。

 もこもこの防寒着を着て、そり遊びをしている精霊達はとても可愛くて、見ているだけで癒されてしまう。

 あまり大きくはないけれど湖も設置して、スケートや氷上での釣りも楽しめるようにした。

 スケート靴はまだ開発中だけど、金属と革の扱いに慣れたダニーロなら、エッジのついた革靴を上手く作ってくれるだろう。

 小さな頃に一時期だけどスケート教室にも通っていたので、スケート靴に関しては他のスポーツ用品よりも詳しく説明できた。

 サイズは自動調整が掛かるように魔法を掛けてくれるので、足のサイズごとに靴を用意しなくてもいいのは便利だ。

 天候を調整できるおかげで吹雪くことがないので、安全に遊べるエリアになった。

 雪に埋もれた宝箱を探すのは大変だと思うけれど、遊びながら頑張ってほしい。


 ロッジは宿にもなっていて、温泉を設置して露天風呂なども作ってある。

 ゆっくりとお酒を楽しめるように、ここには多種多様のお酒を置く予定だ。

 美味しいお酒だけでなく、食べることも楽しんでほしいので、名物料理も考えなければならない。

 冬定番の料理を色々と揃えてみるのがいいだろうか。

 料理スキル持ちの精霊達と、料理の試作や試食を繰り返す日々だ。

 


 ここまでは何とか形にしたけれど、次の層からはまだ計画段階だ。

 精霊達に製作を頼んでいるものもあるし、まだダンジョンの公開まで時間はあるのだから、ゆっくり作っていけばいい。

 働いてばかりの精霊達には、もっとゆっくりしてほしいし、遊んでも欲しいので、次の層も精霊達が楽しめるように作っていきたい。





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